ベストハンドレッドについて
この文章は、批評家で漫画原作者のさやわかが毎年行っている狂気のイベント『さやわか式☆ベストハンドレッド』を自分でもやってみようと試みたものです。
今年もあった。配信もある↓
https://shirasu.io/t/genron/c/genron/p/20260131
『さやわか式☆ベストハンドレッド』はジャンルを問わず超横断的にカルチャーを超語る超超超画期的なイベントです。今年で10回目となり、つまり10年で1000個ものコンテンツを選別し、あれやこれやを言っている人間がいるのです。そんな事可能なのか…?と思っていた時期もありましたが、少なくともそれをやってのけている人間がいるということは、超横断的にカルチャーを超語ることは不可能ではない!!!ってことで、今年もやってみたよ。
というか、2026年1月31日に行われたこのイベントはまじ凄かったので、みんな見たほうがいい。おもしろいから。
お詫び
↑で紹介したイベントの前にこのランキングを完成させたかったが、全然間に合わず一度未完成のまま公開していました。イベントで発表された順位に影響されて、自分のランキングが崩れちゃうと困ると考えていたからなのですが、残念なことに、それでもこのランキングは崩れてしまいました(超ショック!!!)。
どうしても今年のランキングに入れる必要のあるコンテンツがあったことに気がつき、断腸の重いで順位を変更、Duolingoが開催した『デュオ どすこい相撲大会』を追加しました。なので、以前のランキングで100位にあった『ストレンジャー・シングス 未知の世界 シーズン5』は繰り下がり、ランク外となってしまいました。ストレンジャー・シングスには大変申し訳ない。悪いのは私です!未完成版のページも残しておくので、ストレンジャーシングスについてはそちらで確認できます!
私について、とか!!!
私は1991年生まれの主夫で、日々スーパーで品出しに勤しんでいたりするやつです。
そういう人間が作ったランキングとなっています。
ジャンル問わず、さまざまなものがランクインしていますが、大事なのはそれぞれの相対的な関係です。このランキングでは、例えば漫画の『ありす、宇宙までも』が42位だったりしますが、「あの傑作が42位!?」と思ってもらうのももちろん自由ですが、可能であれば、その前後の関係だったり、どんなコンテンツが下でどんなコンテンツが上なのかに注目してほしいです。
昨年はnoteというサービスを使って書いていたのですが、noteはエロだめっぽいので、エロとかの話したいので、自分のサイトを作りました。noteのわからずや!
それと、2025年で一番良かったコンテンツはアイザック・アシモフの『ファウンデーション』(1951)です。今更これです。もちろん2025年のランキングには入っていませんが。めちゃおもろでした。翻訳家の柳下毅一郎が『ファウンデーション』をイーロン・マスクが愛読してるってことに対して、中学生かよ!って笑ってたけど、ほんま今更読んでおもろいって喜んでてごめん。でも古典って大事だなって思いました。古典っていっても古典SFは凄い最近のものだけど、さ!
ランキング発表の前に!!!!
2025年の日清食品とマクドナルドのカルチャーという資源を食い荒らすようなプロモーションは、本当に危険なことだと思う。あんなことを続けていたら、文化がやせ細っていくんじゃね?とか考えていたりする。過去のコンテンツをプロモーションのためにすごい勢いで掘り返しては使い捨てている。消費者はそりゃ喜ぶだろうけれど、掘り返されたそのコンテンツを大切に思ってる一部の人達にとて、必ずしも良いことばかりではないはず。結構な人を傷つけてるんじゃないかって、私は勝手に思っている。そういう批判は現時点で皆無だけど。
2025年9月に公開された、日清食品の『チャージマン研!』コラボCMでは、そのタイミングでコミカライズのプレスが出たりと、まあ持ちつ持たれつやってる感じはあるにはあるけれど、とはいえ力関係はかなり歪だし、なにより節操がない。でもこれは、SNSや動画プラットフォームが定期的にたくさんバズるのが大事って環境を作っちゃったからではある。
そうなったら、おにデカ企業は容赦なくやるよね。レゼが急に踊ったりするよね。そういうもんですね〜!
というかこのランキングを作るの凄い大変でした。言いたいことがありすぎて全然完成しません!これは世の中の人たちが全然言ってないからだ!世の中が悪い!まじで!すっごいむかついてます!主夫が!!!!
昨年は5万字とかだったけど、今年は7万字こえて完成せず、そんば馬鹿なって思いながら書き続けたら9万字超えました!びっくり〜。凄い頑張ってるなと思ったら、投げ銭くれるとうれし → 🪙🪙🪙
誰からも頼まれていないのに勝手にやっていることなんで、こんなこと言っても仕方がないのですが、逆に?さあ?勝手にやってるから何言ってもいいよね????ヤハクィザシュニナの少し面白い話〜!!!(ヤハクィザシュニナとはテレビアニメ『正解するカド』に登場するキャラクターの名前)
では100位からはっぴょーでーーーーーーす。
100位
イン・ザ・メガチャーチ
朝井リョウ
小説です!Kindleで読みました。
朝井リョウによる現代の推し活文化を鋭く描き出したとかなんとかかんとかの奴。2023年から日本経済新聞で連載してたものを書籍化したやつらしい。にしても推し活をテーマにって時代遅れ感もすごいが、連載時は割と旬だったのかな。そんなことないな。
朝井リョウという作家は、現代社会にある問題の中でも、まあまあナイーブなものを扱いがちな作家で、この「まあまあナイーブ」具合が絶妙。エンターテイメントとして適度に過激なのだけれどそんな深刻すぎないのでエエ感じで、つまり非常にキャッチー。賢いね。
今作も「推し活」以外に「MBTI」だとか「ハッシュタグ運動」だとか「陰謀論」だとか「ポリコレ疲れ」だとか、なんか最近ってこんな感じになってるよねという要素が次から次へと出てくるのだけれど、でもそれってTwitter(現X)見てりゃええやんけって内容で全然面白くない。てかやっぱちょっと旬じゃないよね、このキーワードたち。
この作家は、最終的にエンタメに落とし込むため、ロジックの破綻をうまい具合に気にしなくさせるのが非常にうまく、それは本当に素晴らしい技術で正しい。けれど前々作の『正欲』では一般には理解されない特殊な性的欲望をテーマにしつつ、平気で小児性愛者を例外扱いしたりストーリー上のスケープゴートとして扱っちゃえる残酷さがあって、その辺は怖いなあと思っているんだけれど、今作もそういうエンタメ的な残酷さで溢れているにもかかわらず何か知らんが本格的に社会派っぽい「控えめな娯楽性」という娯楽性でやっているので、単にマジで面白くない上に浅くて怖い。
例えば40代の男性が、仕事で関わることになった若い男性アイドルグループのメンバーの1人にメンズメイクを教えてもらって(このエピソード自体が本当に旬じゃない)ちょっと仲良くなった気がしてたら、その人が適応障害で活動休止しちゃって心配になり、良くないことだと分かりつつも社内資料から住所を知りお見舞いに駆けつける、という行為自体が推し活に類する物語信仰に足をすくわれた哀れな行動と断罪されたりする。推し活関係なさすぎるだろ 。でも中年おじさんは何してもギルティーって感じでまとまってて凄い。推し活関係ないのに。
でさ、なんかこの小説のタイトルで検索すると「現代社会の問題をナンタラカンタラ!!!」って類のレビューが山ほど出てきてさ、こういう事考えたい人たちが意外と多いんだなって思うんだけど、この小説で掘り下げられる程度の事でいいならさ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』で良かったじゃん。いや、あれはあれでやたらポジティブにそういう人たちにレビューされてた気もする。とりあえず言えることは、朝井リョウもこの小説を褒めてる人も、真面目に推し活について考えようなんてこれっぽっちも思ってない。推し活という現代の社会で重要とされるトピックを考えた気にさせてくれる系エンタメでしか無い。
この小説をすごいとか言ってる人の名前を全員メモしたので、今後役立てられていいと思った!
99位
ホウセンカ
映画です!
2021年のアニメ『オッドタクシー』の監督・脚本コンビによる劇場アニメ。なのだが、無期懲役で捕まってるおじいさんが喋る花(ホウセンカ)と一緒に自分の半生を振り返っていくという、マジで誰が見たくなるのっていうあらすじなんだけれど、誰が見たんだろう。
『オッドタクシー』は現代のヌルッとした生々しい物語を、動物を擬人化したキャラクターで描くことでポップで意義ある作品になっていたのに、なんかやめちゃったんだよね、動物擬人化。
この映画の主人公はヤクザなんだけど、つまりヤクザのアニメなんだけど、これがまあ面白かったらいいんだけど、映像的にも物語的にも魅力はなくてがっかり。キャラデザ(監督によるもの)だけは引き続き良かった。
しかし、どうしてこの企画がこの企画のまま突き進んでしまったのだろうか。私と同年代の若い作家をいい感じに促すプロデューサーがいなかったんだろうなと勝手に想像して、悲しい気持ちになった。
あんま関係ないけど、公開初日に渋谷の劇場で鑑賞した際、前の列の席に一緒に見に来たであろう男女が座っていて、男性側が「ダウ90000のライブが良かったんだよねー」って話してた。そういう人とかが見に来てた。
98位
デスキスゲーム いいキスしないと死んじゃうドラマ
リアリティショー(?)です!
放送作家の佐久間宣行によるNetflixオリジナル番組。『トークサバイバー』『罵倒村』としょうもない番組を何故かNetflixで量産している佐久間宣行なんだけど、今作もどうかと思う。
佐久間宣行が過去に演出を務めていたテレビ東京の番組『ゴッドタン』(2005-)で、中でも人気のあった企画『キス我慢選手権』をかなりそのまんまやっていて、まあ人気だったしそれはそれでいいんだけど、Netflixでやるならもっとあるじゃんか。
『キス我慢選手権』も今作も、面白いのは芸人に対して超ノリノリで色仕掛けをしてくるAV女優(セクシー女優ともいう(セクシーな女優という意味ではない(セクシーではある)))達のその芸達者っぷりなのだけれど、この芸達者な女性たちは一体何者なのかという説明が殆どなく、暗黙の了解で番組が進行する居心地の悪さがある。マジで誰なのあの人たち。教えろよ。テレビ東京で放送していた頃は地上波的な決まりごとがあったんだろうけど、Netflixだよ?教えなさい!というか、Netflixは『全裸監督』を作っていただろ!
日本のアダルトビデオって世界的に知名度が高いわけで、そういう角度からこの番組を国外へアピールすることだってできたはずで、そこで面白いねってなったかもしれない。常に風当たりの厳しいAV業界の地位向上にも繋がるかもしれないのにさ、そういう発想とかないものなのかな。この辺が佐久間宣行の限界?
え、すごい偉そうな事いっちゃった。
97位
デリヲの推しごと
青島小虎
漫画です!
作品紹介によれば「オタク女╳デリヘル男のピュアな推し活ラブストーリー!」だそう。Web媒体のモーニング・ツーで連載している青島小虎による漫画。2025年1月のこの漫画の1話をTwitterへまるっと掲載したツイートが大きく話題となった本作。私もこれをきっかけに知った作品で、セックスワーカーのイケメン男となんかいい感じになるって面白そー!!と思ったのですが、タイトルでデリヲとか言ってるのにそういう話が全然始まらなくて、なんで!???????これじゃただのオタクだけど実はかわいい女と、オタクだけどイケメン男の話だょ。。。って思いながら読んでる。
でもさ!絵が本当に綺麗!!!!!
いや、なんか、特にTwitterでバズるためにさ、扇情的なコピーの〇〇が××した話ってのをみなさん頑張りすぎな最近ですが、頑張ってて偉いと思います。
96位
サブスタンス
映画です!
デミ・ムーア主演の『笑ぅせぇるすまん』みたいな映画。というか『週間ストーリーランド』の謎の老婆でしかないやつ。いや、ありふれたやつ過ぎてなんとでも言えるやつ。
加齢によってお払い箱となったハリウッド女優のエリザベスが、若くなれる先進的な医療だよー安全だよーって話に飛びついてみたら、身体がぱっくり割れて中から若い自分が誕生、老いた身体と若い身体をバランス良く使わないと破滅しちゃうわよんって言われてるけど、当たり前のようにバランス良く使わないので破滅する、までがめっちゃ長い、そういう映画。知ってるから、それ。その先に新しい何かが特にあるわけじゃない。あっとけよ。
この映画はかつて一世を風靡しそして忘れ去られたデミ・ムーアのキャリアが重ねられていて、そういったハリウッドの、というかエンタメ業界に広く根強くあるエイジズム批判が高く評価されているのだけれど、そういう点で評価されやすいくらいには行儀の良い映画に落ち着いていて、正直そういう映画が出てきて評価されること自体が予定調和だったりするのが今のハリウッド。
この映画の終盤、色々あってモンストロエリザベスとかいう化け物が生まれてきちゃって身体から血を噴き出しながら(ここの特撮が結構凝ってる)エンタメ業界の人たちを血まみれにする展開があるのだけれど、どうやら監督であるコラリー・ファルジャは血とかビュービュー出るタイプのジャンル映画が好きみたいで、それは大変素晴らしいことだと思うのだけれど、そういう映画で言えばさ、最後は皆殺しにしなきゃダメじゃない?血まみれでヨシとはならないんだけどなあ。と思っていたら、意外とみんなヨシとなっていて、そうなんだなあ。みんなチョロいんだね。
95位
踊りつかれて
塩田武士
小説です!Audibleで聴きました。
『声の罪』『騙し絵の牙』などで知られる塩田武士によるSNSの炎上をテーマにした社会派ミステリーかと思いきや、昭和ノスタルジー満載のエモエモゆるロマンス。
「何が人を傷つけない笑いだ?」から始まる「宣戦布告」という名の犯行声明と共に、芸能人のゴシップに便乗し炎上に加担したSNSユーザーの個人情報が大量にネット上で公表されてから始まる物語。おそらく岡田有希子をモデルとした昭和の歌手を引退に追いやったマスコミ関係者と、おそらく粗品(霜降り明星)をモデルとした令和のお笑い芸人を悪意あるデマで炎上させ自殺にまで追い詰めたネットユーザー達に対して怒りまくってるこの「宣戦布告」は迫力があって、Netflixのシリーズ『ブラックミラー』の名エピソード『殺意の追跡』が始まるのかとワクワクするが、まったくそういう話にならず、SNSの話は一瞬で終わり、犯人である元大物音楽プロデューサーのその半生を、彼の弁護を引き受けることとなった弁護士が調査していくだけで、なにこれは、となる。
クオリティは高く、本当にそういう歌手や芸人がいたかもと思わせるディティールで溢れていたりはするが、個人情報を公開された人たちの描写が殆どなく、彼らの中に自殺者が出てしまったかも!どうなる!?みたいな事になりかけるのに、別にそっちを掘り下げることもしなかった変な小説。
そんな、粗品が自殺しちゃうなんて・・・と思いながら楽しめる稀有な作品ではある。
94位
都市伝説解体センター
ゲームです!
集英社がゲーム作るぞと息巻いて子会社「集英社ゲームズ」を設立。ウチら漫画もいけるならゲームでも余裕やろといった感じで、いい感じの小規模なデベロッパーを発掘・支援し、その作品を集英社ゲームズがパブリッシングしている。プロデュースと販売を兼ねている感じで、『都市伝説解体センター』も集英社ゲームズから販売されている。
昨今のインディーゲームらしい、かわいくて手のこんだドット絵が印象的な本作は、オカルトっぽい不思議な事件を現実的で筋の通った推理で解決(解体)していく推理アドベンチャーとなっている。開発をしている「墓場文庫」の過去作であるスマホゲーム『和階堂真の事件簿』のシステムがベースとなっているのだが、これがマジで超簡単で面白くないのだが、このシステムは『The Case of the Golden Idol』や『Return of the Obra Dinn』といった、歯ごたえのある名作推理アドベンチャーゲームが元ネタとしてあり、それを普段そういったジャンルをプレイしない人でも遊べるようにアレンジしていて、だから超簡単で面白くないのに、すげー売れたし、なんか受賞もしてて偉い!
この偉いゲームは単に面白くないだけでなく、そういった回りくどいシステムにするなら普通のテキストアドベンチャーゲームにしてくれと思ってしまう部分があり、「SNS調査」と銘打ったボタンを連打するだけのしんどいパートは本当に泣きたくなるほどつまらない。
ゲーム終盤にはどんでん返し的なミステリーとして熱い展開があり、これがゲーム的にプレイヤーが真実を導き出すようにできているので結構いい(超簡単だけれど)。が、何を思ったのかその後エピローグとしてもう一つどんでん返しが用意されていて、それが本当にしょーもない上にプレイヤーはテキストを読むだけなので何の感慨も生まれないので良くない。
このどんでん返しは、なんか漫画とかなら分かるんだけどね。
でもまあ本作は成功し、集英社はゲームも余裕だった事が判明したので未来は明るい!
93位
ファンタスティック4
映画です!
言わずと知れたMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)はここ数年かなり行き詰まっていて、バカみたいにお金をかけた映画に全然お客が来なくて涙らしい。これはいかんとなって立て直しを図ってはいるそうで、そんな中で公開された本作の主人公たちはマーベルコミックとしては大ネタ中の大ネタのヒーローチームなんだって。
『アベンジャーズ エンドゲーム』でそれまでシリーズの柱となっていたアイアンマンなどを引退させて、今後を担わせるために沢山の新しいヒーローを登場させまくっていたらあっという間に客がついてこなくなってしまったMCU。マルチバースとか言って並行世界でなんでもありになっていたこともあり、本作ではこれまでのごちゃごちゃしてしまった世界とは関係のない舞台を用意していて潔が良いと言えばそうなのだが、問題の本質はDEIを初めとしたポリコレっぽい創作理念を掲げ、それで自縄自縛に陥り明らかにエンタメとして自由な作品作りができてない事にあったので、今作も本当に刺激のない毒にも薬にもならない映画になっていて、だよねって映画になっていた。
MCUの凋落を見届けられて本当に良かった。ありがとうMCU。まあ今後も見るんだけど。
92位
一次元の挿し木
松下龍之介
小説です!
2025年の第23回『このミステリーがすごい!』大賞で文庫グランプリを、ん、文庫グランプリってのがあるんだと思ったら第19回から優秀賞がそういう名前に変わったらしい、まあそういう賞を受賞した小説。
4年前に失踪した義理の妹のDNAとヒマラヤの氷河湖で見つかった200年前の人骨のDNAが一致して意味不明!ありえん!なんで??!という魅力的な謎をドヤっと立ち上げていて素晴らしいのだけれど、とにかく耽美な雰囲気で胃もたれしてしまう内容で、なんでお前らはそんなメロドラマ人間なんだよという謎の方が気になってくる。いや、ミステリーだからそれはむしろ正統なんじゃないかという指摘もあるかもだけれど、主人公の男があまりにも浮世離れした感性をもっていて、義理の妹が好きすぎる恋愛体質野郎で困る。主人公が遺伝学を専攻していて失踪した妹のDNAの情報を持っているヤバいヤツじゃないと、たしかに本作がドヤってる謎が始まらないのも分かるし、謎から逆算されたキャラクターや物語も必然性があって良くできている。けれど、謎が中心にありすぎて、全体的に深みがない。かといってメタミステリー的な構造に革新があるタイプでもなく、ざっくりSFミステリーだったりするんだけれど、SFのような思考実験が楽しいタイプでもないので、合うか合わないかなのでしょう!
遺伝学の歴史などのエピソードが挟まれて、良い感じのことを物語と絡めてうまいこと言ってる雰囲気もあるが、こういう要素入れとけば良えんやろ感が透けて見えちゃってる。解説を読むと作者は大賞を受賞する気満々だったみたいで、出来る奴だなと思った。
91位
Sister
Frost Children
音楽です!
音楽のストリーミングサービスを中心に起こったムーブメント「ハイパーポップ」以降の感性で、2010年前後に爆発的に流行ったEDMというジャンルをやってる二人組、ちなみに兄妹、によるアルバム。
硬いシンセ音と太いキック音でノリノリ〜って感じのやつ。
ダンスミュージックと呼ばれる音楽でボーカルがしっかり入ってることは、珍しいというと語弊があるが、別にあってもなくても良くね?みたいなところはある。けれどもそれがEDMとなると、単にポップスとしても消費されていることもありボーカルが入りがち。本作に収録されている楽曲も、そのすべてがボーカル曲。そして歌唱がなぜかパンクロックのような叫び気味の歌声だったりするのが個性的。
個性的ではあるんだけれど、曲を聴いたときの印象がかなり知ってるやつのそれで、新鮮さがあまりない。ちょっと早めに2010年代をリバイバルしつつ、あとほかのも色んなことができますよとダンスミュージックの中で幅を出しているアルバムではあるが、そのどれもが既視感で溢れいている。
それでも私はEDMというジャンルが好きなので、ええやんけと思ったりするわけですが、それとは関係なく、このアルバムに収録されている『Falling』のミュージックビデオが面白い。
ナードっぽい奴らによる歪んだパリピ感と言えるような、ちょっと病的にビキニ姿のギャルが浜辺で踊ってたりする極端にセクシャルなイメージであふれるビデオには、淫らなものの記号の一つとして日本のアニメだったりVtuberだったりが勝手に使われている。例えばこんなの
Vtuber兎田ぺこらの抱き枕。わかる。ぺこーらの抱き枕は「淫らなもの」でしかないよね。
でもビデオをみると、単に極東の国のエグいカルチャーおもろ笑って感じで使ってるわけじゃなく、こういう表現に性的な魅力を感じることへの共感が多分に含まれている印象。すごいぼんやりした事を言うと、10年代にあったムーブメント「ベイパーウェーブ」が醸す刹那的だったり感傷的だったりする空気が尾を引いて、日本の00年代的な超ローカルなオタク的感性に近づいちゃってる感じがある。まあ、単にインモラルな感じで良いってことではあるんだと思うけどね。
90位
迂直
つけ麺屋です!
2022年に惜しまれながら閉店した荻窪の有名なつけ麺屋『迂直』が2025年4月に吉祥寺で復活!荻窪にあった頃は行けなかったので、知らない間に復活していたこのお店に私は7月に行っていたらしい。
関東でつけ麺というと『とみ田』の何が入ってるのかもはや謎の色をしたどろどろスープが長い間人気だったが、『迂直』で昆布水つけ麺というスタイルが流行りそういうお店も増えているみたい。ちょっと調べた感じだと『迂直』が昆布水つけ麺のパイオニアという訳ではないんだね。
スープは強く鶏の出汁が効いている醤油味で、麺も含めてとっても美味しかったが、別にそんな驚くほどの体験ではなかったし、店内含めて全体的に神経質な感じがあって、つけ麺とかラーメンってそういうものなのかなあと思う。だって店内BGMでずっとカーペンターズが流れてるんだもん。どういう気持ちになって欲しいんだろう。
こういう感じ。麺にトロトロした昆布のだし汁がかかっていて、そのまま食べても小麦の風味が豊かでね、おいしかったよ。麺食べたすぎて写真取る前にちょっと箸でいじっちゃってるね。
個人的な印象だけれど、スパイスカレーのほうが店の個性がはっきりしてて、そういう部分を楽しみやすい気がする。今はもう無いけれど、要町にあったカリープンジェとか、唯一無二すぎて凄かった。
89位
ウェンズデー シーズン2
ドラマです!
『アダムス・ファミリー』(の概要についてはWikipediaとか見てほしい)に登場するウェンズデーというキャラクターを主人公においたNetflixオリジナルドラマ。監督はグロかわいいアートスタイルが日本でも評判のティム・バートン。『シザーハンズ』とかの人。
このドラマはウェンズデーという根暗でオタクなゴスっ娘(かわいー)が、『ハリー・ポッター』に登場するホグワーツ魔法学校をすげーしょぼくしたみたいな学校に転入して、そこでおもしれー女ムーブをかまし続けるという非常に楽しい内容となっている。2022年のシーズン1で最も話題になったのは、プロム(なんかアメリカの学校にある陽キャっぽいイベント)でいい感じのカップルがいい感じに踊ってる中、ブリーフ&トランクスの楽曲『クラブ』よろしく一人で変な踊りを踊るシーンで、まじこのシーンがかわいくて良い。ウェンズデーを演じるジェナ・オルテガが本当に輝いていた。
ウェンズデーのイメージカラーはゴスイメージにある白と黒で、実はこのドラマでは、彼女のそのイメージがうっすらとLGBT運動を象徴するレインボーカラーと対となっている。学校の寮で同部屋となるイーニッドというキャラクターのファッションはまさに様々な色に覆われていて、ウェンズデーと正反対。ウェンズデー=陰キャ=差別的/イーニッド=陽キャ=多様性に開かれている、みたいな感じで現代的な若者の関心に寄り添ったドラマを展開していたりもしたし、その2人が友情を育むのだから深イイ感。それと同時にこれは「オタクくんに優しいギャル」でもあったりする、部分的に。
ということで楽しみにしていた新シーズンは、色々な事情から制作がやや遅れて3年かかっていて、見てみるとなんか色々あったんだなと思わせるなんとも言えない出来に。普通に面白くなかったし、シーズン1であった先述した多様性がどうたらって要素もなくなってしまって、まあそうだよねって感じ。ただ物語の中心にあるのがイーニッドが死んじゃう予知をしたウェンズデーがそれを阻止しようと頑張るやつで、尊みとかそういうのがあって良かった。そういうのがあるだけ嬉しいよ。
88位
ブルーボーイ事件
映画です!
1964年の日本はオリンピックの開催に向けて街の浄化運動が盛んだったみたいで、売春とかめっちゃ取り締まったる!!!ってやってたらしく、けれどもブルーボーイと呼ばれていた戸籍上は男の娼婦が当時の法律では取り締まれないとかで警察グヌヌ・・・、ブルーボーイ達には性別適合手術を受けてる人もいて、当時の法律的にはその手術がワンチャン有罪いけそうだと思った警察は、じゃあその施術をした医者を逮捕しちゃうぞっとかなんとかの一連の出来事がブルーボーイ事件と呼ばれているみたいで、それを映画化した本作。こんなことがあったんだね、びっくり。
こんなん面白いに決まってるじゃんか!!と思って劇場へ走ったのだが、色々と難しいぞ、これ。
本作は監督自身がトランスジェンダーという事もあり、然るべき役に然るべきキャストという感じでトランスジェンダー当事者が多く出演している。だからなのかは分からないが、演技経験のあまりない人がまあまあ重要な役で出演していて、それが悪いとは言わないのだが、いい効果を生んでいるようには私には見えなかった。
何より私が腑に落ちなかったのは主役であるサチというキャラクターで、サチは別に娼婦とかじゃなく手術を受けて静かにパートナーと暮らしたいので、裁判で証言とかしたくないですって言いながら最終的には証言する勇気ある奴なんだけれど、劇中、パートナーとの生活でのサチがものすごい「家庭における女性」として振る舞い続けていたり、勤務先の喫茶店ではウェイトレスとして可愛らしいユニホームを着て接客していたり、ジェンダーロールに乗っかって行くぜ!!!ってキャラクターとして描かれていて、それは・・・そういうものなの???と思わざるを得なかった。
もちろんこの映画は1964年が舞台な訳で、その時代のジェンダー観を含んだ描写があるのは分かるのだが、しかしやはり2025年の映画でもあるのだから、例えばジェンダーロールに則ることにより性自認のギャップを埋められるんじゃないかと迷いながらやっている描写などがあれば納得できたりするのに、そういうものが殆どないので、戸惑い。
唯一、クライマックスのサチによる裁判での証言がそれらしいものになってはいるが、映画全体を考えるとその証言に繋がるための描写がそれまでに必要なはずで、単に作劇として上手くいってなくね…?とか思いながら見ていたのですが、そのサチの長回しの証言シーンではなんか周りからスンスンと鼻をすする音なども聞こえてきたりして、泣ける〜となる人にはなるみたい。確かに検察側が単に悪として描かれていたりしたので、悪いやつに虐げられてきた者がそれに抗う系のエクスプロイテーション映画なのかなと思えば、私はマジでおもんなかったけど、これはこれでいいと思うよ!と言えば済む話ではある。
87位
君と私
映画です!
2014年韓国で起きたセウォル号沈没事故を背景に、修学旅行でその船に乗る予定の「実は相思相愛なのにその事に気づけないでいる女子高生2人」の一日を描いた青春映画。
やっていることは藤本タツキの読み切り漫画『ルックバック』で、それよりも実際の事件をかなり直接描いているために、色々大丈夫か?と思ってしまうところが多々ある本作。
主人公である2人の女子高生のうち一人は自転車との接触事故で足を負傷していて修学旅行には参加できず、もう一人がちょっと歩けるようになったんなら頑張って行っちゃおうぜとしつこく迫ってきて、うぜー!!!って喧嘩しちゃってマジでじれったくてかわいいのだけれど、あの痛ましい事件を、その被害者たちの人生を、フィクションとして用意された彼女ら2人とその関係性で語る事は流石に無理ある。それくらいこの映画は2人の閉じた世界を描く事に終始している。しかもそのタッチが岩井俊二映画のようで非常にフェティッシュな事もあり、死んじゃうことが決まっている儚い少女の命を愛でるためにセウォル号をわざわざ持ち出してきたガチやばい映画に見えなくもない。というか見える。
とはいえ、いいシーンもたくさんある。2人が喧嘩した後、片方の少女がほかの友達とカラオケにいって歌うシーンでは、カラオケ同じみのよくわからん恋人っぽい男女の映像に、自分とその子を重ねて妄想して、いつしかその映像の男女が主人公2人に置き換わるシュールなシーンは、下らなくて面白いけど、なんか胸が苦しくなって良い。
私がこの映画で一番好きなのは、学生の1日長すぎるだろ!!!と思わせてくれた点。ずっと遊んでるんだもん。たしかに長かったなあと懐かしい気持ちになれて良かった。
でもほんと、ガチやばいと思う。同性愛描いてたら批判しにくいっしょみたいな小賢しい事考えてそうですらある。
まあそんなこと言ったら『ルックバック』だってそういう部分があるけどさ。
86位
今週の人文ウォッチ
YouTubeの番組です!
2024年12月に初回配信があり、そこから週一で配信しているYouTubeで見られる番組。運営は出版やイベントスペース事業で知られるゲンロン。
ゲンロンに務める植田将暉とメディア研究者である山内萌の二人が、その週にあった人文的出来事(というよりSNSの炎上とか炎上とか)を5つ6つ取り上げて、ズバッと斬るわけでもなく、さらっとコメントしていくゆるふわな番組。
個人的な話になるが、私のベストハンドレッドではゴシップなどをランクインさせちゃうため、この番組の存在は「じゃあ私がわざわざベストハンドレッド書かなくてもいいじゃん」となる恐れがあったのですが、なんか思ってたより本当にゆるふわだったので、まじ助かったぁ〜。コンテンツレビューとかもね、ゆるふわ。この番組がかなりビシッとやっているものだったら、自分はこの文章を書いてなかったと思う。
でも毎週しょうもないSNS炎上を取り上げそれがアーカイブとして蓄積していくのは、個人的には実際とてもいい資料となっているので、今後も続けてほしいと勝手に思っている。
まじ助かったぁ〜と思ってはいたのだけれど、このランキングにはそんなゴシップとか入ってないかもしれない。どうでもいいけど。(意外と入っていた!!!)
↓この番組の再生リスト
https://www.youtube.com/playlist?list=PLHtZSZbVRISsJtPmD0ASq2Kl14i7d2ElM
85位
世界99
村田香沙耶
小説です!Audibleで聴きました。
『コンビニ人間』などで知られる村田沙耶香が2022年5月から文芸誌『すばる』で連載していた小説が書籍化。
環境や関わる人間によって態度を変えることを、「私が分裂して世界が増える」と大仰に捉えている空子という変わった女性が主人公で、普通の人はそうらしいけど私にはまったく分からないたくさんの"当たり前”の数々に、自分を分裂させて頑張って付き合っていく彼女は、心の内では「私は女というだけで得をしていると目の前の男性は考えているのでこれ以上得をしたいと私が考えていると目の前の男性に思われないように卑屈になってあげると目の前の男性は安心するので問題が起きずに済み楽」みたいな事を考えている。それだけならまあ、なんかあるよねって感じなのだけれど、空子はポリコレだとか環境問題だとか、あらゆる物事に終始こんな態度で、そういうことが延々と書かれている小説。迫力がある。Twitterで冷笑がどうとかって議論で楽しんでる人たちはこれを読めばいいと思う。まぢ長いけどね。
物語はピョコルンという遺伝子操作によって生まれた激カワ高級愛玩動物が登場してから意外な方向へ転がっていき、最終的には人間にとって煩わしいもの(例えば家事だとか性欲だとか生殖だとか)をピョコルンに委託できる世界になってそれってマジサイコー!!!なはずが・・・、といった具合にSF設定によって価値観の相対化パンチを繰り出しまくるのだけれど、この小説は基本的に女性がしんどい世界まじしんどいって事が描かれ続けていて、ここまで相対化するんだったらさ、男性しんどい話も無いとさみしいよ、男性としてさ。無さすぎたよ。さみしすぎるだろ。
村田沙耶香は10年位前の芥川賞授賞式で「私は人類を裏切るような言葉を見つけてしまうかも」とか言ってたらしいじゃん。なるはやで見つけてもらいたい。あと空子は”ぞっ”としすぎ。
84位
機動戦士Gundam GQuuuuuuX
アニメです!
ガンダムの新しいやつ。制作はスタジオカラー、監督は『フリクリ』の弦巻和哉。
こんなランキングを作っていてあれなのですが、私にとって今作が初めてちゃんと視聴したガンダムシリーズとなりました。モビルスーツの見た目がまじブスだと思っているので、全然触れてきませんでした。でもそんなことも言ってられないと今は反省しています。
ガンダムシリーズの事を本当に知らなかったので、2話で昔のアニメが急に始まってかなり萎えたりしたのですが、それ以前にガンダムの知識(俗に言う一作目の「ファーストガンダム」の知識)が必要すぎてマジで意味不明でした。恥を偲んでこんな事を書きますが、シャア・アズナブルとシャリア・ブルって名前の雰囲気似すぎじゃね?ややこしいわ。
意味不明だわと思いながらも、私なりに要約すると、恋愛依存体質の若い女がスピってる若い男に振り回された結果、最後に何かが凄い光ってエモい音楽がかかってエモい。そういう感じのロボットが出てくるアニメです。
作中で出てくる「分かんないけど、なんか分かった」というセリフで、エクスキューズが済んだことになっているので、まあそういうノリで結構楽しめました。エモいし。でも米津玄師と星街すいせいの音楽は全然良くない。良いとされてるのも意味不明。
もはや大御所と言えるクリエイターたちが、今っぽいキャラクターを描こうとして、恋愛依存体質の若い女とスピってる若い男を描くのは、うーん、一理ある。悔しい。
83位
罪人たち
映画です!
監督ライアン・クーグラー、主演マイケル・B・ジョーダンの本作。2013年の『フルートベール駅で』からこの監督主演コンビで映画を作っていて、MCUの『ブラックパンサー』もそのうちの一つだったりする。
本作はアメリカで興行的にもレビュー的にも大成功を収めていて、日本の映画好きは遅れてやってくる公開日を今か今かと待ちわびている雰囲気があった。
映画が始まるとまじクソかっこいい画がずっと続いて本当にすごい。うっとりするほどに格好いい映像にワクワクしながら見ていると、でも一向に面白くならなくてそのまま映画が終わる。なんで?
1932年のアメリカ南部で、歌とか音楽とか楽しめる酒場のオープンを目指す黒人の兄弟が、何故かアイルランドからきた吸血鬼に因縁付けられてまじ困るってあらすじは何だかおもしろそうなのに、映画後半は吸血鬼から身を守るために頑張ってオープンまでこぎつけた酒場に閉じこもり、そこを出たり入ったりしてばかりですごい退屈。
そしてこの映画は音楽についての映画でもあるのだが、結局なんか、黒人音楽が偉いんでよろしく!!!って印象を持たざるを得なくて、偉いんですねって感じ。
それでもこの映画で好きところもあり、酒場でライブが始まるシーンでは、古今東西の音楽(白人的なものは除く)が幻として現れ混じり合うという摩訶不思議な事をしていて、とても印象に残っている。感動すらした。でもそれも、音楽の中心は黒人音楽ですよって主張のようにも感じた。了解です、と。
82位
My Melody & Kuromi
アニメです!
サンリオの人気キャラクターマイメロディとクロミを主人公にした、羊毛フェルト人形のストップモーションアニメ。Netflixオリジナルシリーズ。監督は2021年の『PUI PUI モルカー』で一世を風靡した見里朝希。
クロミというキャラクターはもともとはアニメ『おねがいマイメロディ』に登場するオリジナルキャラクターで、それが人気となってサンリオのキャラクターになったという経緯があったり、その関係でアニメの制作会社がサンリオを訴えたりしてるらしが、それはさておきクロミは本当にかわいい。
主題歌に韓国のアイドルグループLE SSERAFIMをもってきて、楽曲を星野源にプロデュースさせるなど、企画としてそこそこかっちりとしていて、いい感じではある。いい感じではあるのだけれど、その楽曲含めて全体的にとてもぼんやりした作品になっている。
無くても良さそうなのに無駄に凝ったストーリーと、無くても良さそうなのに無駄に凝ったアクションシーンが、マイメロディとクロミのかわいらしいアニメーションにとってノイズ(コンプラ的によろしくないという意味ではない)になっていて、強く印象に残るものがない。
個人的に期待していたのは、とにかく強烈にかわいいアニメであったので、こういう事ではなかったんじゃないかなと思わずにはいられない。特にアクションシーンのクオリティがそこそこ高く、ストップモーションでは難しいとされる事にあえて挑んでいたりして見応えがあるぶん、でも見たいのってそれじゃないんだよなとなってしまう。なんだか惜しい。
それにしても『PUI PUI モルカー』であれだけ盛り上がっていた人たちは、このアニメを見ているんだろうか。モルカー2期も全然見られてなくて本当に寂しい気持ちだったよ。モルカー2期良かったのに。
81位
「残像の愛し方、或いはそれによって産み落ちた自身の歪さを、受け入れる為に僕たちが過ごす寄る辺の無い幾つかの日々について。」
Tele
音楽です!
J-POPにはなんか、「文学的」であることをアピールしてくる人たちが結構いて、「文学的」だからという理由で人気があったりする。ここで言う「文学的」とは、「僕・私」の「自意識」とかについて歌ったりすることで、とにかく歌詞が重要ぽい。一体どうしてそんなことになっているのか知らないが、そうなんだから仕方がない。あとなぜかそういうのにはバンドが多い。
Tele(谷口喜多朗のソロプロジェクト)のこのアルバムも、タイトルがアホみたいに長くてウザいですが、だから「文学的」だと言えるし、ジャケットのデザインも文字がいっぱいで文学っぽい。
ソロプロジェクトという事もあってか、バンドサウンドに限らない幅広い曲調の楽曲が収録されているこのアルバム。曲ごとにジャンルがころころ変わり、コイツ器用すぎない?と驚くのだが、最近そういう作家は珍しくないので特筆する部分でもない。恐ろしい時代。
Teleのユニークな点は、例えば6曲目に収録されている『初恋』でAWOLNATIONの『Sail』(2014)を大胆にパクっていたりするところ。こんなコンセプトのアルバムでそんなことする事にこそ文学性があると個人的には思ったりする。変でおもしろい。
80位
サンダーボルツ
映画です!
91位のファンタスティック4と同じくMCU映画。アメコミに登場するキャラクターの中には、ヒーローなのかヴィランなのかよく分からない、どちらかというとヒーローな立ち位置のキャラクターがそこそこいて、彼らをチームにしちゃう事もあるそうで、そういう感じの奴らを映画にしたやつ。と同時に、ストリーミングサービスの「Disney+」で乱発されたMCUの数多あるドラマで登場した奴らが集合する、ちょっとしたお祭りみたいな映画になってはいるのだけれど、MCUのドラマとか誰が見てんの?みたいな現状では、よく分からない奴らの映画なのかもしれない。
でも大丈夫!2021年『ブラック・ウィドウ』に登場したスカーレット・ヨハンソン演じるナターシャの義理の妹として登場したフローレンス・ピュー演じるエレーナが、本作では実質主人公なので、そしてエレーナというキャラはかなり良いので、エレーナを見ていれば楽しい映画です。エレーナ大好き。
『エンドゲーム』後、義姉に先立たれたエレーナは孤独を抱えていて、死にてーまじ死にてーと思いながらも生活のために汚れ仕事を淡々とこなしているところから映画は始まるのですが、この死にてーエレーナがとても良い。
本作ではラスボスとして鬱病の化け物みたいなのが登場して、負の感情パワーで人々を消しさっていって「こわ〜」。しかし死にてーエレーナはこの化け物と戦うでもなく寄り添ってハグして慰めて事態が解決されるのだが、これが優しくてエモい。A24系のスタッフが結構関わってるみたいで、優しくてエモくなるのも分かる。
っても、精神的なケアを描くにしては雑な部分が多く、多めに見てやろう!という気持ちでしかない。ハグて
79位
【狩野英孝解説付き】第1話「僕と契約して魔法少女になってよ!」
TVerで配信されてた動画です!
2011年に放送されたテレビアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』(通称『まどマギ』)の新作『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』が2026年に公開されるらしいのだが、それに先駆けて過去作(テレビシリーズの総集編である劇場用に再編集された二本の映画をテレビ用に再編集したもの(←??????????))が放送され、その副音声がこの作品を初見で視聴する狩野英孝のコメンタリーだったのだが、TVerでは実際に視聴している狩野英孝の映像が期間限定で配信されていました。それがランクインです。
2000年代後半、テレビでは芸人がとにかく見た目だったりのインパクトが重視され、いわゆるキャラ芸人と呼ばれる最初から過剰にキャラクターが設定された芸人が次から次へとお茶の間に登場して消えていったりしていた。狩野英孝はそんな中で「自称イケメンキャラ」でブレイクした芸人のうちのひとりなのだが、一発屋などと揶揄されるような彼らの中で、今の狩野英孝はひときわ特殊な存在感を放っているのは、多くの人が知るところ、かも。
彼が2020年からゲーム配信などをメインに行っているYouTubeでのチャンネル登録者数は、あちこちデータによると270万を超えていて、かまいたちのそれを上回っている(ちなみにそれをさらに上回るのがなかやまきんに君)。配信では彼が視聴者を笑わせようとしてる訳でもない、意図されていないちょっとしたトラブルとそれに対する反応が、ファンの間で面白いと評判。旧来的なお笑い芸人として芸を披露することを期待されているのではなく、自称イケメンとか言ってた気がする彼がトンチンカンな事をしたり言ったりしてそれが愛でられている。
そしてそんなトンチンカンさをいかんなく発揮しているのが、この『まどマギ』初見視聴コメンタリー動画な訳なのだが、「この子がマギカちゃん?」とか言ってて面白いのだが(マギカというキャラクターは登場しない)、そもそも今まで視聴してなかった事が既に面白い。おぎやはぎ矢作がこのアニメ面白いとかちょっと言っただけでオタク大盛り上がり、みたいな出来事があったのは2012年の事。
コウメ太夫が顕著だが、先述したなかやまきんに君や狩野英孝など、当時はつまらないとされていたような芸人たちが、つまらないから面白いと評される価値の反転が2010年代にあり・・・、とやたら複雑な文脈がある日本のお笑いについて考えさせてもくれる副音声でした。
78位
魔法少女ノ魔女裁判
ゲームです!
私としても『まどマギ』(2011)(魔法少女が戦うアニメ)とかいつの話してんだよと思わなくもないのですが、この作品も魔法少女があれこれするゲームです。しかも魔法少女達がデスゲームぽい状況に置かれる『ダンガンロンパ』(2010)みたいなミステリーテキストアドベンチャーゲーム。うーん、2025年とは?
魔女(危ない力を持っていて社会にとって良くない女)になる可能性がある(魔法)少女達を、どっかに閉じ込めておけば互いに殺しあってくれてラッキー、とこのゲーム世界の社会は考えているらしく(酷い奴らだ!)、主人公の少女たちは目が覚めると古びた洋館にいてびっくり、そしたら殺人事件とか起きてまたびっくり、ついには裁判が行われてあわわのわ。この裁判がまあ大体『ダンガンロンパ』で、そもそも魔女と魔法少女の設定はそのまんま『まどマギ』で、諸々の説明は不要でしょって雰囲気がそこかしこにある。まあこれは別に悪いことじゃないけど。
基本的にはテキストアドベンチャーゲームなので、ある区間の文字を全部読んだら裁判が始まって犯人当ててまた文字を読むの繰り返しで、これはマジでどう考えても信じられないくらい、今っぽくない。こ、これが今年の話題作だと・・・!?と思いながらプレイしていると、中盤で今っぽいといえば今っぽいがテキストアドベンチャーだと古すぎるタイムループ展開が始まって、「今」はどこ・・・?と言う気持ちでしかなかった。
それでもこのゲームには独自の魅力があり、プレイの中で何度も繰り返す裁判、すなわち論理パズルを突き詰めていった先に、魔法少女であるキャラクター自体が論理のパズルであったことを明かすクライマックスの展開は、「キャラクター」という構造物への批評として・・・、いや、まてまて、それ自体がやっぱり全然今っぽくないよ。どうなってんだ。怖。
でもどうやら、結構本当に若い人たちに楽しまれているみたいで、それはそれで大変よろしいことなのだけれど、文化が積み重なってないって、事なんですかね。それはこの作品とは関係のない話なのですが。
77位
今すぐ輪廻
なきそ
音楽です!
魔法少女とかいつの話してんだよと、話がループしてますが、ループとかいつの話してんだよですが、なきそによる初音ミクを使用したこの楽曲は、魔法少女だしループものだし美少女ゲームがモチーフとなっている2025年のボーカロイド楽曲を代表する人気曲。
女の子が変身しそうなかわいらしい(FMシンセの)音色とハードなテクノサウンド隣合う普通じゃ考えられない楽曲構成だが、先述した古臭い要素を病みカワでまとめるというコンセプトで貫くことによって成立させる、アクロバティックで新鮮かつキャッチーな楽曲。ようやるわ、こんなこと。
本作の映像は2024年のサツキによるボカロ曲の『メズマライザー』でMVを作っていたchannel。まじかわいいミクのデザインとアニメーションはお手の物って感じで、時代に(部分的に)刺さるセンスを持っている。
魔法少女はどうやら「今」らしい、という結論。
もはやボカロバズらせ屋さんと言えるchannelなのですが、柊マグネタイトの楽曲『ざぁこ』(もとの動画は削除されてリメイクされた)でも映像を担当。その楽曲は小児性愛をポジティブに表現していると主に海外からのリスナーから反応があり炎上していたりした。もはや誰も覚えてなさそうだけど、今後そういうことも多くなるのかもねえ。
76位
Man’s Best Friend
Sabrina Carpenter
音楽です!
サブリナ・カーペンターのえっちなアルバム。セクシー?えっち?いや、えっちかな!
何がどうするとそうなるのかよく分からないアホみたいなジャケのインパクトがまず凄い。一体どうしたというのか。
まあこのジャケ通りのコンセプトでございますなアルバムなんだけれど、サブリナ・カーペンター自身は10代のころからディズニーチャンネルのコメディドラマに出演してたりで、だからこそ、この扇情的なデザインは強烈にうつるよね。
シドニー・スウィーニーを起用したアメリカン・イーグルスのコマーシャルもそうだけど、今のアメリカはバックラッシュというか、逆にエロいブロンドの白人女性がかっこいいみたいな、分かりやすすぎるゲームチェンジが起きていて、分かりやすくてかわいいね。日本としてはさ、そういうアメリカが好きだったりするじゃん。そういう風に育った国だからさ、負けてから。そういう価値観だったりゲームチェンジだったりが良いとか悪いとかって話はどうでもよくて、そういうものはあるし、時代によってはそういう風になるし、極端だなあって笑って楽しめばいいのかなと個人的には思う。
肝心の楽曲についてなんだけれど、2025年のアメリカのポップスでは一番聴きやすい気がする。適度に新鮮さもあるし、安心感もある。歌詞も別に日本人だから聴いてる分には関係ないし、というか訳とか見てもそんな過激でもない。そんでもって、このちょっとえっちなディーバってポジションは、ちょうど今すっぽり空いてますよ状態だったんだと思う。そこにすっと入っていく賢さ、見習いたいねえ(?)
75位
【新卒採用/KCCS】コンセプトムービー「a Day in The Life by KCCS」
新卒採用コンセプトムービーです!
ニコニコ動画で2015年から2020年まで動画を投稿していた投稿者wawawa、通称アル中カラカラは、とんでもなく濃いハイボールを作ってジュゴゴゴゴッゴゴ!!!!!!!!と音をたてて飲み「美味しいかもー!!!!」と叫ぶ動画などが話題となり、ネット上で時の人となったことで知られている人物。そんな人物がこの京セラの動画に部分的に出演していたとして話題となった。
彼の動画では信じられないほど汚い炊飯器を炊飯以外の用途で使い倒していたり、ござの上に直接食材を置いて加工したり、火のついたタバコをペン回しの要領で回して火傷しかけたり、どんな人生を辿ればこんな人間性になるんだと人々を驚愕させ楽しませてた。
↑カツ煮を炊飯器で作る際に大量の味の素を入れているところ https://www.nicovideo.jp/watch/sm34673431
まさにこれが底辺か!!!と勘違いさせてくれるエンタメだったのだが、動画投稿が止まってから約5年ぶりの露出となった本動画で、まさか京セラの社員だったなんて!!!!と驚きの声が多く上がった。しかし、アル中カラカラのマニアたちは動画で確認できる断片的な情報から彼が京セラで働いていることを推測しており、マニアの間では周知の事実ではあった。
アル中カラカラは日本のインターネットカルチャーにおける超人気コンテンツ「男性」を考える上で、言い換えると日本のトップストリーマーの加藤純一を考える上で、重要な人物の一人だと私は考えているのだけれど、そもそも加藤純一について考えることが重要であるとされていないので、重要じゃないかもしれない。
ざっくり言うと、露悪的に自分の人生をインターネットという場で公に晒すというパフォーマンスが、日本のインターネットカルチャーの中では長らく人気であり、時代の移り変わりの中で形をかえて常にそのようなコンテンツ群が誕生し続けている状況がある。2002年に登場したP2P技術を用いた動画配信ソフトウェアのPeerCastを用いて、2006年ごろから「永井先生」と呼ばれる男性が自分の生活を晒すような配信を始め当時のネットユーザーに注目されたところから、そういった需要は確認できる。ニコニコ動画・ニコニコ生放送を経て、現在様々なサービス上で多くの配信者がモデルとしているのは加藤純一であるのだが(暴露系YouTuberのコレコレなど)、その雛形は永井先生にある。アル中カラカラはそういった文脈の中でパラレルに展開した「男性」コンテンツと言える。ニコニコ動画的にはもう一人の重要人物であるパンツマンという普通の料理動画を投稿する普通のおじさんもいるのだけれど、パンツマンは2020年に結婚報告をしてから明らかに再生数が下がったりとそれはそれで考えさせられるのだが、今回のアル中カラカラの動画で、ネット上で展開される男性の人生晒す系のパフォーマンスのあり方を改めて考えさせられる。アル中カラカラを模したタイプの動画は現在でも広がりを見せる一方で、そういった振る舞いはパフォーマンスでしかないのに、なぜ「リアル」だと感じてしまうのかは、2000年代にインターネット的とされていたイメージを私達が未だに引きずっているからだと思われる。良くも悪くも。
ついでに言っておくと、この文章を読んでいる人の多くは株式会社ゲンロンの創設者である思想家の東浩紀のYouTube突発雑談配信を見たことがあるのかもしれないが、東浩紀の配信もこの文脈の中にあると言える。というか、2016年ニュース振り返り特番【ゆく年逝ってよし!】というニコ生の番組では加藤純一と東浩紀は共演したりしている。
74位
Saturday Night's Main Event: Dec. 13, 2025
プロレスの試合です!
ハリウッド俳優としても知られるプロレスラージョン・シナの引退試合のあったWWEのイベント。
私はプロレスを普段見たりする訳ではないのだが、『ピースメイカー シーズン2』(ジョン・シナが主演のヒーローもの)を見たばかりだったので興味をもち、嘘、本当はたまたまそのイベントがあることを知ってなんとなくジョン・シナだと思って見ただけなのですが、これが『ピースメイカー シーズン2』なんかより全然面白くてびっくり。
プロレスラーとしてのジョン・シナは超人気のヒーローで、「ネバーギブアップ」をスローガンにているらしいのだが、彼の対戦相手であるグンターに何度もスリーパー(首に腕を回してぎゅって締める技)をかけられた末にタップして敗北してしまう。ファンにとってこれはとてつもなくショックな展開だったみたいで、番組では試合終了後に独特の空気が流れていました。頭を抱えて口あんぐりの観客が次から次へと映し出されてて、世界が終わることを知ったみたいだった。
しかもジョン・シナがタップする直前、彼が微かに微笑んでいるように見える瞬間があり、その微笑みの真意についてあれやこれやと議論されているからすごい。そういう世界なんだね。
試合終了後にエモい音楽が流れてジョン・シナの半生を振り返るスライドショーが再生される演出も、よく分からないめっちゃ感動的。
私は俳優のジョン・シナしか知らなかったので、彼がいかにアメリカで愛されていたかを目の当たりにして、かなり驚きました。
73位
WELCOME TO THE INTERNET
佐藤乃子
音楽です!
再びボカロの話です。先に述べた『今すぐ輪廻』で病みカワについてふれましたが、メンヘラってなんかかわいい(上にまじエロい)よねってノリがここ数年ボカロではやりつづけていて、正直病みカワばっかで飽きてる。これはDECO*27っていうボカロ楽曲屋さんのせいなんだけど、それはともかく佐藤乃子による本EPは、そういうのからは少し外れたことを試みていて、それっていいじゃん。
サウンドの特徴としては、繊細さを感じる細かな電子音と温度を感じにくいシンセを多用したエレクトロニカで、そういうスタイルは何故か日本人ばっかりが好きなやつで、日本にはそういう感じのインストゥルメンタル曲が無限にあるんだけど(rei harakamiみんな好きすぎだろ)、本作はそれらをポップソングに変換するためにもうちょっとアグレッシブにしている感じ。内省的で、繊細な、まあざっくりメンヘラっぽいものを別の形に翻訳したものではあるんだけど、ボーカロイドを使うならこういうことできるなって考えたときに、結構すぐ出てきそうなアイデアではあるんだけど、これをやってる人はなかなかいない。過去には宇田もずく(uku kasai)がいたんだけど、なんかボカロやめちゃったし。
今更ボーカロイドについては説明しないけれど、このEPに収録されている楽曲はボカロ代表音源である初音ミクが使用されておらず、他の(なんかいっぱいあるんですよボカロ)さまざまな音源を使ってる。おそらくだが、自分が表現したいものが初音ミクが持っているイメージとは合わない判断している。何でも初音ミク(とか○音○○系のやつら)に歌わせるって時代はとうに過ぎている。そういう変化もボカロのおもろいところだと思う。
けどさ、「インターネット」って、今どきどうなん?またループしちゃうよ。
72位
国宝
映画です!
日本でめっちゃ流行ったやつだから説明を省くけど、吉沢亮と横浜流星がイケメンでよかった!あと黒川想矢がたくさん見れて嬉しい!
映画冒頭に【女形】って辞書引用したよって感じで言葉の説明が出てるわりに女形について何も語ってないとか、女性の扱いが雑とか、上映時間長すぎアホかとか、言いたいことは沢山あるけど、ビジュ良◎
とまあ、ふざけてみたけど、私はこの映画で歌舞伎のこと全然分からなかったから、初めて歌舞伎を見に行ったりしたし、そういう人も沢山いるんだと思うけど、それっていいことだよね。
吉沢亮はこれで頑張りすぎたからか、酔っ払いすぎてマンションで自宅の隣の部屋に間違えて入って世間をざわつかせたりしていたけど、いや、実際は関係ないと思うけど、面白かったから、つい。
71位
御門くん、今日もビジュがいいですね
むちゃハム
漫画です!
2025年4月からチャンピオンクロスにて連載中の漫画。タイトル通り、昨今の見た目の良し悪しを表現するときに用いられる「ビジュ」がテーマのラブコメ。
まず主人公の御門くんのビジュが本当にいい。素晴らしい画力とキャラクターデザインで、かっこいいしかわいいし。これだけでこの漫画はもう良いと思う。
しかし御門くんは、幼い頃太っちょで容姿を理由にいじめられていた過去を持っている。そこからダイエットだったりおしゃれだったりの努力の末、高校デビューに成功し学年イチの容姿淡麗男子になったのだが…。という物語は、いささか平凡すぎたりご都合主義だったりする。あきらかにテーマを持て余してはいるのだが、思いの外真っ直ぐにルッキズムを超えた友情を描けていたりもして、そこも魅力的。
70位
災
ドラマです!
「サイ」と読みます。
香川晃之主演のホラードラマ。WOWOWオリジナル作品となっていてWOWOオンデマンド(月額¥2530)に加入しないと見られない、見てると通ぶれるやつ。
香川晃之と話した人が何故か死んじゃうっていう超怖い設定のドラマなのだけれど、香川晃之は困ったことに日常に潜んでいて、時には塾講師、時には理髪師、時にはトラックドライバー、という感じでそれぞれ見た目もひととなりも全く違うから恐ろしすぎる。この演じ分けが流石としか言いようがなく、次はどんな香川晃之が見れるのかワクワクしながら楽しめる。
香川晃之の性加害報道があったのは2022年のことだけれど、その報道で公開された写真の香川晃之の顔があまりにも怖くて多くの人が震え上がったと思うが、どう考えてもその報道以降のパブリックイメージを逆手に取った企画で、そしてそれが上手くいっている。世の中には悪いことを考える大人が沢山いるんだなと思わされる。
そんな悪い大人というのが、お笑いコンビの「いつもここから」をEテレに幽閉し続けている『ピタゴラスイッチ』で知られる佐藤雅彦が設立した「5月」という映像制作会社の関友太郎と平瀬謙太朗。「手法がテーマを担う」といういまいち何言ってるのか分かりにくいコンセプトを掲げている彼らの作風は、作品の核であるその手法を強調するためか、とにかくミニマルで淡々としていて、正直結構早く飽きる。でも、おー手法ですねって褒めたくなる。褒めやすいものが作れてすごいね。性加害報道のあった顔が怖い俳優を起用するという手法は、確かにテーマを担っている気もする。ほんとの事を言うと、2022年にすでに「5月」は香川照之主演の『宮松と山下』という映画を発表している。組むのは2回目ってことなだけ。冗談冗談。はは。
ちなみにドラマを再編集した劇場版が2026年2月に公開するので、それを観るのがいいと思う。
69位
Öoo
NamaTakahashi
ゲームです!
かわいい芋虫みたいなキャラクターを操作するアクションパズルゲーム。個人制作されたもの。
芋虫は体の一部を切り離せて、それが爆弾になってボカンってやると壁があって通れなかったところを通れるようになって先に進めたりする。この切り離す順序、爆発するタイミングをあれこれ考える必要があり、そこがパズルになっている。めっちゃシンプルなゲーム。
当たり前だけれど、パズルの難易度はどんどん上がっていき、新しいルールも追加されたりするので、これどうしたらええねんと悩む場面も多い。で、ひらめく。ぴかーん。この瞬間がパズル要素のあるゲームの価値そのものといっても過言ではない。脳汁どばっとしたい。でもそうなるには、パズルは難しすぎても簡単すぎても良くない。できれば、こんなことひらめくなんて俺天才かも?と思いたいし、制作者は思ってもらえるようにあれこれ考えてくれる。そしてこのゲームは、俺天才かも体験が結構詰まっている。
ゲームの世界には難易度曲線とかレベルデザインという言葉があるが、プレイの中でどうやってプレイヤーを教育していくか、どのタイミングで内容をステップアップさせていくかは、ゲーム制作者の腕の見せ所なわけです。
教育は基本的にプレイヤーに気づかれてはいけないので、自然にさりげなく新しいことを学べるように、そして自発的に学んだことを応用してもらえるようにゲーム全体をデザインしていく。本作はそれにかなり特化したゲームとなっていて、個人制作の規模だからこそ可能なミニマルなゲームシステムの上で、最上級の教育を施してくれる。
でも、クリアまでのプレイ時間が2~3時間程度なんだよね。ちょっとボリュームがなさすぎる。前作の『ELEC HEAD』より格段に良くなっていたので感動したのだが、あとちょっと物足りない。
68位
愚か者の身分
映画です!
西尾潤による同名小説を映画化。監督は永田琴、主演が北村匠海の闇バイト青春映画。
闇バイトに手を染めた青年の犯罪映画ですよって触れ込みで、まあ闇バイトとか流行ってるし見ておこうって映画館いったら、当たり前のように超ブロマンス映画で超びびった。
しかも前半は闇バイト後輩くんと北村匠海、後半は闇バイト先輩くんと北村匠海って、欲張りセットすぎる。更にさ、先輩くんは綾野剛。やば。いいのそれ。あざす。
『国宝』と同様に闇バイトとかそういうことに関しては何一つ分からなかったけど、北村匠海を中心とした関係性ガンガンのドラマが結構面白く、特に林裕太演じる後輩とのエピソードが展開される前半は、俳優たちの瑞々しさもあってか破滅へ進む青春ドラマとして目が離せなかった。
惜しむらくは後半の、綾野剛とのあれこれ。綾野剛は良かったが(北村匠海はずっとよかったが)、闇バイトを仕切る怖い大人たちが凄い安っぽかったり、同じ時系列を別視点で3回もなぞるので流石に回りくどかったり、怖い大人たちから逃げる先で仕方なくね、仕方なくだよ、ラブホテルに泊まる展開があったり、はいはい、あざすあざすって感じだった。いやそれも良かったよ。いいけど、いいじゃん別に。一緒にお風呂入ったりさ。いいじゃん、いいけど。
67位
『創価学会支部長』ナイツ塙の1日に完全密着!
YouTubeの動画です!
『創価学会の日常ちゃんねる』というYouTubeチャンネル上で公開された動画。
ナイツ塙に密着取材をするっていう動画で、外部の番組制作スタッフらしき人が「(こんな密着取材を受けて)リスク的には大丈夫ですか?」と訪ねたりするところが白々しくて面白い。そして番組の作りがテレビ番組として上質。こえー。
安倍晋三元首相襲撃事件を発端に、日本ではここ数年、宗教についての議論が盛んにされていたが、創価学会はしたたかに、このような番組を作ったりしているけれど、そんなに騒がれたりしていない。ま、宗教と表現活動はね、関係無いっすからね!藤井風もね!!!!
66位
米不足
米が不足したことです!
「令和の米騒動」とかね、言ったりしてましたね。2024年から米の値段が上がりまくって2025年では2倍近くになったり、ついには店頭から米が消えたり、主夫をしてる身からすると冗談きつーーーーーって日々でした。私は小麦食品を食べるとお腹壊しがちの体質で、毎日パスタは食べたくない。iHerbでグルテン消化酵素サプリを買って飲みまくるのもアホくさい。米は必要でした!
私は2025年、この状況がいつまで続くのか不安になって時たま調べていたのですが、これが全くわからない。専門家たちが全然違うこと言ってるし、SNSではJA農協が諸悪の根源だ!!!とか中国企業が買い占めてるんだ!!!とか陰謀論にまで展開して、ついにはインバウンド需要が〜とか、日本の人口を考えるとあまりに小さすぎる要因をテレビメディアがいけしゃあしゃあと語っていて、何が何やら。最早迷宮入り状態。そういった状況が本当に面白かった。皮肉でもなんでもなく、現在進行系で展開する都市伝説みたいな楽しさがあった。
米が無い原因がわからないって、そんなことあるんだね。世の中知らないことばかりです。
というか、結局今になっても、一応の結論とかを責任もって出してくれる人がいないわけで、うける。本当に面白いと思う。
65位
カイゼン:ある工場のストーリー
ゲームです!
1986年の日本を舞台にした町工場パズルゲーム。
アメリカのインディアナ州出身の主人公デビッド・スギモトは、日本の企業に就職できた!頑張るぞー!!!と思っていたのに、配属先が古い町工場で思ってたんと違うとなるが、そこで日本の「ものづくり」の精神を学んでいく池井戸潤的展開が始まるパズルゲーム。アメリカのインディーゲームなのに?そんな訳なさすぎる。
しかもそのパズルが、部品Aを加工して部品Bやとくっつけたり、これまた加工した部品Cとくっつけて目的の形にする工程を、アームやらを配置してそれぞれが動く順序をプログラムしていく、パズルゲームの中でもかなりニッチな、しっかりプログラミングをさせてくるジャンル。ナード向けのやつ。
開発のConcidence Gamesは、もともとはZachtronicsという名前だった開発会社で、Zach Barthって人が中心人物。とにかく彼らの作るパズルゲームはクセがつよく、ゲームを始める前にプログラミング言語の仕様書が書かれたpdfを印刷しろって言われたり、その仕様書を読みながらじゃないとろくに遊べなかったりするゲームを作ってたりしていた(そんでその仕様書自体が遊び心にあふれていて楽しかったりする)。
彼らの変なゲームを長年遊んでいたナードな私でも、流石に今回の池井戸潤ゲームには驚きまくり。しかも日本のものづくり精神系エンタメの解像度が異常。なんでこんなこと知ってるんだよ。その理由を知りたい。
ちなみにZach Barthは、大昔に『Infiniminer』というゲームを途中まで作って嫌になってやめたんだけど、プロトタイプ版の『Infiniminer』を楽しんでいた一人が、じゃあ自分でつくろってので作ったのが『Minecraft』だったりする。これ豆ね。
64位
「The GRANDアルトバイエルンⓇ」×アニメ「鬼滅の刃」
ソーセージです!
2025年の6月から、アルトバイエルンと『鬼滅の刃』がコラボした商品が期間限定で全国のスーパーで展開していました。
大抵のスーパーの加工肉ゾーンでは、日本ハムのシャウエッセンと伊藤ハムのアルトバイエルンが常に激しいソーセージバトルを繰り広げているのですが、流石にさ、このコラボは面白すぎる。
スーパーで働いていて、加工肉売り場に「6月、何かが起こる!!」って感じの小さいポスターを伊藤ハムの人が貼っていたのだけど、ソーセージでこんなコピーも無いだろと思っていたけれど、まさかの『鬼滅の刃』。キャラクターをイメージしたフレーバー商品も3種類だしていた。
サンリオの『ハローキティ』が分かりやすいけれど、IPが大きくなりすぎたり公共性が高まりすぎたりすると起こる謎コラボ現象。『鬼滅の刃』はそこまでのIPになったのかと、感慨深い気持ちになりました。企画会議で一回その話が出ちゃったら、もう行くしか無いんだろう感がすごい。会議想像して笑える。まあ実際は想像してるようなものじゃないんだと思うけど。
ついでに『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』について触れておくと、『RRR』みたいなだなと思いました。よく分からないけど勝ったり負けたりが濃いめの演出でどんどん展開されていって、ドーパミン出ちゃうよぉって感じでいいと思いました。でも流石に最後30分くらい長すぎね?
63位
BOXBOXBOXBOX
坂本湾
小説です!Kindleで読みました。
デビュー作にして第174回芥川賞候補となった坂本湾によるこの小説は、アマゾンやらメルカリやらその他諸々の大量のダンボールが一旦集まる宅配所を舞台にした不条理労働もの。
舞台となる宅配所では、何故か昼間にだけ濃霧が立ち込め、そんな中でベルトコンベアの傍らに立ち仕分けをする従業員4人が主人公。謎の濃霧という不条理な設定がとても映像的で、例えばフランク・ダラボンの映画『MYST』とかをイメージしながら読み進められるし、塚原あゆ子の映画『ラストマイル』で描かれるくらいには周知された流通の現場を舞台にする親切設計。けれどもその設定は斬新というほかない。やだよそんな職場。
とにかく雰囲気が不穏で鬱屈としていてそれが楽しい小説。霧が濃すぎてトイレの便器までちょっと濡れてる描写とか、うげーという気持ちになっていい。うげー感と不条理な飛躍のある展開によって、世間的には透明化されている過酷な労働を描いた上で、終盤になって急に「濃霧」に「ブレインフォグ」というルビを入れてかましてきたりする。なんだか知らんが、「ブレインフォグ」だったのかよ…!!!という気持ちに読んでるときはなるし、ブルーワーカーに限らず労働に追われる人々に宿る意識を表す言葉として、今その言葉を持ってくるのはセンスある。
でも描かれてることとしては凡庸といえば凡庸で、まあこういう小説あるよねと思わなくもない。
62位
45 Pounds
YHWH Nailgun
音楽です!
アメリカのニューヨーク出身のロックバンドのアルバム。聴けばわかるけど、変な音楽。なにしてんの?って思う。
今までにない音楽を俺達はやるんだ!!!っていう気合だけで作られたようなアルバムで、そういう点では凄い分かりやすい音楽。ボーカルとドラム以外は最早なんの楽器が鳴ってるのかが分からないし、多分シンセとおぼしき和音がピッチベンド(音を連続的に高くさせたり低くさせたりする奏法)しまくりでそれ自体は凄い不安定な印象、しかもそうじゃないだろってタイミングで鳴ったりするから笑っちゃう。でもドラムが力強くそしてリズム自体はしっかり安定しているので、実験的なおもしろ音楽としてはかなり聴きやすい。難解な音楽って大体リズムで難しいことてるじゃん?BPMから開放されたいぜ・・・って感じのそういう音楽とは違うところが個人的には好感が持てた。
こういう型を破ってやるぜ系音楽は常にあるものだけれど、ここまでサウンドとして新鮮なのは珍しいと思う。
61位
高市早苗
政治家です!
2025年10月21日から、第104代内閣総理大臣かつ日本の憲政史上で初の女性総理大臣になった人。すげー。
メディアの報道とかSNSの喧嘩とか高市早苗を中心としたあれやこれに、うわあ(ドン引き)みたいなものを目にできて個人的に楽しかったのだが、そんなことよりさ、やっぱり「ワークライフバランスという言葉を捨てます」発言が面白すぎた。でもたぶんこんな理由で面白がってるのは私だけ。
2022年にフロムソフトウェアから発売された『ELDEN RING』の追加コンテンツ(DLC)にはミケラというやばい奴が出てくるんだけど、プレイヤーはミケラの痕跡を追うことになっていて、その先々で彼の残したメッセージが発見できる。それが
「我が最初の肉体を、ここに棄てる」
「我が心臓を、ここに棄てる」
「我が迷いを、ここに棄てる」
こんな感じのが色んなところでたくさん見つかる。同じじゃん。
しかもさ、ミケラは人々を強制的に魅了できてしまう特殊能力があったり、彼の目的が最強だったのに死んじゃった身内を生き返らせようとしてたりで、同じじゃん。何がとは言わないけどさ。だいたい同じだと思う。
なのにさ、SNSで「高市早苗 ミケラ」で検索しても誰もこういうこと言ってないわけ、なんで?
全然関係ないものに類似点を見つけて鬼の首をとったように「同じじゃん!!!!」ってゲラゲラ笑うってのは、まあ下品なことだけれどさ、下品なものとして楽しむ姿勢が日本のインターネットには沢山あったはず。もちろんそういう文化の功罪はあるけれど、関係ないものを無理やりつなげることで社会を捉える姿勢そのものは、それこそ風刺と呼ばれるようなものと共通しているはずで、それって、もう無いの・・・?みんな、ゲームのことはゲーム、政治のことは政治、って分けて考えてるの???このままじゃ、こういう飛躍した遊びが陰謀論だけのものになっちゃいそうで、やだなあ。
60位
CODEMTC
YouTberだったりInstagramerだったりの人です!
手の動きが早いという一点で世界に挑んでいる変な人。
とりあえず動画を見てほしい
ほんとに早くてびっくりするんだけど、だから何だよって下らなさが面白い。
しかもなんか、見た目も絶妙というか、ドヤ顔がいい。
日本に暮らしてる人ならさ、ついつい言いたくなっちゃうと思う。俺でなきゃ見逃しちゃうねって。そんなことないか。
59位
奇譚氏にんぎょ
YouTuber(で合ってるはず)です!
短くて怖い創作話をYouTubeのショート動画で公開しているクリエイター。
彼の動画はモキュメンタリー・フェイクドキュメンタリーと呼ばれる手法をつかっていて、「実際にこの世に存在する記録、資料などを紹介する」という程のフィクションを1分程度にまとめて動画化している。ちょっとした小話みたいな動画がまあまあな数あり、どれもちょっと捻りの効いた内容で面白い。画像生成AIを用いた真実味あふれる異常なイメージの使い方もスマート。
その創作の下敷きとないっているのは、『SCP財団』と呼ばれる2008年に英語圏の人々によって開設されたコミュニティサイト内で共同創作されていった物語やその語り口。『SCP財団』はざっくりいうと都市伝説をみんなで作ろうってノリで、SCP財団と呼ばれる秘匿された巨大組織が人知れず超常現象などの対処をしているという設定を前提に、その組織の活動報告書という体裁をとってフォーマットがそれなりに決まった形で物語が記述、作成されている。おそらくその源流にはラヴ・クラフトが自分の小説設定を流用し他作家に別の小説を書いてええよってところから始まったクトゥルフ神話の精神がある。
それはさておき、そのサイトの日本支部みたいなところで2020年ごろから流行した、土着的な風習をモチーフにしたホラー作品(梨による作品群など)が注目を集めたことは、近年の日本でのホラーコンテンツブームを加速させた出来事として重要で、同時期に発表された雨穴の『変な家』(これもまたフェイクドキュメンタリー)と合わせてここで言及をしておくけれど、彼らがやっていることは要は『2ちゃんねる』の「洒落にならない怖い話」(口伝的な真実性を帯びた物語)や「意味が分かると怖い話」(”伏線”を”考察”というパズルにすり替えた物語)と呼ばれる創作郡の延長線上にあり、その時代の条件のもと恐怖を演出するのに効果的なメディアが変わっただけと言える。匿名掲示板から、共同創作コミュニティサイトだったり動画プラットフォームだったり小説投稿サイトだったり。
奇譚氏にんぎょはそんな文脈の中で、画像生成AIを使った新しいフェイクドキュメンタリーのあり方を示しているし、個人的には、こういうのはもはやショート動画くらいがちょうどよくて、なんかテレビ番組とか映画とかわざわざ作ってるのはどうかと本当に思っている。
58位
バレリーナ:The World of John Wick
映画です!
キアヌ・リーブス主演の『ジョン・ウィック』という変なアクション映画シリーズがあって、そのスピンオフ映画。これまでは男臭いシリーズだったが、主人公を女性キャラクターにし、それをアナ・デ・アルマスが演じている。
『ジョン・ウィック』シリーズは、一作目以外、ケレン味あふれる殺し屋世界の仕来りドラマが全然おもしろくないのに嘘みたいに長くて、見どころであるスタイリッシュじゃない重々しい格闘アクションが始まるまでに寝ちゃうシリーズだったのだけれど、本作はスピンオフだからなのか面白くないことをそんなしてなくて嬉しい。アナ・デ・アルマスがガチでアクションしててかっこいい!かわいい!って楽しめる。でも一番驚くシーンが、クライマックスにある嘘みたいに勢いがあって射程の長い火炎放射器を使ったバトルシーンで、このシーンは本当に馬鹿みたいなことをしていて呆気にとられる。本当に素晴らしい。その火炎放射器を打ち合うシーンも、ジョンウィックシリーズらしいVFXを極力使わないコンセプトのもと撮られていて、ありえない勢いで噴射する炎はほとんどが本物。凄い迫力。私はこういう馬鹿馬鹿しいものを映画館でみたいんだなって、改めて思った。
しかし、このシリーズで初の女性主人公の本作は、別にだからといって女性の物語を描こうとは全くしておらず、ほんとは最初の方でちょっとそういう話もあるんだけど全然女性の物語になっておらず、お得意の様々なアクションにおいてもそういう洞察が含まれているようには見えなかった。それはどうなのかなと思ったりもしたが、でもそもそも『ジョン・ウィック』の世界って異常な世界だし、性別とか関係ないのかもしれない。この異常なシリーズを重ねていった先に、性別とかって関係なくねと、ラディカルなことを描ける可能性を少し感じたりもする。
57位
ナタ 魔童の大暴れ
映画です!
中国国内でのヒットが凄すぎて、映画全体の記録を塗り替えてしまった中国の3DCG映画。
ちょっと俄には信じられないのだけれど、Wikipedia情報だと『1950 鋼の第7中隊』という映画の57.76億元という記録を抜いて、154.63億元の興行収入を記録したとかで、それって日本でいうところの鬼滅現象みたいなことなのかな。なんにせよ異常なことが起きてるっぽい。
中国神話や『封神演義』をベースにしたファンタジーアニメ『ナタ 魔童降臨』の続編となる本作。
明らかにアメリカのドリームワークスやイルミネーションの3DCGから影響を受けていて、キャラクターの質感や動きの付け方が知ってるやつ。キャラクターのコミカルで大げさな動きが、ドリームワークスの3DCGアニメに近い。つまり、3DCGアニメとしてクオリティが非常に高い。
妙に下品なギャグが多かったりするのは監督の作家性なのか中国っぽい笑いなのかは私には判断がつかないが、そのあたりがアメリカの数多ある3DCGアニメには無い魅力になっていたりもする。
幻想的で人知を超えた世界を表現するために、巨大構造物がたびたび登場するが、それがドゥニ・ヴィルヌーヴ(『DUNE/デューン 砂の惑星』とかの監督)の映画みたいな迫力の出し方で、中国のファンタジーアニメーションでこんな画が見られるんだという驚きもある。なんか色々貪欲にパクっていて偉すぎる。
それで、何故だかわかんないけれど最後主人公のナタが覚醒して大活躍するところでは、ナタの見た目がもろ『ワンピース』のルフィで、いや本当にルフィで、ルフィなんだ・・・となる。
本作の大ヒットや、鬼滅の刃やチェンソーマンの映画の世界的なヒットによって、映画といえばアニメーションじゃね?なんて話もあるが、少なくとも2025年は映画と言えば週刊少年ジャンプってことになってない?これ。
56位
GOAT
文芸誌です!Audibleで聴きました。
小学館が何を思ったか知らないけれど、「かつてない」と謳う文芸誌を創刊(と言っていいのかな)。電子版もムック本も500円ちょっとという、安いね、これならさ気軽に買えちゃう。まあAudibleで聴いてるから関係ないけど。
現在2026年1月時点で、すでに3,4冊出てるけれど、ここで扱うのは最初の「愛」特集のやつだけ。ほかまだAudibleで出てないんだもん。
そんな文芸とかに詳しくない私でも、寄稿している人の名前をざっと見るだけでもなんか変なことしてるなってことが分かる。普通その名前並ばないんじゃない?って感じで色んな人が参加している。
特集である「愛」をテーマに書かれた小説は、どれもさらっと読めるしジャンルが違うしアプローチも違うし粒ぞろいだしで結構おいしい。なんか?文芸とか?これだけ読んでたらいいやって気持ちになる。だめだけど。
中でも麻布競馬場の『違う海にいる』は傑作で、友達の新居への引っ越しの手伝い中に隙きを見て家の主を差し置いて一番風呂に入るって趣味を持つ男の、その下らない導入から切ない恋愛未満の関係が明かされる小説となっていて、ちょー良い。と思ったら冲方丁の終末SFが始まったりして、なんやねんとなる。楽しい。
Audibleではオーディオブック化しないっぽい、対談だったり詩だったりコラムだったりも収録されているので、Kindle買って読もうと思う。
55位
Blue Prince
ゲームです!
Dogubombが開発、Raw Furyがパブリッシングした、パズルアドベンチャーゲーム。説明が難しいゲーム。
インディーゲームの世界ではここ数年、いやここ十年、猫も杓子もローグライクっぽいゲームばかりで、「ローグライト」と呼ばれ別ジャンルとして確立している。
しかし「ローグライト」とくくられていても、それらのゲームの内容は多岐にわたっている。大雑把に言うと既存のジャンル(RPGだったりプラットフォーマーだったりカードゲームだったり)を「ローグライト」として再解釈したものが「ローグライト」と呼ばれている。んで、その肝心の「ローグライト」ってそもそも何やねんって話だが、『ほどほどに制御可能なランダム要素』を軸にデザインされた”ゲームシステム”と説明できる。
例えば日本で馴染み深い『ドラゴンクエスト』や『ポケットモンスター』のようなRPGをイメージしてもらいたいのだが、敵と戦い倒す→レベルが上がる→強い技や武器を手に入れる、こんな感じのサイクルがあったとして、でも敵が強すぎてすぐゲームオーバーになっちゃうとする。そんなときに「敵が弱くなる」「レベルが上がりやすくなる」「強い武器や技を手に入れやすくなる」この3つの特殊ルールを一つ選択して途中から導入できるよって言われるのが「ローグライト」。若干攻略がしやすくなってもまだクリアできないとなると、こんどは「レベルが上がる程敵が弱くなる」「敵を倒した数だけ武器や技が強くなる」「特殊ルールの選択肢が3つから4つに増える」みたいなルールを新たに一つ導入できたりする。ルールを追加することによってゲーム内のランダム要素をコントロールしていくのが「ローグライト」というジャンルの本質。
話がようやく本作『Blue Prince』に戻るが、このゲームは『MYST』や脱出ゲームのようなパズルアドベンチャーに、「ローグライト」を組み合わせた意欲作。この組み合わせはかなりユニーク。
謎が散りばめられた部屋をよく観察し謎を見つけ、別の部屋のヒントと組み合わせて、そこから導いた答えを使ってまた別の部屋のパズルを解く、といった基本的な部分はオーソドックスなのだが、驚くことに謎やパズルがある部屋がランダム要素。一度出会った部屋に、次に出会えるかはプレイの中で追加していくルールによるコントロール次第で、謎を明かしてパズルを解ける状態にあるのに、パズルのある部屋に全然たどり着けなかったりする意地悪なゲーム。
パズルアドベンチャーゲームとしてのクオリティは高い。すごい。ローグライト要素の組み合わせも新鮮で面白い。っていうかこのゲームは面白い。でもすっごいむかつく!!!!!全然思い通りにいかない!!!!!時間がかかりすぎる!!!!てめぇいい加減にしろ!!!!!って叫んでいたら50時間とかプレイしていた。私がすごい下手くそなのだと思う。まじしんどかった。思い出してもイライラする。というかここで触れなきゃいけない事も多くて文章書くのが超大変でむかつく。どこまでこのゲームに苦しめられないといけないのか。私がゲーム下手なのはわかったから、もう許してほしい。というかローグライトが流行ってるとかいうけどさ、そのきっかけを作った『FTL: Faster Than Light』が結局のところ一番おもろくない???
ちなみにこのゲームは現時点ではローカライズの予定はない。全編英語。そんでもってローカライズが非常にしにくい設計をしているので、今後日本語化されるか分からない。
私は英語がかなり分からない人間なのだが、ゲーム画面をスクショしてAIに翻訳してもらいながらプレイした。結構快適にプレイできてしまった。AIありがとうね。
私はその存在を知る前にプレイを終えてしまったが『PCOT』という翻訳支援ツールが便利らしい。はあ、触れなきゃいけないことが多すぎる。
54位
ザ・スタジオ
ドラマです!
AppleTVオリジナルのドラマ。ハリウッドの映画スタジオを舞台にしたドタバタコメディで、主演のセスローゲンが、監督・脚本にも部分的にクレジットされているどころが、制作総指揮もしてる。セス・ローゲンすぎる。
ハリウッドについて少し詳しいひとなら思わず笑ってしまうようなネタがこれでもかと詰まったドラマで、有名な俳優や監督が本人役で出演したり、その豪華さにワクワクしたりする。1話でハリウッドの大御所監督マーティン・スコセッシが本人役登場し、ひどい目にあっていて笑う。
注目は2話目、30分ほどのエピソードがまるまる長回しとなっていて、スタジオの代表である主人公が撮影現場に顔を出してウザがられるというストーリーなのだが、そこで行われている撮影が長回しシーンで、主人公が本当に余計なことをして撮影の邪魔をしちゃうドタバタ感が本当に笑える。
セス・ローゲンという奴は業界人にモテモテの業界人で、正直それをずっと自慢してるドラマには見える。映画についてのドラマを作ることによって、もっとモテようとしてる貪欲さも感じる。おそろしい人間だと思う。
終盤のエピソードでは、主人公が代表を務めるスタジオがAmazonに買収されちゃうかも!という話になっていき、まあ色々業界が変わっていくことへの哀愁を感じさせながらそれでも映画というものを賛歌していて感動なのだが、ってかAppleTVじゃんかこれ。いいのそれ。終わっていく一つの時代でノスタルジーを先取りするような下品さも感じるが、でもまあ、おもしろかったんだよね。
53位
ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング
映画です!
1996年から続く、言わずとしれたトム・クルーズ主演のスパイアクション映画『ミッション:インポッシブル』シリーズの、一応シリーズ最後ってことになってるらしい本作。
『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』の後編で、前作から話が続いていて、とりあえずAIがやばくて、AIが核でやばくて、AIが核で人類滅亡でやばいって世界をトム・クルーズ演じるイーサン・ハントが救っていました。
この映画はどう考えたって歪な構成をしていて、アクションが売りのはずなのに映画が始まって1時間30分くらいずっと人間が会話してるだけでまじ面白くない。これ書きながらも、そんなふざけた映画をこのランキングに入れても良いのか葛藤があるけど、でも1時間30分経ってからはもうなんか凄い。トムが。
予告編やらポスターやらで散々出ている複葉機アクションシーンがクライマックスにあるのだが、これがちょっと信じられない映像になっている。凄いスピードで旋回しながら飛んでいる複葉機の翼の間でトムがそこにしがみついて頑張るっていうアクションシーンは、実際にトム・クルーズが複葉機の翼の間に細いワイヤーで固定され撮影されたもので、常軌を逸している。風圧によってトム・クルーズ(撮影時で60歳くらいで、もう顔の皮膚とか結構たるんでるんですよ)の顔が、もうグニャグニャブルブルになってる。トム・クルーズは自分のパブリックイメージを正確に把握している俳優で、その上で自分でこのシリーズを長年プロデュースしている。その現時点での到達点として、老いた顔を狂ったスタントで震わせるってことをしている。これがエンターテイメントですと言っている。そ、そうなのか?とも思ったりもするが、有無を言わせぬ説得力が彼の歪んだ顔にありました。
サイエントロジー的に顔グニャグニャが意味あるんだったらちょっと変わってくるけど。藤井風もね!
52位
ワン・バトル・アフター・アナザー
映画です!
ポール・トーマス・アンダーソン監督、レオナルド・ディカプリオ主演の長い映画。長い映画ばっかりだよ。いい加減にしてほしい。
元活動家のお父さん(ディカプリオ)の娘が誘拐されちゃうんだけど、その原因が20年前の活動家時代のあれやそれやで、「ファック!」とか沢山言いながら娘のために過去の因縁と対峙する、という内容のようでいて別にそういう話でもなかった本作。徹底して「父」の無力さを描いていて、個人的に正直そういうのはもう飽きてはいるんだけど、ディカプリオがキレたりおどおどしたり転んだり高いところから落ちたり調子のったりするのがマジ面白い。あとベニチオ・デル・トロ演じる柔術の「センセイ」が超かっこよくていい。とまあこんな感じで、個性的な登場人物が沢山でてきて楽しいって映画なのに、多くの人が難しいことをこの映画で言ってて不思議。閑静な住宅街の中にある戸建ての家の地下に超でかい秘密基地があって、そこで権力のある白人至上主義者たちが悪巧み会議してるようなアホ映画なのに。
でも個人的には、アホ映画で楽しかったんだけど、ちょっとそのへんの娯楽映画とはウチ違うんで〜っていう格好つけがありすぎて、そこは楽しめなかった。この映画で最も言及される最後のカーチェースシーンは、IMAX画角を最大限に活かした超画期的なものなんだけれど、だから何?あー、やってんなぁって思いながら正直ちょっと寝た。長いのが悪い。
というかこの映画、史上初の全編IMAX画角の映画らしくて(今まで無かったんだね)、んで次のクリストファー・ノーランの映画も全編IMAX画角らしいんだけど、IMAX屋さんのノーランが遅れをとっててちょっと痛快。一応池袋のグランドシネマサンシャイン池袋の超でかいとこで鑑賞したけど、監督の格好つけに付き合うために高い鑑賞料払ったと思うとちょっとおこ。
51位
REST IN BASS
Che
音楽です!
2006年生まれ、アメリカのジョージア州アトランタのラッパーCheによるアルバム。
全編割れた音まみれのやんちゃなアルバム。悪い音!!!!ばっか聴けて楽しい(?)
とりあえずジャケがこれ
悪そー。
ヒップホップって過度にハイコンテクストで、海外のシーンや楽曲群は正直日本に住んでる平凡なポップカルチャー好きからしたらあんま関係ないことになってるものが多いと思う。マニア向けだろと個人的感じている。2025年日本でも話題となったプレイボーイ・カルティのアルバム『MUSIC』も、何が優れいているのか解説とかを色々読んで、なるほどなって思っても、別にサウンド的にピンとくるものが無かった。行儀いいよね。
『REST IN BASS』はその点、聴けばもう分かる。くそうるさい。何考えてんのってくらいうるさい。歪みまくってほとんどノイズのような音が常に鳴っていて、そして何かに怒ってそうな叫びが断続的に左右からずっと聴こえてくる。もちろん、音楽が破壊的であればいいと思ってるわけではなく、ここにはしっかりコンセプトが感じられる。『REST IN BASS』っていうだけあって、現代の音楽における「低音」へのさまざまな試みが感じられる。例えば音が割れ過ぎちゃって低音成分が損なわれてるベース音が鳴り響く『ON FLEEK』って曲では、バリバリスカスカなベースが情けなくも聴こえる。音楽を作るソフトではそういった加工はプラグイン一つ噛ませてちょっと操作すれば簡単にできちゃう故、せつねー音でもある。そういうエモーションがあるアルバムでした。
50位
スピリチュアル・フィクションズ
展覧会です!
ホストクラブ経営で知られるSmappa!Groupが運営する、歌舞伎町のまじ小さいアートスペース「デカメロン」で2025年9月に行われていたもの。Smappa!Groupってほら、Chim↑Pom from Smappa!GroupのSmappa!Groupの部分(投げやり)。
海野林太郎 、王之玉 、アレキサンダージュリアンという3名の作家による、SFをSpiritual Fictionsに読み替えましたって感じの内容。
なのですが、アレキサンダージュリアンって作家がまじ大暴れしてて、この人の作品の印象しかない。てか、こんな作家名だけど普通に日本人の男性だった。ふざけてるよね。
まず以下の写真を見てほしい
展示スペースに入ると、力技でこしらえられた植物で埋め尽くされた空間があり、その植物に虫かごが縦に吊るされてる。虫かごの中には観賞用のパン(食用じゃなく水分を徹底的に飛ばすパンがあるらしい)があって、パンはコアラの形をしている。通称コアラパン。
キャプション代わりのポストカードサイズの印刷物を読むと、「コアラパンは小麦粉でできており、つまりは植物なので、植物の立体芸術です」って書いてある。この作家は生花作家であるらしく、つまりこれは生花らしい。まじか。
この空間には5つのコアラパンが吊るされているんだけれど、そのコアラたちは「コアラエンサー」らしい。コアラのインフルエンサーってこと。もう全部が分からんよね。しかも先述した印刷物の裏には各コアラのフォロワー数とか書いてある。やかましいわ。
私が訪れたときは、会場に作家本人が在廊していたので、あれこれ伺うことができたのだが、めっちゃしゃべる。色々説明してくれる。そしてその説明はそこまでぶっとんでる訳でもなく、なるほどだからこういう作品なんですねって理解すらできちゃう。んで、もう一回作品を見ると、いややっぱ分かんないわってなる。
「この虫かごには、パンを食べちゃう小さい虫も一緒に入っていて、だからコアラはどんどん内側が食べられちゃう。インフルエンサーがどんどん自身が消費されていってしまうことを表現してるんですよ」なるほどねー、あーたしかに、ふむふむ。・・・・???
本当に良い芸術体験でした。
49位
見える子ちゃん
映画です!
泉朝樹による同名漫画の実写映画。監督は『ほんとにあった! 呪いのビデオ』や伊坂幸太郎作品の映画化で知られる中村義洋。
ここ数年、国内外問わずホラー映画が本当に多いんだけれど、2025年は輪をかけてホラー映画だらけ。個人的にはホラー映画は好きだから別に良いんだけど、でも限度があるよ。
2025年のホラー映画の注目作としては、『ドールハウス』や『近畿地方のある場所について』などがあり、この二作とも別に悪い作品じゃなかった。特に『ドールハウス』は『ウォーターボーイズ』で知られる矢口史靖の新境地、とみせかけて原点回帰なホラーファンに嬉しい作品だったが、同時にあまりに懐古的でもあった。
本作は原作漫画自体がそうだったように、ホラーをメタ的に設定へ組み込んだコメディになっていて、そしてそういった要素を爽やかな青春映画としてまとめ上げた意欲作。誰かが失踪したりしすぎな近年の国内ホラーの盛り上がりを考えると、もっとこういう企画が出てきても良い気もするんだけど、意味が分かると怖かったりすることを必死で考えてる人が何故か多い。意味がわからない。
この映画は、決して重厚だったり派手なアクションがあったり美しい映像があったりと、そういった映画的な映画ではない。安っぽいと言えば安っぽい。でもそもそもホラーなんてそういうものだし、なんて言うと「いやいやホラーってのはその当時の社会の恐怖を描いていて…」って怒られることは知っているが、ちゃらちゃらしたものでもあるじゃんか。怒るな。気軽に見れて、意外と泣けて、次の日には忘れちゃう楽しいホラーっぽい映画が出てくると、幅が出てきてジャンルが成熟してきたなって思える。
あと、この映画で久間田琳加って人を知ったんだけど、凄い才能だと思う。生命力が強いってキャラクターを演じてたけど、たしかに生命力を感じる佇まいで魅力的だった。
48位
んば!
熱焼江うお
漫画です!
ビッグコミックオリジナルで連載中の、変則的な異能力バトル漫画。
小さな警備会社で働くルール絶対守るマンである青年が主人公は、仕事先で化け物に襲われたせいで変な能力をみにつけてしまって、それを使って化け物と戦うって物語。秩序大好きで融通が利かない主人公が、無秩序な状況に置かれるおかしみ描いてる本作は、労働者のドラマを不条理なシチュエーションで描いてるという点で『BOXBOXBOXBOX』と同じようなことをしている。
この作品の面白いところは、『ジンメン』(2016-2019)や『モンキーピーク』(2016-2019)といった、漫画市場でちょっと前に流行った過激なイメージが先行するモンスター・パニックもののフォーマットを借り、今だとトーチwebで連載されてそうな癖の強いサブカルっぽい絵柄を使って、労働にまつわる諸問題を描いている点。凄い面倒くさいことをしている。のだけれど、漫画だとそういう面倒臭さがあまり目立たないのが良いよね。
普通とはちょっと違うリズムや絵柄(=サブカルっぽい)のある漫画を読んでる満足感もあるのだが、それでいて絶妙に女性キャラクターがかわいいところが偉い。
こいつ。
最初出てきたときは全然かわいく思えなかったけど、読んでくとかわいい・・・ってなる。上手だなあ。
47位
デュオ どすこい相撲大会
相撲大会です!
アメリカに本社を置く企業が運営している『Duolingo』というWebやアプリで言語学習ができる基本無料サービスのキャラクター、緑色の不気味なふくろう「デュオ」。そいつが日本のマスコットキャラクター達を集めて相撲大会を開いた。
なんで????と思う人も多いかもしれない。DuolingoはTwitter(現X)での広報が信じられないくらい上手い。最近だとSuicaのペンギン引退騒動でこんなことを言っていた
えぐw って感じだが、こんな調子で常に何かしらのツイートがバズったりしているとんでもない奴ら。そこで打ち出されるのは緑色のフクロウ「デュオ」のウザかわいいキャラクター性だったりで、日本ではデュオはキャラクターとしてなかなかに認知されている。
DuolingoのCM映像などで、デュオの着ぐるみなどが登場していたり、日本のマスコットキャラクター文化の中でしれっと居座り影響力が強まり続けているそんなフクロウが、集合をかけたら結構色んなマスコットキャラクターが集まっちゃって凄い、というのがこのイベント。お前らそんなんで良いのかよ!!!と思わなくもないが(特にソニックとか)、Duolingoだからこそこれだけ色んな奴らを集められたとも言える。マスコットキャラクター好きには、なかなかたまらないイベントになっていた。
Duolingoが巧みなのは、デュオのウザかわいいキャラを利用し、この大会ではヒールっぽい役割を演じ、そしてちゃんと他のマスコットキャラクターに優勝を譲っていたところ。まじずるいシード枠を主催者権限で用意し、最後の残った奴とデュオが対決するというルールがデタラメで笑えた。
Duolingoは2025年12月に渋谷でポップアップショップを開いたりと、日本のキャラクターIPビジネスにしっかり食い込んできていて恐ろしい。
ついでに言っておくと、Duolingoに登場する女性キャラクター「リリー」は超人気キャラクターで、ファンアートがSNS上で溢れかえっている。日本でもいい感じにこのキャラ描けば、いい感じにバズれるって感じのポジションにいる。このキャラクターは愛想の悪いゴスっ娘で、まあこんなんみんな好きじゃん、ってやつ。最近だと「移民に反対するAmelia」とかね、あるし。みんな好き。私もすき。
46位
邪悪なるもの
映画です!
アルゼンチン出身のデミアン・ルグナが監督・脚本を努めたホラー映画。
よく分からないけど、協会が終わって神がいなくなった世界が舞台。神がいないので人間は悪魔に簡単に取り憑かれてガチやべーって映画。
とにかくビジュアルが強烈で、汚かったり臭そうだったりって描写をつきつめて恐怖を描こうとしてる。グロテスクなシーンも多々あるけれど、とにかく汚いほうが強い。ので、かなり人は選ぶかも。
この映画は、最初から陰鬱(←神がいないからね)としているのに異様にテンションが高く、事態がどんどんエスカレートしていくときの、「えっ、もうそんなやばいの?」という飛躍が凄まじく大きくて楽しい。冒頭でつげられる協会終了という事実に「???」と思ってたら、よく分からないうちにあっという間に取り返しのつかないことが次から次へと起こり、世界が終わってく。「ストーリーとかよく分かんないけどテンポとか凄くて良かった後で考察見よ」系エンタメが最近話題を呼びがちだけれど(ジークアクスとか)、この作品はそういう類の中で個人的にかなり面白かった。ペットの犬が6歳くらいの女の子を急に噛み殺すとか、急に?怖。面白いなあ。
45位
父を怒らせたい
おかくーこ
漫画です!
ビックコミックオリジナルで連載していた、大嫌いだった粗暴な父親が癌で死んで嬉し…くないこともないわけでもなくって漫画。
いつも怒って怒鳴り散らかしていたクソ父親が、癌になって人が変わっちゃってもう死ぬんでヨロってなった。それってなんかそれずるくないっすか?というやり場のない不満を抱えている主人公の女性が、父親を怒らせようとするタイトル通りの漫画、では一応ある。
主人公の立場が絶妙で、姉はさっさと家を出て社会人として頑張ってるけど、自分は実家を出るモチベーションも無ければ何か目的がある訳でもなくフリーターで、別に母親との仲は悪くないから、ぬぼーっとしている感じ。そもそも娘視点で父との関係を描くってのが、親と子の物語ではおそらく最もマイナーなケースだとは思うが、その中でも極端に対立している訳でもない人間関係に確かにあるわだかまりを描いているのが非常に現代的で好ましい。
いわゆる毒親問題に対して、とはいえ急に親は死んだりするよねと当たり前なことを言ってはいるが、当たり前すぎてあまり描かれてこなかった部分。散々私に怒鳴って否定しておいて、さっさと死ぬなんて残される方の身にもなれと、衰弱した父親に言うのも馬鹿らしいからイタズラして怒らせたろと、気持ちの整理がつかない感じが、丁度いいコミカルさのある絵柄で描かれていて、人情もの〜って感じ。
物語が終盤に差し掛かって、父親にだって色々な過去があり、当然子を持つ葛藤とかがあったんだよ〜という部分へ、主人公が自ら歩み寄って理解を試みようとする展開は、ちょっとスイートな感じがしちゃって人情ものすぎるだろという印象があった。子にとって親から自由になる手段として、親のバックグラウンドを深く知り向き合うことが重要だという説得力が、普遍的な価値観から借りてきているだけに感じられてしまった。
けれど、物語の閉じ方が、抑圧のなくなった世界いぇーいって捉え方もできるように描かれていて、複雑な味わいがあった。
44位
12月21日放送 M-1グランプリ2025 決勝戦
テレビ番組です!
テレビ朝日で放送された、言わずと知れた漫才コンクールの決勝戦。
2023年、2024年と「令和ロマン」というコンビが連覇を達成し盛り上がりきったM-1グランプリは、新しい展開を模索しており、まあ色々そういう試みは感じたが、結果的にあんまりそういったこととは関係なく新しい展開を見せた内容になっていた。
お笑いの世界では「ニン(人)」という言葉がいつしか使われ始めていて、M-1グランプリにおいてはその言葉は、優勝をする物語をどれだけもっているかという意味が大きくなる。「マヂカルラブリー」なら審査員をしていた上沼恵美子との因縁てきな物語、「錦鯉」なら過去最年長コンビでの優勝、とかね。そういう物語があるなってなってくると、M-1の優勝を狙う芸人たちのなかには、自らにそういった物語があるかのように演出しだす人も出てくる。
しかし2025年の決勝戦では、これは結果的にそうなっただけなのだが、「ニン(人)」と呼ばれるような物語の薄い「たくろう」というコンビが、単に一番面白くて優勝した。しかもかなりシンプルな構成の漫才で。
けれど「たくろう」は、これまでM-1グランプリで優勝したコンビの多くがたどったテレビ的なスターになるようなイメージを現時点ではもてない。彼らの個性がテレビ番組にハマればいいのだが、そうならないかもしれない。これはM-1グランプリが業界での影響力を維持するという点で、あまり望んでいなかった結果なのかもと邪推もするが、個人的にはスターを生むような番組ではなく、単に面白い人たちが優勝する番組になっていってもいい気もする。このコンクールがあまりに重荷となって解散してしまった「和牛」というコンビがいることを考えると、なおさら。
43位
私たちが光と想うすべて
映画です!
2024年に第77回カンヌ国際映画祭でグランプリ(一番すごい賞の次に凄い賞)を受賞したインド映画。といっても、フランス・オランダ・ルクセンブルク・イタリアが製作に関わっている。関わりすぎだろ。監督はパヤル・カパーリヤーという女性の監督。
私みたいなニワカ映画ファンだと、インド映画がカンヌ?!どんな映画?!?って感じになるんだけど、観てみるとカンヌでグランプリとるような映画だった。当たり前なんだけど。
カンヌで凄い賞とる映画は、なんというか文学的だったり芸術的だったり社会問題とかを描いていたり、真面目か!!!ってやつで、いやインドの映画だってそりゃそういうのあるよな、へへ、すんませんって思ったりもしたが、調べてみるとかなりがっつりヨーロッパ側の製作が入っていて、フランスの映画製作会社が中心にあるみたい。なので、つまり、この映画がカンヌの賞をとりそうな映画に見えるのは、そういうことなのでは。だから良くないってことでもないんだけど。
日本よりも何倍も長い雨季があるインドのムンバイを舞台にして、湿った街で毎日労働に励む女性を主人公にしたドラマが描かれるのだが、湿度を多分に感じる映像がポエティックで(カンヌ的な意味で)映画的。主人公の女性は、夫が海外出張に行ったっきり何年も連絡がない状態で、そんななか急に海外製の炊飯器だけが夫から送られてきて、うーん・・・状態。眠れぬ真夜中にベッドから抜け出して暗がりでその炊飯器を抱きしめるシーンがあり、シュールなんだけど悲しくていい場面。そしてカンヌ感がすごい。
カンヌ感すごすぎてちょっと退屈してくるのだが、終盤はそこから少し逸脱してくれる。インドという国がもつ文化や宗教の要素が、それまであまり目立たなかったのに全面化しだすためで、これがなかなかに新鮮だった。
これはかなり主観なのだが、タイトルが素晴らしいと思う。原題は『All We Imagine as Light』でわりと訳はそのまんま。
42位
ありす、宇宙までも
売野機子
漫画です!
小学館の「ビッグコミックスピリッツ」で2024年6月から連載している、女の子が宇宙飛行士を目指す『Dr.STONE』みたいなロードマップ漫画。マンガ大賞2025の大賞作品。
昨今の漫画において重要なキーワードとなっている「障害」。そのトレンドに乗らずに乗ったクレバーな漫画。最近の漫画は、なにかと障害を取り上げていたら注目されがち、というと角が立つが、今の社会にはそういった物語を求める欲望は確かにあって、欲望があるんだったらそれに向けて商品を素早くお届けするのが、漫画を作る人たちの凄いところ。
主人公のありすは、親の都合で幼少期から様々な国を転々としていて、その結果それぞれの国の言語の習熟度が低く、中学生となり日本の学校に通うことになったときに言語の壁に悩まされてて大変。周りの人と上手くコミュニケーションがとれなかったり、言葉が拙い彼女を知能が低いとみなすクラスメートの悪気ない態度によって、自分が能力が低い人間だと思いこんでてかわいそうなんだけど、異常に知識豊富な犬星という少年が、お前は馬鹿じゃない!俺が勉強教えたる!!!っていういい話。ほんといい話。
作中に出てくる「セミリンガル」という言葉は、実際に使われる言葉のようだし、実際にそういう状況に置かれている人もいるよなそりゃ、とは思うけれど、先述したとおりこれは明らかに企画として、最近の漫画のトレンドの1つである「障害」を意識したもので、しかし「セミリンガル」自体は一般的に障害と呼ばれるものとは性質の違うもので、ここに少し不気味さを感じる。
ただ、作中でもその差違ははっきり名言されていて、誠実な作品なのは間違いない。本当に感動的で前向きな物語だし、漫画として絵柄含めて軽やかで素晴らしい。まじで褒めるところしか無い。でもやっぱり、この作品が清らかな物語であればあるほど、企画自体の若干の傲慢さを意識せざるを得ない。
ただちょっと不思議なのが、コマの枠線がぐにゃぐにゃしてるとこ。
味があるといえば味があるんだけど、もっと何か企んでる気配がある。世界とありすの関係が不安定なことの表現なんだろうけど、どこかのタイミングでまっすぐになるのかな。
41位
mofusand
ぢゅの
猫の絵です!
なんか気づいたら世の中『ちいかわ』だらけになってるけれど、何気に『mofusand』だらけにもなっていた2025年。
イラストレーターのぢゅのによる、なんて言えばいいんだろ、キャラクターIPって言えばいいのかな。猫のイラストを中心としたコンテンツ群。それが『mofusand』です。
画像とか見れば、あーこれね!ってなる人は多いと思う。
基本的にデフォルメされたかわいー猫のイラストでしかなく、そのデフォルメ具合も凄い中途半端で、擬人化って言えるほどでもない動物感あふれる印象なのだが、二本の足で立っていても不自然じゃない具合。絶妙なバランスと言えばそうなのだが、印象としてはぱっとしないし、インパクトもない。こんな表現をすると失礼だが、猫のフリー素材イラストを検索したらゴロゴロ出てきそうな作風ではある。
『ちいかわ』と並べるとなんだか捉えどころのないIPだが、だからこそグッズ企画の自由度が高く、グッズ展開の幅が凄まじい。というか、あの猫がいれば良いので、基本的に何でもあり。猫だし。
自由度の高さは企業とのコラボレーションでも感じるところで、というか単に猫だから企業側も慎重になる要素がそこまで無いのだと思うが、2025年は花店の日比谷花壇や便秘薬のコーラック、神戸風月堂、菓子のハッピーターンなど様々な企業とのコラボしていたけれど、この幅広さは『ちいかわ』は無理よね。スーパーの店員としてはヨーグルトのビヒダスとのコラボが印象的だった。
あと最近アニメも始まった。
猫をそのままIPにするという、離れ業でもあり禁じ手でもあるこの偉業を成し遂げた真面目な大人たち、凄い。
40位
爆弾
映画です!
先述した『災』もそうなのだけれど、主演が企画にハマり過ぎていると勝ちが確定するような映画ってあるじゃないですか。本作の予告編で佐藤二朗が爆笑してるのを観て、うわあ勝ち確じゃんと思っていたのですが、結構本当にちゃんと勝っていた映画。
2022年に出版された呉勝浩による同名ミステリー小説の映画化である本作には、「スズキタゴサク」と名乗るまじで不気味な身元不明の爆弾魔が登場するんだけれど、それを佐藤二郎が演じている。
佐藤二郎といえば、悪名高い福田雄一監督作に多数出演していることでも有名で、このコンビは映画ファンからは結構煙たがられていたりする。佐藤二郎の過剰なコメディリリーフとしての演技と、福田雄一による時代遅れの演出が、本当に面白くないと大評判。
本作はそんな佐藤二郎のイメージを逆手に取った、過剰なコメディ演技をする不気味な男が本当に人を殺しまくってるのが怖くて面白い映画。映画の魅力の殆どが佐藤二郎の怪演にあると言える。『ダークナイト』に登場するヴィラン、ジョーカーを日本風にローカライズしたみたいで、いなたくて良い。てかローカライズできたのが凄いけど。
この映画に対して、佐藤二郎だって凄い演技するんだって声も多数あるんだけれど、福田雄一との仕事があってこそと考えるべきじゃないのかな、常識的に考えて。
78位でギャグ芸人について触れたが、良くないとされているものが、見方を変えると突然良くなることってまあ結構あるじゃん、文化ってさ。佐藤二郎がキモくて怖い映画って面白くない?って企画を思いついて、色んな人を説得した良い奴がいるって考えると、何かいいよね。そういうこと考えたくない?
ちなみに原作はいつのまにか3部作になっているらしく、続編の『法廷占拠 爆弾2』があんま面白くない。でも佐藤二郎なら面白くなるかもしれない。頑張ってほしい。
39位
プルリブス
ドラマです!
『ブレイキング・バッド』や『ベター・コール・ソウル』などを作った凄いやつ、ヴィンス・ギリガンによる新作ドラマ。Apple TVのオリジナル作品。
たぶん各所でこのような表現が沢山使われているだろうけど、『新世紀エヴァンゲリオン』というアニメの中で出てくる「人類補完計画」ってのが完遂された世界で、補完されずに取り残されちゃった女性が主人公のドラマ。
ウイルスとか遺伝子とかがほにゃららして補完されちゃった人たちの意識や感覚は統合されて、幸せそうで、優しくなってて、生き物を殺して食べなかったり、持続可能な社会(それは社会と呼べるものではないんだけど)を目指して色々やってる。ポリコレとかそういうの、何か正しそうなやつ全部やります、みたいな統合された新しい生命体と、どうやって関係を築いていくのかがドラマの肝となっている。ドラマが進むにつれ、この統合された生命体が様々なメタファーとして解釈できるように周到に設計されていることが、だんだんと分かってくる。例えば統合された人間の知識をすべて蓄えているので、専門的な質問に対しては的確に返答できるが、お前はどう思うの?って質問にはごにょごにょ言い始め、まるでLLMのAIみたい。かと思えば、暴言を吐かれただけでショック死しかねない脆弱さがあり、それは現代の我々がもつナイーブさに近いものがある。そうして現れてくるのは、ものすごく普遍的な「人間」ってなんやろか?という問い。主語がでかいとかすぐ言われる昨今に、主語がでかい話を普通にしてていいなと思う。
はっきりSFと言っていいこの設定をつかって、やっぱりSFらしい思考実験を積み重ねるところは、『世界99』と通ずるものがある。でもこっちのが面白いからこっちのが良いと思う!
38位
スキナマリンク
映画です!
奇譚氏にんぎょの項目で触れたホラーの動向とは別軸で、「リミナルスペース」とか「アナログホラー」とか呼ばれる流行があったりする。これらは主に日本の外で流行したネットを中心としたミームなんだけれど、まあ日本国内でもそこそこ流行っていたりもする。これらについて詳しくは説明しないが、そう呼ばれる作品たちの多くは古めかしい質感のイメージを重視する傾向にある。古いハンディカムで撮られたビデオだったり、VHSに録画された映像だったりを思わせる作品が多い。つまりそれらも嘘の記録=フェイクドキュメンタリーといえる。
本作はそういった動きを見せるホラー(の中の一つの潮流の)到達点と言えるが、しかしジャンルとしてはフェイクドキュメンタリーではないからややこしい。フェイクドキュメンタリーと呼ばれる多くの作品がもつ映像の粗さだったりの質に注目し、そこに芸術的な価値を見出し、低予算ながら映像の質感に病的にこだわった実験的な映画になっている。
一言で言えば怖い雰囲気だけの映画。
でもそれだけではない、ということが全然語られていないからここに書く。本作は例えば日本映画から例をあげれば、是枝裕和の『誰も知らない』や緒方貴臣の『子宮に沈める』のような、ネグレクトの被害にあっている子供を描いた映画と捉えることもできる。今タイトルをあげた2作は現実にある社会問題をエンターテイメントにのせて視聴者に投げかけるような作品だが、この『スキナマリンク』にはそういった社会派エンターテイメントといった側面はほとんどなく、ただただ放置された子供たちが日々衰弱していく様を、(先述した文脈を含んだ)ホラー映画的なイメージで描いている。『子宮に沈める』が顕著だが、酷い状況に置かれた子供たちを、それが現実にある問題だからとまざまざと描くだけの作品とは違い、ホラーというジャンルが持つ悪夢のようなイメージを介すことによって、子供たちの無力感や絶望を体験させる映画として本作は価値があると、私は考えている。驚くことに、この映画にはそんな子供たちの姿自体は、映像には殆ど写ってこない。
37位
1月27日 フジテレビ記者会見
記者会見です!
2025年1月27日にフジテレビ本社ビルで行われた10時間23分にも及ぶ異例のフジテレビによる記者会見。
2024年12月の『女性セブン』や『週刊文春』などのスクープから端を発する中居正広の大きすぎるスキャンダル報道、そしてフジテレビ側の要領を得なさすぎる複数回にわたる会見などにより、世論は加熱しまくり、フジテレビへのCMは取り下げられまくり、ついに開かれた本会見。ここではこの騒動についてあれこれ言及するつもりはない。単にこの会見が異常で、故に面白かったという話しか基本的にしないのであしからず。ほんと、何を観ているんだって気持ちになった。
Wikipedia的な情報によると、参加した記者は400人以上、質問数は500以上となっていて、まあ凄い。私は午後4時ごろから開かれたこの会見のほぼ全てを自宅のテレビで流し、なんとなく見たり見なかったりしていた。ちょっと家事をして、一息ついたらまだやってる。晩御飯の支度をしてできたなと思ったらまだやってる。お風呂はいって上がったらまだやってる。いつまでやってんのこれ?何事ですか???という感じだった。フジテレビ的には特に答えられることも大してなく会見を開くことが目的化していたし、よく分からないメディアからも集まった多すぎる記者たちは変な熱気に冒されているし、大人がたくさん、変なことをしていて面白かった。10時間も。
ついでと言ったらあれだけど、関係あるっぽいから『渡邊渚フォトエッセイ 透明を満たす』も読みました。育ちの良い前向きで努力家な素晴らしい人間の人生が、いとも簡単に壊れていく過程が結構ありありと書かれていた第一部はかなり衝撃的だった。こんなふざけた文章で言及するのが申し訳ないくらい、自身に起こった心身の変化が誠実に書かれていた。でもさ、”フォト”ってなんなんだろうって考えちゃうよね。【電子版だけの特典20カット付き】じゃないよ。何を言うてるの。女子アナウンサーって、何なんだろうね。
36位
星つなぎのエリオ
映画です!
ピクサー・アニメーション・スタジオのやつ。SF冒険ものだぞ!
11歳の少年エリオは両親を亡くし叔母に引き取られるんだけど、普通にもう人生いやになってて宇宙人と交信してこんな世界から連れ出してーて毎日やってたら本当に連れてってもらえちゃう本当に悲しい話。悲しすぎるだろばか。
ピクサーらしいと言っていいと思うけど、エリオが宇宙人と更新するきっかけとなるのが、1977年に打ち上げられたボイジャー探査機の展示にあるゴールデンレコードの存在で、実に啓蒙的。いいよね、ゴールデンレコードって。
「孤独と宇宙」というテーマは、古くから繰り返しえがかれているものだとは思うが、宇宙に別の世界や別の可能性を見出す想像力というのは、男性的なものとして描かれているものが多い。うかつなことは言えないけれど、SFというジャンルが何かそうさせている気配はある。アルフォンソ・キュアロンの『ゼロ・グラビティ』などの例外ももちろんあるけれども。
本作の中で、エリオが出会いそして友達となる宇宙人も性別上おそらく男で、しかもその種族がアホほどマッチョで攻撃的な種族だったりするから、本来ならもっとその点が掘り下げられていたのではと考えてしまう。というのも、この映画は監督の交代があり、『リメンバー・ミー』(2017)のエイドリアン・モリーナがもともとは監督をする予定だった。これは映画ゴシップ的な話にはなるが、初期のテスト上映でクィア的なメッセージが不評だったことが原因となり監督が降りてしまったらしい。エリオはトランスジェンダーという設定だったようなのだ。もしそのままのコンセプトで映画が作られていたら、どこか男性的な「宇宙と孤独」というテーマに新しい視点が持ち込まれていたかも知れないと思うと、なんだかやるせない。
だからといって本作が何か劣っているかと言われると全くそういうわけでもない。正直私は泣きっぱなしだった。宇宙とか孤独とかについて暇さえあれば考えてる男だからかもしれないけれど。
35位
イタリアンブレインロット
インターネットミームです!
「トララレロ・トラララ」や「トゥントゥントゥンサフール」や「カプチーノ・アサシーノ」といった、いわゆる口が気持ちよくなる音の羅列を、キャラクターの名前として無理やり固有名詞にし、キャラクターとして強度を持たせるためにAI画像生成でそれっぽい画像を作り、無限にそれを生み出していって遊ぶインターネットミーム。イタリア語っぽいものがあるだけでイタリアは関係ない。「ブレインロット」は「脳が腐る」という意味らしい。もうね、すべてがナンセンス。
明確な起源もよく分かっていないのに、2025年爆発的に流行し、各国でこれにまつわる動画が大量につくられた。
日本だと次の動画が1000万回以上も視聴されている。小中学生に人気も高いようで・・・。
2014年にこのようなTweet(当時はまだTweet)があったのを覚えてる人もいると思う。
今更言われなくたってなんかそういう言葉ってあるよなあと、沢山の人が思ってるトピックではある。インターネットの大喜利の世界では定番なネタでもある。結構しょうもない。
そんななか幸か不幸か、画像生成AIを使えばそういう言葉を大量に作れるんじゃね?とこの世界の誰かが思いついてしまった。思いついちゃったなら、仕方ないよね。もう、それ以前には戻れないもんね。
私はベタだけれど、サメの見た目の「トララレロ・トラララ」が好き。サメが、好きだからさ・・・。
34位
スーパーマン
映画です!
MCUを卒業したジェームズ・ガンが、DCコミックを原作としたDCユニバースをリブート。ユニバースをリブート???その一作目となる映画。
MCUのだめだめっぷりに加え、昨今の緊迫した世界情勢も相まって、今スーパーヒーロー映画とかほんまに作れるのかという不安しか無かった本作でしたが、作れてた!と思う。
スーパーヒーロー of スーパーヒーローでしかない勝手に世界を救おうとしてる変なやつは、アメリカを象徴する存在なのは言わずもがな。けれども本作でのスーパーマンことクラーク・ケントはびっくりするくらい等身大の青年として描かれる。青い正義感に突き動かされたり、それって身勝手じゃん何してんのと他人から言われて逆ギレしたりする。世論からの悪評が増えてちょっとしんどくなったときなんか、ヒーロー仲間とともに街を襲うモンスターと戦ってる途中で勝手に離脱して(けんか中の)ガールフレンドの家行ったり、そんでもって弱音をはいたりもしちゃう。かわいい。このシーンは本当に素晴らしくて、窓の向こうには討伐すべき七色に光るモンスターが漂っていて、その光が二人をロマンチックに照らしていて印象的。そこでの二人のやり取りはただただプライベートな会話でしかなく、だからこそ感動的。アメリカくんも悩んでるんだなって意味でも。
そんなヒーロー像を最後まで貫く展開には賛否があるようだが、別に偉大なアメリカを取り戻さんでもええやろ、それとは関係なく良い国なんだから、と別の道を模索する物語を、スーパーマンでやっていることには大きな意義があると思う。
そして同時に、ヴィランの描き方も画期的だった。負けて本当に悔しそうに泣いてた。ヴィランが。ニコラス・ホルトっていい俳優だよね。
33位
えぶりでいホスト
アニメです!
こどうにもによる4コマギャグ漫画をテレビアニメ化。監督はラレコ。『やわらか戦車』の人!!!!!
個性豊かな、というか変人ばっかりなホストが次から次へと出てくる3分程度のギャグアニメ。もはや何を指しているのか分かりにくくなっている「Flashアニメ」と呼ばれるタイプのアニメーション。フルアニメーションともリミテッドアニメーションとも違う、コンピューター上で演算可能な曲線(ベクター線とか言ったりする)を用いて作成されるアニメのことを「Flashアニメ」と(未だに)呼んだりする。今は無きAdobe Flashについては、HTML5的な話とかがあるのだけれど、Zennの記事とか持ってきましたから読んで。jpegとかpngとかピクセル一つ一つに色の情報がありそれが集まって描画されるイメージとは異なり、二次関数とかのグラフが曲がっているように、パソコンの凄い複雑な数式で描かれるぐにゃぐにゃ線を、パソコンの凄い複雑な計算によって動かすことで、一枚一枚絵を書かなくてもアニメが作れて嬉しいってやつ。基本的には「Adobe Animate」というソフトを使って制作されている。
この手法は比較的コストがかからないため、2000年代後半になって個人制作のそういったアニメが沢山現れて注目された。そういったスタイルの作品が今になって色々作られてたりする。それは可処分時間を奪い合うマーケットのなかで、3分くらいのアニメなら人は見るだろうという、それはそうなんだけれど…って感じで増えてる企画と相性がいいからで、本作もそういうやつであり、そういった意味で古くて新しいアニメ。
でこれが、本当に下らなくて面白いのだが、監督であるラレコの表現力の高まり具合も見もので、ベクター線を使ったアニメーションは基本的に人物を描くには向かないのだけれど、ほんとうに、上手〜って感じ。マニアックな話になるが、手書きアニメーションでは出せないかわいさがある。これはほんとに、作画マニア的なフェティッシュな話なんだけれども。
アメリカなどでは主にカートゥーンなどで、先述した手法が結構使われてはいる一方で、日本では手書きしかないっしょ!!!!という伝統とかがあったのか知らないけど、あまり浸透しなかったこの手のアニメが、こういう形でキャラクターもののIPと結びつくことは個人的には喜ばしいことではある。なんと言ってもこのアニメは、3分アニメなのにキャラクターソングが充実しすぎてる。企画の幅、出てきてるよね。
一瞬ね、湯浅政明がなんかやってて、それはそれで試みとしては面白かったんだけどね、ベクターのアニメ。
32位
だにまる
漫画家です!
おもにエロ漫画を書いている人。エロの話です!noteのばーか!
これは昨年の自分のベストハンドレッドで言及した内容(13位でいだ天ふにすけの『催眠!! 元カノ無知無知大作戦』について色々書いてる。てか、なんつータイトルだ。おもれー)と被ってはいて、同じような話をするのも恥ずかしいのですが、エロい話はしたい。そういう人間が書いてる。今更気づいてももう遅い!
この作家の主戦場といいますか、基本的には男性向けのエロ漫画を描いている人ではあるんだけれど、2025年5月に『京也は夢で私を犯す』をDLsiteがるまに(女性向けのえっちなやつ屋さん)で発表し、すげー売れてたりしてる。
というか、もはやDLsiteでは女性向けの販売ページでも作品によっては、男性向けとして発表されたエロ漫画が販売されていたりしている。これは推測にはなるが、男性向け/女性向けで読者を限定するより、そういうの関係なく喜ばれるやつを描いたり売ったりすればみんな嬉しいし儲かるしHAPPYじゃん?みたいな変化がプラットフォームにも出版側にもあるんだと思う。そういう作品は年々増えてきている。だにまるという作家も、comicアンスリウム(男性向けのエロ漫画雑誌)で掲載していたものをまとめた単行本がDLsiteがるまにで販売されている。
そんな雰囲気があるなか、現状、絵柄や展開含めて最適解を出しているのがこの作家な気がする。同年9月には『一晩泊めてよ、オタクくん』っていうタイトル通りギャルのやつをDLsite R18(男性向けのえっちなやつ屋さん)で発表し、こっちも結構売れてる。すげー。
で、もちろん上記2作品を私はどっちも読んでいるんだけれど、どっちもね、そこまで変わらない。男性の顔がしっかり描かれていて、しかも美形ってのは、男性向け漫画では好みが分かれるところではあるんだけど、そういう美形な男性が気持ちよくてトロっとした表情とかを、どっちでもしている。なんならそれが良い。えー!!!気持ち良さそう!!!ってなる。そして女性もトロっとした表情をしていて、えー!!!気持ち良さそう!!!ってなる。アホみたいなこと言ってるけど、私はそう思ったんだから!いいでしょ!
『京也は〜』は女性の心情などを丁寧に描いているが、そういう描写は男性向けのエロ漫画でも本当に沢山あるので、特筆すべき点では無いように思える。エロいことが始まるまでの導入の長さには違いはあるけど、それもこの2作に限って言えば2、3ページぐらいの差しか無い。女性向けに描かれた方が若干導入が長いだけ。あとどっちの話も最終的には合意ラブラブセックス。それは、まあそうかって思うけど、でもこうなると気になってくる。DLsiteの人に販売本数の男女の内訳とか伺いたくなる。もしかして、なんかすっごい意外なものがさ、意外な形でウケてたりしそう。
ちなみにすぎる話なのだけれど、これも男性向け女性向け問わず、漫画作品のページ数インフレが凄まじい。50ページ超えるのはあたりまえみたいな過剰にサービスしていかなきゃ負けるって世界になっている。これはまじで恐ろしい話ではあるが、一方で音声作品は絶好調。『一晩泊めてよ、オタクくん』では、漫画内の女性キャラのセリフをなぞったボイスドラマが同時に販売されているし、抱き合わせ商法とかし始めたりしている。どちらが作るのにコストがかかるかは見方によって色々変わると思うが、少なくとも音声作品のほうがクイックに作れてしまうため、市場としてバランスが悪くなってる気はする。それが直ちに何か影響として出てくるとは思わないが、いくらユーザーが拒否しようが画像生成AIを使わないとやってられんだろって状況にクリエイターは追い詰められていそうではある。が、AI嫌悪はクリエイター側にもあったりするから、すごい苦しそうだなと思う。漫画はなんか、AIに対して結構厳し目な声がSNSで目立ってしまうから。
だにまるのホームページ↓
https://www.danimarustudio.com/
31位
Worldwide Skippa
ラッパーです!
名古屋出身の23歳のラッパー。
2025年に『Skipping Tape』シリーズを4枚リリース。凄い速さで発表されていた楽曲のリリックには固有名詞が溢れていて、最近のネットミームや時事ネタからなんだか懐かしいCMのコピーまで、もったいないから韻ふんどこってノリで出てくるそれらは、それ自体にそこまで大した意味はなく、その上に素朴な主張がゴロっと乗っているところが魅力。
ヒップホップの世界では、自分のことを自分の言葉で語ることが重視されるが、「自分のことを自分の言葉で語ってる」ように演出するかが結局のところ重要で、私小説的な部分がある。それが大麻吸いますって見た目で大麻吸うことだったりすると、悪くて格好いいことになったりする。これが冗談でも何でもないから凄い。説得力をもたせる演出には、まあいろんなスタイルがある。そこが技の見せ所ってわけ。
まあそんなにヒップホップに愛があるわけでもない私なんかは、お金を稼いだことだったり幼少期にひどい目にあっていたことだったり、そういうこと言われてもあんまピンとこない。Worldwide Skippaはラッパーにありがちなシリアスな物語を無闇に背負う訳でもなく、「シャトレーゼやめた」とか言い始める。ずっとバイトしてたけどラップで稼げるようになったからやめたらしい。かわいいね。かと思えば「GOでタクシーを使ったら快適ですごい」みたいなことも言ってる。へんなの。
とりわけ日本でヒップホップをするとなると、みんながみんなヤバい過去を持っているわけではないので、本質的に何も言わないで煙に巻き続けるか、素朴な自身をいかにして面白く語るか、この2パターンの間のグラデーションに結局なっていってるように見える。それだったら素朴な自身を面白く語ってるほうが、面白いなと思う。
でもちょっと、ラッパーゴシップが多くて分からんネタが多い。まあ、彼の場合そういうのにも大した意味がないんだろうけど。
30位
アドレセンス
ドラマです!
イギリスの映画監督フィリップ・バランティーニによるNetflixオリジナルドラマ。
13歳の少年が同じ学校に通う女子生徒を殺害したとして自宅で逮捕されるところからはじまるセンセーショナルなこのドラマは、監督の前作『ボイリング・ポイント/沸騰』(2022)がそうであったように、各話が全編長回しの手法をとっている。
13歳の少年が本当に人を殺めたのか、その謎を中心に進んでいくドラマの中では、「インセル」「ミソジニー」など近年よく耳にする言葉や、保護者や教師たちが管理しようのない悪意のあるSNS上でのコミュニケーションなどが子供たちを取り囲んでいたことが明らかになってくる。そうやって社会問題を描く姿勢を見せたと思ったら、それらをすべて放り投げ、「子育てのままならなさ」を語り始める第4話は、はっきり言って長回しである必要もなくなってきてはいるのだが、胸に迫るものがある。今この時代に子を持つ親たちの不安や苦悩に、厚かましくない距離感で寄り添った真摯なドラマになっている。私には子供はいないけれど、今の親大変すぎやろとポテチを食べながら思ったりした。
29位
永野芽郁と田中圭のツーショット写真
流出した写真です!
2025年3月末にTBSで放送された「オールスター感謝祭」で、お笑い芸人兼YouTuberの江頭2:50が執拗に永野芽郁の、名前を叫んだり?追いかけたり?したとかで、炎上していたと思ったのもつかの間、それから約一ヶ月後に『週刊文春』が永野芽郁と田中圭との関係を報じた。そのときに公表された、永野芽郁と田中圭の何枚かのツーショット写真。ハロウィンの日に二人で撮った写真だと思しきそれらが、もう本当に、二人が楽しそうで、良い。
不倫だとかどうでもいい。芸能人のプライバシー問題とかは、深刻な問題だと思う。でもさ、この写真が良いんだよ。こんな楽しそう笑ってる二人の関係がさ、そんな邪なものだなんてさ、いや、仮に世間的に非難されるような関係だったとしてもさ、この写真の二人は本当に幸せそうで、良い。まじで。キュンキュンしちゃうよ。別にこの二人の人間性とかどうでもいい。写真がいい。
てかさ、その更に数ヶ月後に田中圭はポーカー大会に出場して好成績を収めて賞金1700万円も獲得してるんでしょ?おもしろいよね。
28位
プレデター:バッドランド
映画です!
1987年から続く『プレデター』シリーズの最新作。20世紀FOXがディズニーに吸収され、IPがにディズニーのものになってから2作目の映画。もともとは『エイリアン』のような地球外生命体が人間を襲う系のパニックホラーだったが、なんか人間を襲うそいつらが格好いいからって掘り下げられて、いまでもそこそこ人気なIPに何か知らんけどなってる。あと、いつのまにか『エイリアン』シリーズと世界設定が共通されていたりする。VSとかって戦ってたから。何でもありよね。
本作はその地球外生命体であるプレデターという異星人の一人が主人公で、マッチョだけど打たれ弱く青臭い脳筋野郎という人間臭すぎる彼が、下半身が損壊した女性型アンドロイドと出会いうことによって自身の弱さと向き合ったりしながら、危険が危ないだらけの未知の惑星で大冒険を繰り広げるSFファンタジー映画となってる。そ、そんなだったっけ・・・、と思わなくもないがこれが面白い。
この映画はもはや児童書といってもいいくらいシンプルで分かりやすいどこか教訓めいた物語になっているのだが、これはDEI的なポリシーによってディズニーが自由に創作できなくなった弊害でしかないのだが、そこにプレデターとアンドロイドという「人間じゃないやつの話」という言い訳を重ねて、無邪気で悪趣味な楽しい映画をしれっと作ることに成功している。ディズニーやハリウッドだけに問題があるわけでもなく、私達観客も超かわいいエル・ファニングが女性型アンドロイドを演じているだけでちょっと居心地が悪くなるくらいには価値観が変わっているはずで、クリエイター達はそこと戦っていたりもする。下品で無邪気な映画を安全に見たい欲望に応えつつ(全人類がかわいくてかっこいい女性型アンドロイドが見たいに決まっている!!!!)、社内からも社外からもポリコレ的ツッコミがされにくい企画として、この映画は作られている。そしてそれは成功していると言っていい。ずいぶん極端なことをしているとは思うが。
27位
銀河特急 ミルキー☆サブウェイ
アニメです!
2022年に話題となった自主制作3DCGアニメ『ミルキー☆ハイウェイ』の続編。前作を一人で手掛けた亀山陽平は、本作でも制作のほとんど一人で行ったというから驚き。
1話3分程度の全12話からなる本作。宇宙人だったりサイボーグだったりの登場人物たちが、いまどきのアニメっぽいかわいいデザインで、しかもギャルだったりする。新しい風を感じるヴィジュアルイメージとは裏腹に、やっていることが2000年代後半に流行したFROGMAN の『秘密結社鷹の爪』(2006)や森りょういちの『Peeping Life』(2008)、内山勇士の『紙兎ロペ』(2009)のような、オフビートな会話のやり取りをベースとしたコメディで(そしてその多くはFlashアニメだった)、今それやる人いるんだっていう驚きがある。当時のことを考えると、いわゆる美少女アニメのような「オタク」的記号を用いたキャラクターではやれなかったスタイルだが、今作は「オタク」的記号がふんだんに盛り込まれたキャラクターたちがそれをしている。まじ、時代変わった。サブカルとかオタクとか言ってる人もうぐっない。とてもいいことだと思います。
その上であえていうと、今作はいわゆる「サブカル」っぽいマニアックな固有名詞にこだわり過ぎるような自意識も見受けられない。主題歌にキャンディーズの『銀河系まで飛んで行け!』が採用されていて一瞬身構えるが、作品の全体的なバランスを全く損なわないどころか、この曲の新しい解釈を可能にし、作品自体に完璧に組み込まれていたりする。もはやこのかわいいアニメの曲になっている。凄い。
ちょっとした間、タイトなテンポ感なども整っており、キャラの立て方もうまい。ひとりよがりな部分が全く無い訳ではないのだが、気にならない程度。最終話の盛り上がり方も見事で、全くスカしたりしない。やっぱりスカしたらあかん(粗品)。短いアニメではあるが、堂々としたエンターテイメント作品になっていた。かっこいいね!
26位
Friend
james K
音楽です!
ニューヨーク生まれニューヨーク育ちの女性ミュージシャンによるアルバム。なのにジャケになんか漫画っぽいキャラが描かれてる。ほーん。
ジャンル的には「トリップ・ホップ」と呼ばれる90年代にイギリスで流行ったもの。ちょっとゆったりしたリズムで、もわーんとしたシンセとかの音が鳴りつつ、くぐもったキックが緊張感をもたらすような暗い印象のジャンルで、まあトリップしてんですわ、これ聴いてる人々は。イギリス曇ってるしさ。このジャンルの代表的なアーティストは、マッシブ・アタック。どっちかがなんか、バンクシーだとか言われてるアレのアレ。
このアルバムは、あえてジャンルで括るなら「トリップ・ホップ」すねぇくらいの感じで、まあ今のアーティストだから色々な要素が融合しているが、「トリップ・ホップ」にもともとあるブラックミュージック要素はかなり薄い。むしろオリエンタルな雰囲気がそこかしこにあり、90年代にそこそこあったエセアジアテクノみたいな感じがある。もわもわしたエセアジアっぽい空気感に、ゆったり女性ボーカルが乗ってると、それはなんか、「サイバーパンク」っぽい印象があったりする。菅野洋子が音楽を担当しているテレビアニメ『攻殻機動隊 S.A.C』のORIGAが歌ってるやつみたいだな?と思ってそのサントラを聴いたのだが、別にそこまで類似しているわけじゃないんだけど、でもアニメのサントラ全体でみると通づるところが結構ある。これは、CyberのCをSeaと読み替えた「シーパンク」、そしてそれを飲み込むかたちで発展した2010年代の文化的ムーブメントである「ヴェイパーウェイブ」では、意外とやられていなかったサウンドで、結構驚かされた。james K自身が直接参照したという発言は特にみつけていないが、でもジャケットデザインとか考えると、何かしら日本的なものに影響されているんじゃないかなあ。まあ、今はそういう音楽で溢れている時代ではあるんだけど。
25位
青野くんに触りたいから死にたい
椎名うみ
漫画です!
2017年から2025年まで月間アフタヌーンで連載していた、シュールホラーラブコメギャグ漫画。主人公の女子高生が、初めての恋人が付き合い初めてすぐ事故死してもぅマヂ無理…リスカしょ…って手首を切ろうとしたら、幽霊になった恋人が止めに出てきてうれしいけどハグでぎゅーっと出来なくて切ねーーーー殺せーーーー!!!という情緒が激しい感じを、どこか冷めたタッチで描き続けたとても独特な作品。
恋人である青野くんはとても優しいので、機転を利かせて枕を使ってこんなことをしてくれる
賢い!これでハグしほうだいだ!
数ページ前まで恋人が死んで自殺を試みてた人間を悲痛に描いていたのに、急にこんなふざけた(当人たちはふざけていない)絵を見せらたりと終始こんな感じで、感情が乱高下だぁと楽しめる。のだけれど、物語が進むにつれ、そのシュールで笑える描写はどんどん減ってきて残念。どんどん重く苦しい話になっていく。
物語が終盤に差し掛かかって明かされる、青野という人間の壮絶な過去にまつわるエピソードが始まってからは、怒涛の勢いで物語が動き出す。ここが圧巻で、まず家庭内での加害と被害の関係が複雑に入り乱れる状況が、引き続きシュールではあるが笑えないある種の冷淡さで描かれ、これが見事に物語として整理されていたりする。その上で、それに対して外部の人間=他者は本質的には何も出来ないけれども、何も出来ない他者との出会いそれ自体は当事者にとってのわずかな救いになる、こともある、ぞ?という僅かな希望を残し、その希望も結局は青野は死んじゃってるからあって無いようなものなんだけれど、何か残った風で物語を閉じていて、すげー。現実にある不幸とここまで向き合ってこの漫画を描ききる作者の執念に気圧される。
だからこそ思うことではあるんだけれど、主人公の優里と青野の関係はその設定上閉じたもので、ここは物語の中で常に揺さぶられる部分ではあるが、結局なんかイノセントな関係に見えてしまうのは否めない。その関係に割って入ってくる藤本というキャラクターが途中から二人の物語に介入できなくなってしまうことが、それを強調させてしまっている。良くない共依存関係が良くない共依存関係を生む、そういう連鎖の物語だとしても、ちょっとロマンチックに見えすぎていないかな。なんてことを思ったりもする。でも、性愛にまつわる会話だったりが結構ちゃんとあったり、主人公たちがえっちなことに前向きだったりするから、難しいところ。
24位
Elden Ring Nightreign
ゲームです!
2022年に発売されたフロム・ソフトウェアによるアクションRPG『Elden Ring』のスピンオフ(って何?)ゲーム。
PvE(Player versus environment)と呼ばれるオンラインゲームの一形態、つまりオンライン上の誰だか知らないプレイヤーと協力して、ゲームが用意した敵(こっちはコンピューター)と戦うやつを、『Elden Ring』の世界を舞台にしたやつ。
本作で初めてディレクターを務めた石崎淳也のセンスなのか、フロム・ソフトウェアらしからぬ俗っぽいパクりの姿勢があり、昨今のゲームで流行している要素を多く取り込んでゲームシステムが刷新されていて、これがまあおもろい。そしてこのゲームも『Blue Prince』同様に「ローグライト」と呼ばれる要素が盛り込まれている。少しだけコントロールできるランダムな要素を上手く使って、強い敵を仲間と倒すオンラインゲーム。俗っぽいとはいったけれど、1回のプレイに40分拘束され、その間トイレとか行ったらダメな感じの強気なルールで、らしいといえばらしいのだけれど。
このゲームのユニークな点は、ソフト買い切りでDLCも1本(2025年12月に発売済み)だけという、昨今のオンラインゲームにしては長期間ユーザーに遊んでもらうことを考えていないところ。というのも、最近のオンラインゲーム事情としては基本無料で長期間運営するタイプのゲームが人気で、そのなかでは定番ゲームみたいなものが殆ど固定されてしまっている。それはオンラインゲームの盛り上がりを左右するのがストリーマーなどの配信者だったりすることも関係してくるのだけれど、正直マジでもう同じゲームの話ばっかりで飽きたわ、と思わなくもない。それらのゲームは運営をものすごーーーーく頑張っていて、ユーザーの関心を常に維持しているので超超超偉いのだが、飽きたわ。という中で、GOTYも受賞したあの名作のスピンオフとして登場した本作は、瞬間的にある程度の盛り上がり方をしてくれて(実際のところ盛り上がらせ上手だったところがある)、見飽きた風景に新鮮な風を吹かせてくれたと思っています。
フロム・ソフトウェアが作る高難易度なゲームというものを、自らオンラインゲームとして再解釈した結果、SNSやYouTubeを中心にコミュニティが積極的に攻略法を共有しあい、プレイヤー全体で攻略していく現象も新鮮だった。長期運営スタイルをとるゲームは、プレイヤーが飽きないようにゲームバランスを変更するアップデートを細かく行い、常に攻略情報が入れ替わっていくのだが、本ゲームは頻繁にアップデートが行われていないのに、ゲームの研究が進むにつれて実はこのキャラが強いだとか、この武器が強いだとかの情報がころころ移り変わっていった。ゲームシステムも無限に要素があるわけじゃないので、ある段階で定石とされる攻略方法は固定されていくのだが、この種のゲームにしては長い期間コミュニティが盛り上がり続け試行錯誤が重ねられていて、楽しかった。
フロム・ソフトウェアの次回作はPvPvE(PvEにプレイヤー同士が戦うシチュエーションが加わったやつ)らしいが、期待しちゃうね。
23位
ブーザーのバイクはタイムマシンでした〜未来へ〜
YouTubeの動画です!
としょ子と名乗るすごい変なYouTuberがいて、この人はゲームを普通にプレイせず、とにかくバグを起こすことにしか関心がない。様々なゲームをバグらせ「あっひゃっひゃっひゃ」と笑っている。こわい。そのなかでも、ゾンビがたくさん出てきて楽しいオープンワールドゲーム『DAYS GONE』を大変気に入っていて、としょ子はかれこれ5年ほど遊んでおり、新しいバグを発見しては動画を作っている。この動画は、としょ子が5年越しに見つけた超画期的だが使い道がない素晴らしいバグに関するもの。
そのバグというのが、ある異常すぎる手続きを経た特殊な状況下で、とあるバイクを異なるセーブデータ間で使い回せるというもの。ストーリー上絶対にバイクが使えないエリアでも、そのエリアに別のセーブデータでバイクを置くと、そのバイクが出現し使えちゃったりする。全然伝わらないと思うけど、つまりセーブデータ間を行き来するタイムマシンみたいなバイクが作れるバグなんです。伝わらないと思うけど。
としょ子は本当に変な人なので、これを使ってゲームのムービーシーンにバグバイク(ダムタイプみたいだ…)を登場させてさらにゲームをバグらせて遊び、「あっひゃっひゃっひゃ」と笑う。それら全てが変で面白いし、同じゲームを5年も遊び続けて無意味だけど物凄いバグを見つけるに至る人間に感動せざるを得ない。タイパとか言われる時代に、走れないバイクに跨ってオープンワールドゲーム内でバグのためにノロノロ移動していたりする人が、明らかに無駄なことに無駄にこだわっている浮世離れした変人が、ついにその世界を壊してしまう、熱い動画なのだ!
ご存じない方もいるかもしれないが、ゲームのバグはそれ自体がコンテンツとなっており、ゲームバグ集動画なんてものがYouTube(やニコニコ動画…)には溢れている。わざわざ特殊な手段でゲームを改造しバグっぽい状況をつくりそのシュールさを楽しむ「チートバグ」と呼ばれるジャンルすら存在する。『RTA in Japan』という、ゲームのタイムアタックプレイを披露するイベント(ここ数年はnoteが作ったイベントスペースを会場にしてるときもある)では、短時間にクリアするために意図的にバグを起こしゲームをクリアする人も多く、走者(タイムアタックプレイをする人のこと)がバグのためにかなり難しい操作を成功させると拍手が起こったりする。
「ゲーム実況」が顕著な例だが、私たちにとってゲームというものが持つ意味は大きく広がってきている、なんてことはここで私が指摘するまでもないことだとは思う。プレイするだけがゲームじゃない。真空ジェシカが『【真空ジェシカ】単独ライブRTA Any%(バグ有り)【解説付き】』という動画を公開したのは2021年だが、このタイトルの書式自体がニコニコ動画でのRTA動画につけられるタイトルのそれ。コンテンツ、プラットフォームなど様々なものが関わって新しい”リアリティ”が生まれてますわよね。今更な話ですが。
22位
Proton
互換レイヤーです!
『Half-Life』シリーズや『Portal』シリーズなど、というか名作ゲーム沢山作ってることで知られるValveという会社は、Steamというゲームプラットフォームの運営でも知られる。というか今はそっちでしか知られてないかも。そんなValveがCodeWeaversと2017、8年頃から開発してきた、無料のOSであるLinuxでWindowsのゲームを動かすための互換レイヤー。それが『Proton』。CodeWeaversは『Wine』というWindows互換レイヤーをもともと開発していたところで、Valveはそこと協力してゲーム特化のものをガガガッと作ったんだって。日本だと「プレイステーション」だったり「ニンテンドースイッチ」だったりでゲームをするのが未だに一般的だけれど、世界的に見ればPCでゲームを遊ぶユーザーも多い。つまりPC(=Windows)で動くゲームがすげー多いってこと。それらのゲームをWindowsを使わずに遊べるようにするぞという野望が、どうやらValveにあるらしい。LinuxOSをベースに独自のSteamOSを作り、それがインストールされている携帯ゲーム機Steam Deckを作ったり、着々と野望を実現させている。最終的にはSteamというプラットフォームを使うユーザーが増えて欲しいんだと思うけど、やってることは中々にアクロバティック。そんでもって『Proton』は、もうほとんどのWindowsゲームを動かせるようになっちゃって、これまで試験的にユーザーに利用させていた『Proton』を、Steamというアプリに標準搭載させたのが2025年だった。Steamはプラットフォームとして、色々文句も言われているけれどね。
一方その頃、私といういち庶民、いちPCユーザーは、Windowsの最新版のOSであるWindows11がまぢクソキモくてイライラしていた。本当にWindows11は酷いOSで、とにかく無駄に重い。いろいろ他にも問題はあるが、とにかく無駄に重いのが本当に良くない。そうこうしてるうちに謎のブルスクが多発するようになったから、思い切ってLinuxに切り替えたら軽くてわろた。うひょー。そんでSteamでWindowsのゲームも遊べるんか!じゃあもうWindowsいらねーじゃん!!!さんきゅーValve!!!らびゅー!!!
とまあ、こういう感じで『Proton』はすごかった。
LinuxはDaVinci Resolveもネイティブで動くし、『Wine』を使えばver1のクリスタもなんか動いた。うれしす。OBSもネイティブだし配信も余裕だ!
とはいえLinux(というかUbuntu)にも色々問題はあったりする(Steamの公式WebサイトからダウンロードしてSteamをインストールすると不具合があったり、どうやらFlatpak経由でインストールしないとSteamが上手く動かなかったり、Flatpak経由でインストールした場合は外部ストレージにゲームをインストールするためにFlatsealを使わないといけないし、初見殺しが多すぎる。しかも2025年の年末に『Clair Obscur: Expedition 33』を遊んでたらPCごとぶっ壊れたりで大変な目にあってる。治すの大変だった。Ubuntuが原因なのかは分からないけど、結果PopOSを使うことになった。ありがとう33)。でもキモいWindows11より全然いいもんね。
とまあパソコンの話ばかりでだからなんやねんって感じだと思うが、ここからもう少しこの話題を掘り下げる。
一般的にPCと呼ばれるコンピューターに使われるCPU(x86-64系)と、スマホだったりタブレットだったりで使われるCPU(Arm系)は、大きく設計が異なるため互換性がない。これは先述したOS間の互換性とも異なる。スマホやタブレットに使われているCPU(というかSoC)は、高性能な割に消費電力が少ないので最強感があるが、互換性がないためWindowsOSが未だにちゃんと動いていなかったりする(製品としてはすでにあるけど)。技術的になかなかの壁があるらしい。そういう意味で、いち早くMacがArm系(Mシリーズのプロセッサ)に移行したのは凄い。
もしさ、スマホとかタブレットでWindowsのゲームとか動くんなら、それは凄い話じゃん?Valveがさ、今やってるみたいなんだよね。
まあこれが実現するには、またしばらく時間がかかるだろうけれどさ、これによって私達が使ってるデバイスに変化が訪れる可能性はある…と思いたい。そうなってほしい。実際、デスクトップPCでのLinuxOSのシェアが伸びていたりするが、Protonの後押しがあってのものだという見方もある。
今はAndroidかiPhoneしかスマホの選択肢はないけれど、Linuxベースのゲーミングスマホが登場したりすると、一部の人間にとっては話が変わってくるだろうし、そもそもPCを買ってスマホを買ってゲーム機を買うような、コンピューターを買ってばっかりの現状はかなり不自然な気もするので、そこに変化が訪れるような未来があれば個人的には嬉しいけれど、どうなんでしょう。
21位
HYPERTEEN.
Яu-a
音楽です!
2024年に発表した『ネオンサイン』や『お前の彼氏寝取ってやったの。』といった楽曲がTikTokで反響を呼んだりした女性シンガーソングライター(?)Яu-a(ルウア)による1stアルバム。お前の彼氏寝取ってやったってなんだよ、と多くの人は思うだろうと思うが、バズ狙いで作ったとインタビューで語っていたりするので、そう思ってほしいんだと思う。思ってばかり。
『今すぐ輪廻』と『WELCOME TO THE INTERNET』の項目でも触れたが、病みカワ、地雷系といった言葉が普及して久しい。基本的にはファッションに対して用いられる用語だが、音楽方面でもそういったイメージを掲げているアーティストは少なくない。といっても主にアイドルだったりで、例を出すと『ZOCX(元ZOC)』だったり、それの元メンバーだったが現メンバーになったりするややこしい状況にある人たちによるユニット『悪魔のキッス』だったり。特に『悪魔のキッス』は女性からの支持が厚く、おそらく香椎カティが格好良すぎるからだと思うが、病みカワだったり地雷系だったりのイメージが軸にある表現が必ずしも男性を喜ばすものばかりではない、というのは今更私が言うことでもないか。
とはいっても、アイドル方面以外で、女性による繊細で内省的な音楽表現というと、なんかギター弾き語ってたりピアノ弾き語ってたりするようなシンガーソングライターばかりが人気で、極端。シンガーソングライターおじさん問題とかね、あるしね。まあ、あとはラップするとかはあるね。
Яu-aはそういった今の国内の音楽事情を考えると、かなり異色。吹っ切れたつもりでいるメンヘラの空元気みたいなものを、4つ打ちガンガンのクラブミュージックで表現している。EDMだったりハウスだったりのテンション高めなトラックの上で、現代的なキーワードを散りばめながらPerfumeみたいなケロケロ加工したボーカルが、ある種の若い女性の痛々しい心情を歌っている。新鮮。
新鮮だし、個人的には、こっちのほうがリアリティがある。先に述べたように、アイドルだったり弾き語りシンガーソングライターだったりは、もうステレオタイプ化しすぎていてそのスタイルを選択していること事自体に、作家の作為を感じてしまう。もちろん、それが悪いという訳ではないが、歌やパフォーマンスで素直にこういう人なんだな、とはならない。アイドルは別にそれでいいけどさ、なんかさあ。
もちろん作家は、ユーザーにどう思われるかをコントロールするものではある。でも、Яu-aのやっていることは珍しいし、この表現である必要があったわけで、そこに特別なものを感じる。
というか「HYPERTEEN」っていい言葉だと思う。色々検索しても、決まった意味を持った言葉として使われていないみたいで、この言葉をこのアルバムのタイトルにしたの偉いと思う。もうティーンではない、幼稚さを引きずっているけど別にそれもそれでいっかーって20代を表しすぎている。
まじでついでになんだけれど、クラブミュージックをベースとした女性ミュージシャンといったら、浜崎あゆみのことを考えざるを得ない。プロジェクトととしてカッチリしたものだし、エイベックスだし、比較するのもちょっと違うからЯu-aとはあまり関係性は感じないのだけれど。でもさ、2020年代に入って急にさY2K的な文脈で浜崎あゆみに注目してたりするよね。私も最近になって浜崎あゆみってなんだったのか気になってたりするんだけれど、とりあえず『appears』の歌詞ってさ、文章すぎて凄くない?
20位
I Love My Computer
Ninajirachi
音楽です!
オーストラリア出身のDJ兼ミュージシャンNinajirachiの1stアルバム。電子音がバリバリいってるエレクトロニカをやりながら、女性であることだったり個人的なことだったりを表現している。そういう意味では先程紹介したЯu-aと近い。が、サウンドのレベルが段違いだし、佇まいがもっと軽やか。
サウンドのレベルが段違いって何も言っていないのと同じなので言い換えると「音が良い」。「音が良い」ってのも音楽通が言いがちな何も言っていない言葉の代表なのだけれど、ようは「あんまり聴いたこと無い音」をデザインできているかどうかってこと。もちろん、未だにこの世でデザインされてない音なんかもはや無いのだけれど、過去の名作で用いられた印象的なサウンドからどういう方向にどれだけズレているか(もしくはズレてないか)だったり、どんな音と組み合わせているかだったり、あとは単に最近こういう音使われてないよね、みたいなことだったりをまとめて「音が良い」と言ってたりする。音楽好きは性格が悪いのでこういうことを説明しない。これは相対的なものなので、超安っぽいおもちゃみたいな音でも、使い方によっては「音が良い」となりうる。意図されてその音がデザインされているかどうかが重要。
本作は冒頭からフレンチ・エレクトロと言われる2000年代に流行ったサウンドを思わせるブリブリいってる激しいシンセで幕を開けるのだが、フレンチ・エレクトロ的サウンドが今ちょうどよく新鮮。日本で言えば、CAPSULEの2010年頃のアルバムとか聴くとブリブリしてたりする。そういうところから始まるアルバムは、様々な曲調があるにはあるがサウンド的にはかなり一貫している。今風の若いミュージシャンはあれもこれも出来ますよってことをアルバム内でアピールしがちなので、サウンドが一貫していると、逆にそこを注目したくなる。
Ninajirachiは『Girl EDM』というEPを2024年に発表しているのだが、GirlでEDMだもん、彼女にとってこの音楽スタイルが非常に重要らしい。EDMが男性的だったり男性のものだったりしたかと言われると悩ましところでもあるが、少なくとも自身のセクシャリティなど込みでの表現であることを前提とする作家は、この辺のジャンルではほとんど見たことがない。IDMの方向ではなんか極端にコンセプチュアルなプロデュースをされてる女性ミュージシャンもいるけど、そういうのじゃなくて、なんか自然に自分こうなんですって感じ。等身大ってやつ。だから『I Love My Computer』というタイトルなんだと思わされるし、タイトルの付け方が73位の『WELCOME TO THE INTERNET』と似ているようで全く違う。等身大なのにシンセがブリブリいっていることが新しいわけです。逆に言えば、いままでそういうことが出来ない時代が続いてたんだなと気付かされるわけ。もしかしたらそれは、このジャンルの中心であるイギリスやフランスからちょっと離れたオーストラリアで、そういう文化を享受し育ったからなのかも、とか考えたりする。
ちなみにNinafirachiというアーティストネームはポケモンの「ジラーチ」から来てるらしい。かわいい。日本カルチャー大好きなんだって。ってかCAPSULEとかも幼少期聴いてたらしい。しかもさ、先述した『Girl EDM』のアートワークに日本のイラストレーターの「情緒」を起用してたりもする。情緒、いいよね。わかる。情緒大好き。
で、更にダメ押しなんだけれど、彼女のDJセットの動画が良い。
かわいい。私はこれになりたい。今すぐ。気持ち悪いこと言ってるのは知ってる。ってかなんだよこの部屋。OTAKU ROOM????オタクなめんな!!!!
19位
V/H/S ビヨンド
映画です!
ホラーマニアにとって、日本に住んでいるということはアメリカのホラー専門の動画ストリーミングサービス「SHUDDER」を利用できないという点で、本当に嘆かわしいことだったりする。正確にはVPNを使い、支払い方法もなんかごにょごにょすれば利用できるのだが、そもそも字幕とかないし。
SHUDDERはオリジナル作品も制作しており、『邪悪なるもの』もSHUDDER制作だったりする。『V/H/S』シリーズは3作でシリーズが止まっていたのだが、SHUDDERがリブート、『V/H/S ビヨンド』が7作目にあたる。作られすぎだろ。
日本に住むホラーマニアにとって、そんなSHUDDER作品が劇場で公開するとなると、笹食ってる場合じゃねぇとなるのだが、本作は本当に小規模だが劇場公開され、ホラーマニアが駆けつけたのだった。
といっても、本作は本当にまじで下らないホラーオムニバスシリーズで、エログロなんでもありの過激なパーティバーレル。個人的な感覚として、こういうオムニバス作品では1作品でも面白いのがあったら大当たりなのだが、今作は5本中4本が面白かった。すげー。
例えば、スカイダイビングのため飛行しているチャーター機がUFOとぶつかって超高度で大破、落下、そこから宇宙人とすったもんだを、GoPro視点でワンカットで描くとか、そういう無邪気なやつです。でもこれが面白かったんだなあ。
特に最後のエピソードなんかはNetflixのブラックミラーかな?って思うくらい良くできた切ないSFなんだけど、マニアしかみないよね、こんなの。みれば?いや見れないのか・・・。
18位
ファイナル・デッドブラッド
映画です!
2000年に一作目(ファイナルデスティネーション)が公開されてから続いているアメリカの人気ホラー映画シリーズの、とはいえ14年ぶりとなった最新作であり6作目の本作。主人公の予知夢によって、これ絶対死んでたなという大事故から免れた人たちが、「死の運命」からは逃れられないですよーって感じで、死神が辻褄を合わせるかのように不自然で冗談みたいな事故死(これが笑える)をとげていってヤバいので主人公はどうにかしようと「死の法則」を探したりするんだけどやっぱ無理で死ぬ、ということをずっと繰り返しているシリーズ。スラッシャー映画であるにもかかわらず殺人鬼が出てこない変なシリーズで、ハリウッド映画において殺人鬼はなんか宗教的なモチーフの上で設計されている事も多かった中で、それを取り除いた結果メメント・モリ的な人生における「死」を想わせる要素が強調されたからだと思うけれど、文化圏が違う日本でもファンが多かったりする。劇場公開は小規模だったのですが、私が鑑賞した回はまさに老若男女って感じの幅広い客層でした。劇中の不自然な事故死が、Eテレの番組『ピタゴラスイッチ』のピタゴラ装置みたいなので、「ヒトコロスイッチ」と日本のファンの間では親しまれているとかいないとか。ちなみに『ピタゴラスイッチ』は2002年から放送が始まっているので、お前の方が遅い!
MCUのスパイダーマン(ノーウェイホームまでの3作)を監督していたジョン・ワッツが、MCUから解放され、すぐに始めたことがこの映画のプロデュースで、絶対こいつのせいなんだと思うんだけど、なんか想像してたよりも何倍もいい映画でビッくらポンでした。
先述したように、このシリーズは登場人物を変えて同じことを繰り返しているので、新作が作られようと、ファンは今までと同じような内容であることをむしろ期待したりするのですが、本作は同じっちゃ同じなんだけど新しい事もしていて、無駄にテーマが掘り下げられていたりする部分があり、どうやらジョン・ワッツが色々口出してたからっぽいんだよねそれが。偉。
じゃあどんな部分が新しいのかというと、原題にもあるBllodlines=血統という要素が、「死の運命」に組み込まれており、死ぬはずだった親から生まれた子も辻褄合わせの死に巻き込まれてしまうという話になっちゃったとこ。家族みんなで死の運命に抗おうと頑張る訳です。死ぬけど。
今ハリウッドでは明らかに文化的なバックラッシュが起こっていて、リベラルっぽい価値観をエンタメで消費することに客が凄い飽きているようで、血の繋がりだとか家族だとかはそういった流れの中で重要なテーマの一つになっており、だからこそ本作でもそういうものが持ち込まれ家族愛などが描かれいるんだと思うけれど、そもそも親ガチャ失敗すぎるだろという不謹慎な設定が前提にあるところが絶妙。さらには兄弟の中で1人だけ親が違うとかで血統(=「死の運命」)から外れている事が判明したやつが、だからこそ”家族”のために頑張ったりと、良い話をしだしたりするし、よくわかんないけどそいつも死ぬので、やっぱ”家族”だったじゃん良かったね(?)みたいな気持ちにもなる。決して古臭い家族観を良きものとして描いてるわけでもなく、かといって家族そのものを否定するわけでもなく、個人的にはとても気持ちのいい家族の物語でもありました。
話は少し変わるけれど、『ピタゴラスイッチ』は言わずもがな佐藤雅彦の最も有名な仕事の一つであり、彼の研究室から生まれた「5月」という怖い集団によって『8番出口(映画)』やこのランキングでも取り上げた『災』が制作されている訳なのだが、ここにきて佐藤雅彦的なものがホラーへ接近している事は注視すべきところ。『8番出口(映画)』も『災』も、「5月」らしいまあ賢しらな感じの作品でしたが、『8番出口(ゲーム)』の元ネタとも言える『P.T.』を作ったゲームクリエイターの小島秀夫が『ファイナル・デッドブラッド』を鑑賞した時のツイートをここで唐突に紹介します。
はは、笑える。『OD』楽しみですね。
17位
PEAK
ゲームです!
2つのゲーム開発会社が協力して、ゲームジャム(短期間でテーマに沿ったゲームをつくるイベント)で制作された、異常な山を登らされる登山ゲーム。ぱぱっと作ったくせに凄い面白い。が、1回遊ぶのに2-3時間かかったりする大変なゲーム。ナイトレインの40分とか、なんなら短いわ。
このゲームはソロプレイも可能だが、友人などとプレイするのがやっぱりいい。ゲーム内でボイスチャット機能がついており、遠くにいるプレイヤーの声が遠のいたり、狭い空間では互いの声が反響したりする。そんな仕様もあってか、没入感がすごい。他のプレイヤーたちと会話しながら進路を検討したり、そんなに沢山持てないアイテムたちを協力して持ち合ったり、ただただ雑談したりしながら、変な形をした山を登っていると、あれ?あいつの声が聴こえないんだけど…え…?落ちた?あいつ?まじ?みたいなことが起こる。耳をすませると「生きてまーーーーーす!!!すいませーーーーん!!!!」と聴こえて胸をなでおろす。肝が冷えるわ。なんて感じで合流したりで山頂を目指していく。
このゲームには「仲間の手を掴む」というアクションがあり、ジャンプで渡れるか渡れないかギリギリという場面で、向こう岸に渡れた仲間が手を差し伸べ、それに向かってジャンプするといい具合に引き上げてもらうことができたりする。このゲームで一番面白い瞬間は、それが失敗するとき。目の前で仲間が滑落したり、自分が滑落したりする。まじ冷える。
全員が、あっ…………………………ってなる。
ゲームでは中々味わえない体験でとても楽しい。ゲーム以外で味わったとしたら、たぶん相当嫌な思い出になる。
ちなみに、開発会社はAggro CrabとLandfall Games。
Aggro Crabはかわいいヤドカリを主人公にしたSEKIROライクなゲーム(←本当にそういうゲームなの!)を作ってたり、Landfall Gamesは物理演算パズルゲームにしてはシュールすぎるグニャグニャした人間たちが中世の兵器で戦うゲームを作ってたりで、日本でもインディーゲーム好きにはそこそこ知られたところだったりする。
16位
歌舞伎町の東宝ビルとシネシティ広場の間にある道
道です!
世間的にトー横と呼ばれているあたり。本当はトー横は東宝ビルの反対側なんだけど。
でもトー横キッズとかの話じゃない。
コンカフェやガールズバーのキャッチがこの道にずらっと並んでいて面白い。だいたいが女性でフリフリのスカートとかのコスチュームを着ている。この道を歩くと、両サイドにそういう変な格好をした人たちが並んでいて、まるで赤月みゅうとのハーレム漫画の見開きページみたいな光景が見られる。ここでは赤月みゅうとの説明はしないけど、そういう異常な光景が見れて楽しいな、と思っていたりもしたんだけど、ある日ちょっとしたことに気がつく。男もいる!!!女性をターゲットにしたそういう店のキャッチも同じこの列に並んで仕事をしていたのだ。
もうこうなると、SFに出てくる価値観進みすぎて逆に性におおらかになりすぎた街のそれだ。スティーブン・スピルバーグの『A.I.』とか『サイバーパンク2077』とか、そういうのじゃん。アンドロイドもサイボーグもいないのが残念。ロボットレストランは昔あったけどさ。
私そういうの好きなんだよね。ここ歩くだけでワクワクする。
2025年の夏あたりに、訳あって友人と歌舞伎町で何度か散歩をした。色々取締の強化があったあとだったけれど大久保公園とかその辺を歩くと、普通に立ちんぼと呼ばれる人たちを何人も見かけたし、セックスツールズムで日本に来たのかなって思しき外国人も何人も見かけた。そういうものと縁遠い人間なので、単に面白い街だな、と思う。ハレンチハレンチー。
ちなみにトー横キッズ的な人たちは未だに細々とあの辺で遊んでいる。東宝ビル一階にある広い室内喫煙所がキッズたちの憩いの場となっているときがあり、タバコを吸いにいくと喫煙所の床に座り楽しそうにおしゃべりしている彼ら彼女らを観察できる。
15位
みいちゃんと山田さん
亜月ねね
漫画です!
あの道にもみいちゃんがいるのかなー。
マガジンポケットにて2024年9月から連載されている、キャバクラで働く女性二人の関係を描いた漫画。
みいちゃんが何者かによって殺されたという、非常にセンセーショナルな導入から主人公の山田が彼女との出会いを振り返るこの物語は、『ありす、宇宙までも』で触れたように、最近の漫画のトレンドである「障害」を描くものになっている。みいちゃんが知的障害を抱えている。
『みいちゃんと山田さん』の絵柄は、明らかに美少女ゲームや萌え4コマ漫画と呼ばれ作品群で用いられるキャラクターデザインのそれだ。かきふらい原作の京都アニメーションのアニメ『けいおん!』(2009)の主人公に対して、「池沼唯」という蔑称がネットの一部で使われていたことを知る人がどれだけ存在するかは知らないが、そういったコンテンツの少女の描き方が、実年齢に対して精神年齢が届いていないように見えると批判されることはしばしばあった。『みいちゃんと山田さん』はその絵柄で、本当に知的障害を抱える若い成人女性を描いてしまった。この漫画は我々の社会にあるシリアスな問題を描くものでもあるが、ゼロ年代に流行した少女趣味を軸としたコンテンツ群とそれを好んだ消費者たちに対する強烈なアンサーでもある・・・という話は少なからず誰かやんないとダメだと思うんだけど、だれかやってる?やってたら教えて。
この漫画は露悪的なものだが、ではこの重い物語をこの表現以外で描いたとして、今ほど読者を獲得できただろうか。みいちゃんが追い込まれる酷い状況へ至るまでの過程を、私達は現実の問題として想像できていただろうか。この漫画はもちろんフィクションでしか無い。線で描かれた嘘でしかない。けれどさ、自分とは関係のない人生への想像力をもたらしてくれるから、それは素晴らしいことじゃんか。
14位
アポカリプスホテル
アニメです!
サイゲームスピクチャーズが制作したオリジナルSFアニメ。
人類が地球に住めなくなって宇宙へ進出。日本のたぶん銀座で営業していたホテルには従業員としてロボットが働いていたが、人間がいなくなったあともホテルの維持運営を彼らが続けていて・・・という、まあピクサーの『ウォーリー』的な、健気なロボット泣けるぜっていうみんな大好きなやつ。そしてSFというジャンルが元来持っている荒唐無稽さとナンセンスさに溢れたコメディアニメでもある。
第一話からホテルの備品であるシャンプーハットに執拗にこだわるエピソードであったり、舞台となるホテルを気に入る異星人がタヌキの見た目をしたタヌキ星人だったり、そういった終始くだらない展開やディテールがあふれているなかで、ふいに生命の儚さだったりが描かれたりと、愚直にSFをやっている。
物語の終盤にあるタヌキ星人のおばあちゃんのお葬式を執り行うエピソードでは、結婚式と葬式を同時に開催して楽しく故人を見送ろうという、SFが持つ不謹慎だが何か本質的な部分へ触れるような展開があり、私にとってはとても感動できるエピソードなのだが、はたして…という部分はある。
このSFらしさ全開な作風は、感動的なエピソードを次の瞬間には相対化して冷水をかけたりするものなので、少し、いやかなり古臭いといえるし、万人受けするようなものじゃない。ポジティブに捉えれば、今この時代に珍しいスタイルとして新鮮だ、なんて言えるけれど、この作品が日本で大きな広がりを持つかと言われると怪しい。と思っていたのだが、中国の動画サイトbilibili動画で大変注目を集めているらしい。そっか今中国って、SF、あー、そっか。むしろ企画としてはそこを狙っていたのかと思えてしまう。あえて古臭いSFをやる意味が、こういう角度で存在するのか。と勝手に驚いたりもしました。
13位
ふつうの子ども
映画です!
2025年、最も企画に主演がハマりすぎていた映画。
『そこのみにて光輝く』『きみはいい子』などで知られる監督・呉美保、脚本・高田亮のコンビの3作目。
2014年生まれの嶋田鉄太という子役が主演で、この嶋田とかいうやつがマジでとんでもない才能で、映画全体を支配していた。本当にすごい。香川晃之と佐藤二郎を超えていた。
ある私立の学校が舞台となっているので沢山の子役が登場するが、呉美保の子役へのアプローチがワークショップを繰り返し、そこで密にコミュニケーションをとりそれぞれの子役たちの本来の性格を活かした演技指導をしていくというもので、子役たちの演技が「自然体」ともちょっとちがう、数多ある実写映画で今まで見たことのないような演技を繰り広げられていてかなり驚く。なにこれって思う。そんななかでも本当に、登場すると思わず目が釘付けになってしまう魅力を放つのが嶋田鉄平演じる唯士で、絶対台本にないだろっていうことをペラペラ言いまくっていて面白い。いや彼は本当にすごい。そして母親役の蒼井優との掛け合いなんかが面白すぎる。
昨今の子供を描く娯楽作品といったら、すぐ貧困とか言い出して子供って全員貧困なのかよと思わなくもないが(なんならそういう意見がありそうだが)、本作は中(の上くらい)流家庭の子供たちを描いていて、その上で子供たちが子供たちなりにぶつかる、この世界が抱える問題や、非常にパーソナルな問題を取り扱っていて本当に誠実。貧困を描くことが悪いと言いたいわけではなく、バランスが重要という話で、今日本にはこの視点が足りていないという問題意識が制作者たちにしっかり備わっている。でもそれは流行から逸れるということでもある。ので、みんな見てほしい。いい映画だから。
12位
Easy Delivery Co.
ゲームです!
個人ゲーム開発者Sam Cによるデリバリーゲーム。
雪が降る山間部の田舎町を舞台に、ローポリなグラフィックの猫ちゃんが運転する軽トラックを乗り回してあっちにいったりこっちにいったりして荷物を運ぶ。そこは思いのほか過酷な環境で、トラックの外に1分もいたりしたら凍えて死にかけてしまう。
軽トラックを運転中は何故か「ドラムンベース」とか「ジャングル」とか言われるリズムの激しめな電子音楽が再生される。そういった音楽を聴きながら車を運転するゲームといったら『リッジレーサー』シリーズが音楽マニアの間では有名で、2010年代に国外で再発見されていたりする流れがあったりするがこの話はあんまり関係なくて、なんか車をかっ飛ばしてかっこいい音楽にのせてノリノリでやったーみたいなゲームな気がしてくるが、実際プレイしてみると、何だか猛烈に悲しい気持ちになってくるゲーム。Steam等のレビューには、「チルい」だとか「まったり」だとか書かれていたりしてそいつらは本当にプレイしてるのかまじで疑ってしまう。メインとなるゲームシステムの配達の報酬がかなり渋く、ストーリー上で必要なアイテムを購入するには同じ道を何度も往復し配達しまくらなければならないのだが、それ自体がかなり意図的に単調な体験になるようにデザインされている。はっきりつまらない。でもこれが、得難いナラティブを生んでいる。
雪に覆われている色数の少ない町で、なんか知らんがめちゃくちゃ寒くて、ガソリン代に大半が消えていく報酬をなんとか貯めて目的のアイテムを購入したら、今度はその何倍もの値段のアイテムを買うよう指示される。夜になり見通しが悪くなってきた。一体何なんだこれは。そうやって集中力が切れ始めるとずっと鳴っていた音楽が気になり始める。冷たい質感のシンセサイザーの無機質な和音に、やかましいドラムがズカズカ響き、感傷的なメロディがぴろぴろ鳴っている。その音楽が虚しさを猛烈に掻き立て始めたころ、慣れてきたはずの車の操作ミスで軽く事故ったり道を間違えたりして、本当に落ち込む。自分が嫌になる。何か悲しかったり感動的だったりする物語とかではなく、置かれている状況に落ち込んで泣きたくなる。こんなゲーム中々ない。一応ストーリーはあるんだけれど(これもこれでなんか凄い物悲しい)、個人的にこの体験が強烈だった。
おそらくこのゲームの開発者は、こういう体験を本当にしている。ドラムンベースやそれに類する音楽を聴きながら急に虚無った経験は私にもある。多分世界中にそこそこ同じような経験をしている人がいると思う。でもそれをゲームで、こういう形で表現しようと思う人がいるなんて、面白すぎる。それに加えてこのゲームは、「不条理な労働」を描いた作品でもある。凄くないですか?
インディーゲームの中には、皮肉っぽく無意味な操作を繰り返させるゲームも珍しくはないのだが、これはそういう類のものとは違う。ずっとずっと個人的で、人生の一部が切り抜かれているかのようなゲーム。インディーゲームでしか味わえないよね、こういうの。
11位
ヴィンランド・サガ
幸村誠
漫画です!
2005年から連載が開始され2025年9月に完結した幸村誠によるヴァイキング漫画。
誰に頼まれているわけでもないのに、ベストハンドレッドを今年もやるぞと息巻いていた1年でしたが、読む機会を失っていた長期連載の漫画が終わったとなるとこれは読むしかないだろ!となれて、やっててよかったベストハンドレッド。
およそ20年にも及ぶ長期連載の漫画だが、振り返ってみれば一貫したテーマがはっきりとある。いかに他者と争わないか。最後まで暴力を振るわずにいるために、何を心得るべきか。という話を、長い物語で紆余曲折を経ながら描ききった傑作。
物語終盤、戦争のない国を作るために、新しい地を求めて上陸したその土地で、先住民とどう関係を築くかという問題に、主人公が思いつくアイデアが、このページの冒頭で触れたアイザック・アシモフの『ファウンデーション』に出てくるアイデア、つまり貿易関係をしっかり築き、政治的な対立を市場の原理によってグダグダにしちゃうというもので、そしてそれは今私達の世界で急速に破壊されているものでしかなく、この漫画でもしっかりそのグダグダな関係が壊れていってしまう過程が描かれている。悲しい。
戦争のない国を作れずに終わる物語は、とても悲惨だし悲劇的なものだけれど、わずかに希望を残す描き方をしていて、結構本当に打ちのめされる。
というか、この漫画は漫画がうますぎる。まじで。この漫画を読んで、漫画の読み方への理解が深まった。絵の重さ、重厚さは最近の漫画とはやはり違いはあるけれど、でも漫画がうますぎるのですいすい読める。例えば吹き出しの外に書かれる手書きセリフの使い方、それが配置される位置とかが、本当に的確ですごい。良い漫画を読むと、漫画について学べて凄い。
10位
ツモる動作が遅くて対局者から罵詈雑言を浴びせられるジャム・ザ・ハウスネイル
YouTubeの動画です!
これ↓
平成一桁ガチじじいとかばばあとかの皆さんが大好きな懐かしクレイアニメ、ジャム・ザ・ハウスネイルが何故か麻雀をしている動画。
そもそもこいつが麻雀しているわけがないし、全部意味不明で面白い。
雑な割にクオリティの高い仮装も、アイデアに溢れていて面白い。けど全てが無駄すぎて良い。
2025年、私が最も笑った動画。だから10位!
ちなみに私はジャムザハウスネイル本編を見たことが無い。全身全霊でぼくでありたいって歌は知ってる。いい歌だね。
9位
Under Tangled Silence
Djrum
音楽です!
Djとか言ってるからDJとかです。イギリスの電子音楽のDJだったり作曲家だったりする人。にも関わらずこのアルバムはかなりピアノがフィーチャーされたアルバムになっている。
電子音楽とかやってた人が、なんかもっと偉いって褒められたくて、クラシックに接近する例ってのは履いて捨てるほどあって、それらはまじでどれも馬鹿面白くない(ジェフ・ミルズみたいな面白がらせ屋さんがやると面白くなったりするけど)。面白くないのに凄いねって褒められたりする。まあ確かに凄いは凄いけど面白くなかったねって言う人は少ない。
でも本作はそういう作品になっていない。基本的にズンチャズンチャしてるかっこいい音楽で、まずそこが良い。でも踊るための音楽って感じでもない。
ピアノが細かく旋律を奏でていると思ったら、その旋律をシンセが引き継いだりする。でも音源的に微妙に役割が違うから今までとは違った展開になる。こういった音源の交代や、音の抜き足しはダンスミュージックでは多く用いられる手法で、DJが楽曲をつなぐときも大体同じようなことをしている。ダンスミュージックは繰り返しの音楽で、似たような展開が少しずつ変わるから楽しく踊れる。ある意味で機能として求められている要素。でもこのアルバムにはそういう楽曲の展開が沢山あるのだけど、そうやって作られる展開がダンスミュージックに求められる機能とは違う方向を向いていて、意外性に満ちていてとても楽しい。それによって、全体的になんとも形容詞がたい音楽になっている。クラシックな感じでもないし、ダンスミュージックでもないし、他のジャンルにも似たようなものを探すのは難しい。部分的に似ている、みたいなことは沢山言えるが、色々組み合わせた結果何になっているのかよくわからない。
私個人としては、そういう音楽が好きだったりする。音楽を聴いて、楽しい気持ちになったり悲しい気持ちになったりしたくないし、別に癒やされたくもなければ、まして踊りたい訳じゃない。ジャンルの間で中途半端に浮かんでる、少しひねくれた(ひねくれすぎていると、そういう音楽だなってなるからつまらない)音楽が好きで、2025年でいえば、そういう音楽はたぶんこういう形をしていそうだな、というのがこのアルバムだった。
8位
夢の中でゲームするときコントローラー使ってなくない?
バーバパパ
映像作品です!
2016年からYouTubeにシュールな映像に自作の音楽をのせた作品を投稿しているバーバパパというクリエイターによる、ミュージックビデオとは言えないくらいだけど音楽が中心にある映像作品。最近偽物が出たとかで話題の人でもある。
3DCGで作られた屏風画のような俯瞰図のなかを平清盛が歩き回る、という謎すぎるゲームをプレイしているかのような映像作品なのだけれど、音楽の使い方が凄い。
音楽で実験的なことをしようとする試みの中に、音楽のシーケンシャルな性質から逃れようとするものがあるのだが、実験音楽だったりジャズやロックの尖った人たちが変な曲を作ったりしてる一方で、コンピューターを使ったインタラクティブな操作によってその性質から逃れようとする動きもある。例えばアンビエントミュージックで有名なブライアン・イーノがピーター・チルヴァースと開発したiPhoneアプリ『Bloom』では、画面をタッチしたらアンビエントミュージックみたいなのが勝手に生成されたりしてくれたりたりする。ブライアン・イーノは、「これは21世紀のオルゴール」なんて言ってたりするが、要は21世紀の技術によって物理的なオルゴールがもつシーケンシャルな部分が自由になったぜって言っている。また、それこそゲームの世界では水口哲也がプレイヤーの入力と音楽と密接に関わるような作品を作り続けている。彼の会社が開発した『Lumines Arise』が2025年末に発売されたばかりだが、水口哲也はパズルゲームだったりシューティングゲームだったりをプレイしていたら、いつの間にかその操作が音楽を奏でていて気持ちいぜってゲームばかり作っている。
でもさ、私は思うんだけど、おもろい?こういうの?なんか好きな人は好きだと思うけどさ、新しいことやってまっせ!って言いながら、なんか全然想像の域を出ない。水口哲也に至っては同じこと繰り返しててちょっとどうかと思う。過大評価だよあれ。誰か何か言ってあげたほうが良いよ。
話をバーバパパの映像作品に戻す。このタイトルが無駄に長いし意味不明な映像作品が何をしているのかというと、ゲーム実況や配信などで多くの人が見るようになった「ゲームプレイ映像」という映像が持つシーケンスと、音楽が持つシーケンスを、組み合わせる試みがなされている。
実際にある程度プレイできるゲームを作者が用意したのかは定かではないが、多分作っているがそれは置いておいて、ゲームをプレイする上で発生する音、例えば誰かに話しかけたタイミングでの会話の音、歩き回ってるときの足音などが、音楽が持つシーケンスに割り込んでくることを前提に、音楽が作られている。ここが凄い。
これは先述したインタラクティブな操作に音楽が干渉されるものとは違う。ゲームプレイ映像というスタティックなシーケンスが、音楽がもつスタティックなシーケンスと同居しているだけだ。普通に考えれば両者は衝突する。しかし、今の私達は「誰かがゲームをプレイする映像」というコンテンツが持つリアリティをすでに獲得している。音楽の途中で、プレイヤーの操作によって脈略なく音が差し込まれても、その瞬間はゲームプレイ映像がもつシーケンスが優先され、そして音楽のシーケンスに主導権が渡る。本作はそういった方向で、音楽が持つシーケンシャルな性質を大きくずらすことに成功している。これは、メディアアートとかがインタラクティブすごーいって言いながら音楽の定義をずらして威張ったりしてただけの作品群よりずっと高度なことを達成しているように私には感じる。別の形で何気なく凄いことをやってしまっている作品なのだぞぉ?
7位
28年後...
映画です!
人気ゾンビ映画シリーズ『28日後...』『28週後...』の続編。「...」がおもろ。
映画監督のダニー・ボイルと脚本家でもあり映画監督のアレックス・ガーランドの出世作となった『28日後…』だが、そのコンビが今作で復活。ダニー・ボイルは『イエスタデイ』(2019)から6年ぶりの映画。
ゾンビがわーっとなって大変だー!!!!から28年。なんかイギリスだけがゾンビパラダイスになっちゃったけど、他の国は意外と大丈夫らしい。舞台はそんなイギリスでなんとか生き残っている人々が頑張ってつくった集落で、主人公はそこで生まれたスパイクという12歳の少年。
スパイクのお母さんはなんかずっと具合悪くて寝たきりで情緒も安定しないから、お父さんは若い女と不倫しちゃったりしてて、スパイクくんはそれを目撃。もう俺がしっかりするしか無いわ!!!!と決意を固め、集落から遠く離れたところに住む医者を訪ねるため、こっそり母を連れ出しゾンビパラダイスに挑む、まさかの孤独なジュブナイルもの。
私は子供が頑張る話が好きなので、そういう映画だったとは!とたいへん喜んだのだけれど、この映画の凄いところは、医者の診断の結果、お母さんは癌でもうすぐ死ぬってことが判明するクライマックスの展開。スパイクくんあんなに頑張ってたのに、悲しすぎる。こんな悲しいことって無い。ゾンビとか言ってんのに、癌って、いや、そりゃ癌で人は死ぬよな・・・。
もちろんこれは、アレックス・ガーランドという作家らしい、コロナ禍の社会を今の地点から振り返り風刺した物語ではあるのだが、つまりマスクだったりワクチンだったりで騒いでた社会への「人は死ぬときゃ死ぬだろ!」という皮肉なのだが、分かりやすくて大変ありがたいけどさ、悲しすぎるよ!実際、あの時期の社会はそういう「ありふれた死」をあまりにも軽視していたし、今でも、少なくとも日本の病院では、入院している末期な人の家族の面会が制限されていたりもする。まあ、それはそれで色々大変ですわな。
この風刺を少年のジュブナイルものに乗っけているのも面白いし、それをダニー・ボイルらしいケレン味でまとめて、凄いかわいらしい映画になっているところも、個人的には好きなポイント。今ダニー・ボイルおもろいなと思った。あと終わり方が本当にふざけていてビビる。
でさ、このランキングにはざっくり「ホラー」と呼べるようなコンテンツが多数あるわけだけれど、「ジャンル映画」という言葉があったりするように、「こういうタイプのエンタメはこういうところあるんで!」という”言い訳”を制作側がしやすく、そして消費者もそういう納得をしてポリコレ的なことをあまり考えずにぼけーっと楽しみやすいのかな、と思わされる2025年だった。人々はポリコレに疲れすぎてる。そんなことを言われるようになって随分経ってる気もするが、馬鹿なふりしてたほうが得ってことなのかな、結局。
6位
Main Heroine (feat. Ameru)
Kirara Magic
音楽です!
きららとかメインヒロインだとか急にどうした思われるかも知れないし、以下に続く文章は誇大妄想と捉えられる気もするが、このランキングは私のランキングなのだからそれでいいよね。
Kirara Magicは中国の作曲家。Ameruもおそらく中国のイラストレーターで、Kirara Magicの楽曲のアートワークを手掛けている。この楽曲はAmeruがボーカルを務める、Kirara Magicのディスコグラフィの中でほとんど唯一のボーカル曲。(←ごめん、他にもボーカル曲あった。私のリサーチ不足です)
この楽曲の説明には、その前提としてYunomiという北海道出身の作曲家の説明が必要になる。2013年ごろから活動を始めたYunomiという作家の楽曲群の特徴は、か細い少女のような声質の女性ボーカル(その多くはnicamoqによるもの)が、壮大で感傷的なシンセサイザー中心に構成されたオーケストラ(ざっくりボーカル以外の音の意)の上で、過剰に物語を感じる歌詞を紡ぐもの、と説明できる。でもここで留意しておきたいのは、か細い歌声をポップスのようなある程度厚みのあるオーケストラと合わせようとすることは実は困難であるということだ。
音楽制作におけるミックスという様々な音を2チャンネルにまとめる作業は、空間をシミュレートする作業と言っても良い。ある音がある方からこのくらいの距離でこのくらいの音量で鳴る、というのを一つ一つ設定していく。しかし、か細い歌声と厚みのあるオーケストラの音が両方聞こえる空間設計というのは、現実にはありえない。極端に近い声と遠い音源、その両者が混じり合って聴こるようなミックス作業は、ありえない空間をシミュレートしている。もっと言えば、そもそも2チャンネルしか無いステレオ音源に落とし込む事自体がそうだったり、専門的に言えばもっと色々あるんだろうが知らん。ここで重要なのは、【空間的に極端な嘘をついている】ということだ。そして、そんな極端な嘘がつけるようになったのは、音楽制作にコンピューターが導入されてからと一般的に言われている。音楽用語でいう「音圧」がコンピューターによってコントロールしやすくなったのだが、この「音圧」のコントロールは音の距離と密接に関わる。それがなぜかはここでは説明しない。とにかくそうなの!
説明します!!!!
オーケストラの音源を聴いて「あれ・・・音ちっさ・・・」と戸惑った経験がある人もいると思うが、そういった音源は大きいホールでの演奏を忠実に再現するために、ダイナミクスを非常に大事にしている、という理由があったりする。あれを聴く人は空間を感じたい!!と強く思っている。たぶん。
音圧の話を踏まえ、2000年代終盤の相対性理論やPerfumeなどの音源を今聴くなり思い出すなりしてほしい。ぼそぼそとした歌声だったり、のっぺりとした機械音声のような加工が施されているボーカルが、他の音源と違和感なくミックスされているのが分かる。先述した極端な嘘が国内の音楽市場で受け入れられ始めたタイミングといえる。同時期に初音ミクという「最初から空間を介さないボーカル音源」が登場するのも、偶然ではない。何よりiPodの登場によって音楽をイヤホンで聴くことが一般的になってきたことが大きい。音が耳のすぐ隣で鳴るという異常な鑑賞スタイルが一般化したことは、音楽制作者たちにとって技術的な側面でも大きな意味を持った。
話をYunomiに戻す。Yunomiが試みたことは、先程から述べている空間の嘘を更に極端に推し進め、それを使って「漫画・アニメ」的な世界を表現したことだ、と私は解釈している。日本のカルチャーのもはや中心と言っていい漫画・アニメといった芸術も、【空間的に極端な嘘をつく】芸術にほかならない。それは単なるキャラクターソングなどと呼ばれるような漫画・アニメのサブコンテンツとは明らかに異なるものだ。具体的に言うと、2000年代に流行した「セカイ系」と呼ばれるような、社会がすっぽり抜け落ちた物語構図を、楽曲の歌詞だけでなくミックスレベルから再現しようとしている。近い音(ボーカル=ヒロイン)と遠い音(オーケストラ=セカイ)を作曲という大きな嘘によって結びつけているのだ。でももう「セカイ系」とかいって大昔の話をするのは恥ずかしいので、話を次に進めたい。
ここまで述べておいてあれだが、このような分析をできる作家はもはやYunomiだけではないはずだ。しかしこのような音楽制作の技術的観点から昨今の楽曲を論じるものが、それが技術解説にとどまってしまうようなものばかりで、それが何を表現しているのかが語られない。話がそれ過ぎて申し訳ないが、『学園アイドルマスター』で使用されているHoneyWorksの楽曲が音割れしている論争とか、こういう言説が足りなすぎるから起こることだと思う。あと、洋楽好きが邦楽は音がのっぺりしてるとか言いがちなこととかも、私には関係している気がしてならない。
話をさらにKirara Magicに戻す。2017年のYunomiの1stアルバム『ゆのもきゅ』以降、Yunomi的なアプローチが日本の「アニメ的」な楽曲に積極的に用いられたりはしなかった。私は「Yunomiって平面的なボーカルを二次元表現に見立ててるんじゃないかな」って音楽好きの友人に話して笑われたりしていた。むかつく〜。そして2025年にKirara Magicが『Main Heroine (feat. Ameru)』をリリースをしたのでまじでびっくりした。中国の作家が、Kiraraとか名乗って、Yunomiっぽい楽曲を作り、それにMain Heroineってタイトルをつけて発表している。Yunomiがやっていたことを正確に理解している人が日本の外でこのタイミングで現れ、私は衝撃を受けたという話をどうしてもしたかった。びっくりしたから6位。文句ある?
しかもわざわざ日本語の歌詞をつけて日本語で歌っている。彼らからしたら、日本語である必要があったのだ。それは単に、日本のカルチャーに対するラブコールなのかもしれないが、もっと深い意味があるように思えてならない。
それにしても、日本で生まれた表現が、海の外を渡って伝わって再解釈されていく過程を見るのは、心が安らぐ。生きててよかったなって思うよ。
5位
see you again
小林篤
しょ、小説・・・です!Kindleで読みました!
1994年に実際にあったいじめ自殺事件を異常に追いかけた挙句ルポルタージュにできなかったと言って小説だと言い張っている謎の本。愛知県の中学校に通う男子生徒が自宅の庭で自ら命を断つが、そこに遺書が残されていた。その遺書がかなりセンセーショナルなもので、当時の日本は激震って感じだったらしいが、記者である小林はその遺書に強烈な違和を感じ取材を開始。そこから30年、この本が出版される。その30年が書かれている本。だからとんでもなく分厚い。Kindleは性格が悪いから、お前の読むスピードだとあと20時間とかかかるんでよろしくとか表示してきてうざい。頑張って読んだ。
読み始めて驚くのは小林のキャラクター。ヘビースモーカーで飄々としているのに人々の懐にひゅっと入り込んでしまう人たらしな奴で、そいつがもうあちこちで本当にすごい数の人間に会い、話を聴いていくんだけど、ハードボイルド小説みたいでもあるしポストモダン小説みたいでもあるし、っていうかでもルポルタージュ的な何かだから、もうなんなのか分からん。
他の学校で起きた生徒の自殺の取材や、俗に「酒鬼薔薇事件」と呼ばれる神戸の事件の取材、そして足利事件だったりと、話が蛇行しつずけた先に一応見えてくる「いじめ」の構造の分析はもう凄いの一言なのだけれど、それがあまりに複雑なもので頭を抱える。さらにこの本には、信じられないと思うが、衝撃の結末が待っていて、今でも信じたくないんだけど、これが本当に頭からは離れない。凄い本だった。
加害と被害の関係が、その実は外からは理解できないほど複雑絡まる力関係の塊であることは、世の中には沢山ある。なにか決定的なことが起こるとその構図ははっきりし、外部が判断しやすくなるけれど、でもその本質には近づくことはない。当事者たちもその複雑さを理解できているわけもなく、当事者だからといって真実を語ることはできない、そこに法律という別軸の解釈が加わると、もう何も分からなくなっちゃう。うーん。30年。うーん。
4位
カフネ
阿部暁子
小説です!Audibleで聴きました。
2025年本屋大賞を受賞した本作。
主人公の40代の女性は、妊活に失敗した挙句に旦那に離婚を言い渡されたり弟が不審死したりでモームリ状態ではあるが、それでも前向きに生きていくぞっていう立派な人柄で、なのにそんな主人公の周りにいかつい反出生主義っぽいやつがゴロゴロ現れてヤバ・・・という設定が非常に素晴らしい。私たちの社会におけるシリアスな問題の中には相反しているようなものがあり、それを向かい合わせる物語は、多くの場合アイロニーを強調したブラックコメディになりがちだが、本作は真逆。真面目にあたたかく彼らの物語を描いていて、その辺が本屋大賞っぽいぜ!と言えるけれど、でもギリギリなところで陳腐さや不誠実さを感じないステレオタイプが描けていて、すごい。
しかもこの小説のヤバいところは、先述した物語が「食を通して人と通じ合いその尊さを知る」系の、もうあらゆる何かで描かれまくってはTBSの番組『王様のブランチ』で紹介され続けている感じの、超定番ジャンルにしっかりはまっているところ。ごはん食べて心を開くってやつ!同じ釜の飯ってやつ!大衆娯楽小説の底力を感じざるを得ない。
本屋大賞ってなんかもう、読まなくても分かるわって思ってしまうような受賞作ばかりだという印象があったのですが、というか本作もまあ読まなくても分かるっちゃ分かるようなものなのですが、今の時代を切り取ってやりましたって感じの娯楽作品のなかで、「現代の闇を浮き彫りにし」て達観したりせず、極端に相対化して突き放すでもなく、現実にある小さな人生の苦悩に優しく寄り添った前向きな物語に、素直に超感動。物語の閉じ方も、ちょっと本屋大賞すぎて怪しいぞってなる手前で終わってて良い。
当然、映像化を前提とした企画だと思うが、そして映像化はしやすいものだとは思うが、地味すぎる話ではあるし、映像で描くとものすごく説教臭くなりそうな物語なので、Audibleよかったですよ。
それと、これ2024年5月に刊行された小説なのだけれど、Audibleでオーディオブックが配信されたのが2025年なので、そういうことって、あるよね。あるある。
3位
羅小黒戦記2 僕らが望む未来
映画です!
中国北京のアニメスタジオ北京寒木春華動画技術有限会社の長編アニメ。
もともとはMTJJというクリエイターが2011年からWeb上で発表を続けてきた非常にかわいらしい猫ちゃんのFlashアニメなのだけれど、それが人気となり2019年に長編アニメ化。その続編が今作。
ちょっと太めで均一な線画によって、日本のアニメーションっぽい可愛らしいキャラ描かれるだけでなく、腰をぬかす程の激しい動きを見せる作画が話題となった前作に引き続いて、今作もまぁほんとすごいアニメーションとなっているが、この映画はそれどころの騒ぎではない。
断言するが、これはかつてMCUができていたアクション娯楽超大作をアップデートしたような映画になっている。具体的にはルッソ兄弟による『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』の有名なシークエンスである、エレベーター内のまじ面白すぎるアクションシーンのように、新鮮で面白い仕掛けのあるアクションを、それを順序や構図含めてどう整理し観客が一瞬で理解できるように見せるかという、ハリウッド映画のエンタメの核となるような部分に挑み、それを更新している。『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』がいくら作画を頑張ったところで、原作である漫画を下敷きにしたシーンを構築しなければならないという謎の縛りプレイが謎に推奨されている現状では、今作のような考え抜かれたアクションシーンは当然生まれてこない。
今作はそんなアクションシーンが異様に多い&テンポが早く凝縮されているうえに、それぞれがアニメーションならではのアイデアで満ちているのだが、本当にびっくりすることに、ハリウッド的な意味で超王道な航空パニックアクションシーンまでやり始め、それが見たことないようなクオリティに仕上がっている。ハリウッドに正面から挑んで、勝っちゃってる。日本でも、実写映画なら話は別として、アニメでそういうことだってできたはずだと思いたいが、とりあえずしてこなかったという認識は決して間違いではないと思う。海の向こうの凄い文化を取り入れて、自分のものにするのが得意だったはずの日本で、羅小黒戦記2のような作品が作られなかったことに、寂しい気持ちが無いといえば嘘になるというと嘘になるかも。それにこの映画は韓国みたいに国を上げてハリウッドと戦おうとしてる中で生まれたわけじゃない。
もっと言えば、監督はFlashアニメの文脈から出てきたクリエイターで、MTJJがかなり特殊な例なのかもしれないが、その才能がここまでの作品を作るようになったことが、日本国内のFlashアニメの歴史を考えるとあまりにも違いすぎて愕然とする。凄いアクションが作れることが、アニメの全てではないにしてもね。
でもさ、この映画が本当に本当に素晴らしいのは、クライマックスのあまりに馬鹿馬鹿しい展開であり、それまでストーリ上で積み上げられてきた(現実の国際情勢を思い起こさせるような)政治的対立を軸としたハラハラドキドキのアレやソレらが、意味なかったんか???となってしまう、ムゲンという強すぎるキャラクターの強すぎる力によって解決を迎えるまでの、あの異様に作画に気合いの入ったアホすぎるシーン。これはエンターテイメントに備わっているべきおおらかさそのものであり、だからこそ力強い作品になっているように、私には感じる。同時に、もしかしたら、そういうおおらかさを込められる理由として、それは様々な事情によって、今んところは、中国の作家だからできた事なのかもなと思うわけでした。
ところで私はこの映画を字幕版で鑑賞したのだけれど、本編のエンドクレジットの後に配給のアニプレックスによる吹き替え版のスタッフや配給のスタッフのエンドクレジットが何故か追加されていて、Aimerの楽曲とかを聴かされたりしたのだけれど、え、てかさ、そういうのが嫌いだから字幕版で鑑賞したいまであるですよ私としては。このアニプレックスの姿勢は本当に傲慢なものに感じられました。なんか、このアニメが日本のアニメの影響を強く受けてるからってさ、うちらのシマで公開するなら、ってことなん?こんな事していいと思ってるんだねアニプレックスは。へんなの。
2位
The Alters
ゲームです!
11 bit studiosというポーランドのゲーム開発会社による未知の惑星を舞台にしたSFぅな感じのゲーム。
未知の惑星にひとり不時着しちゃったおじさんが、生き延びるために水とか燃料とか鉱石などの自然資源を探して採取し、それらを使ってより高度な道具を作り効率的に自然資源を集められるようになったら、さらに高度な道具を作っていきたいのだけれど、今度は人手が足りないとなったりして、そういった人的資源の問題も解決していく、というのを繰り返していくいわゆるリソース管理ゲーム。そんな仕事みたいなことさせるジャンルのゲームがあるんか、なんて思われる方もいるかもしれないが、実はSteamなどでは根強い人気があるジャンルで、あの手この手でリソースを管理させようとしてくるゲームたちで溢れていたりする。
11 bit studiosとしては、パブリッシャーとして関わった2024年の『INDIKA』も話題となったが、『Frostpunk』というすごい売れたゲームを作った会社としても知られている。そしてこの『Frostpunk』は、リソース管理しかさせないぞ!という気概に溢れた怖いゲームだったりする。
話を『The Alters』に戻すと、未知の惑星にひとりなのに人的資源の問題をどう解決すんだよ!って部分が強烈で、その惑星の謎の資源で可能となる謎のテクノロジーを使って並行世界の才能豊かな自分を沢山作って、そいつらに仕事を振りまくる事で解決していく。きもい!!!
なんか目が覚めたら生きてきた世界とは違う世界線で、今までの人生が失われて最悪なのに、なんでお前に協力しなきゃ行けないの?って並行世界の自分に言われて本当に気まずいんだけど、そこをどうか!って説得して鉄とか掘ってもらう。
ってかお前って暴力的な父親から逃げて母親を見捨てた世界線の俺なんでしょ?そんなやつの命令ってちょっとなんか嫌なんだけど?って言われて本当に気まずいんだけど、そこをどうか!って説得して新しいツールを作ってもらう。そんな感じのゲームです。
リソース管理系のゲームでは、ゲームシステムやそのレベルデザイン、どこまでやり込み要素が用意されているかに重きが置かれる事が多いので、ストーリーがあってないようなゲームも珍しくないのだけれど、『The Alters』ではリソース管理ゲームだからこそ可能なナラティブが生まれるような、そんなストーリーが巧みに組み込まれていて、そこが本当に面白い。
並行世界の自分たちは、それはそれで葛藤を抱えていたり人格に問題を抱えていたりするので、すぐ不機嫌になるし互いに喧嘩したりするし、メソメソしたりする。しかもクローンみたいなやつだからすぐ死んじゃうかも!!!って展開になったりするので、本当に気まずいがすぎる。
物語の中心には主人公と彼らの人生における様々な「後悔」があり、自分とは違う選択をした結果である違う自分から慰められたり、逆に慰めたりする(かなり不気味な)ケアの物語へと最終的に向かっていくのだが、ゲームシステム上では極限状態が続く中でのやむを得ない選択を繰り返していくゲームプレイがあるわけで、プレイの中で生まれる「後悔」も包括して主人公が自身の選択、すなわち人生を前向きに捉え直していくなんてさ、まじ、いいゲームすぎるやんけ・・・。そう思いません???
1位
サンキューピッチ
住吉九
漫画です!
『ハイパーインフレーション』の住吉九が描く、トリックスターばかりが出てくる異色の野球漫画。ジャンプ+で連載中の作品。
野球漫画といってもやっていることはギャンブル漫画で描かれる駆け引きそのもの。それもギャンブル漫画というジャンルが煮詰まった段階で出てきた、途中からゲームのルールが変わってしまう展開(『アカギ 〜闇に降り立った天才〜』の鷲巣麻雀)だったり、ゲームの外でゲームが始まったりする(『嘘喰い』のプロトポロス編)そういうアイデアを、野球という細かいルールが謎に多い競技に組み込むことによって、野球というゲーム自体を拡張させ、漫画らしい展開をド派手に描いている。
だがそれだけではない。
ここで2巻に収録されている最終エピソードの最後のページを引用する。
このページはマジ爆笑の名シーンなのだけれど、実際のところ、この漫画の主要な登場人物たちは全員が全員違うゲームをしている。各々のゲームのルールに則り違う目的をもってそれぞれが行動している。極端なことを言えば、ゲーム=キャラクターという構造を持っている。そもそもキャラクターとはそういうものだったりするが、この漫画はそこをとりわけ強調している。
そして違うゲームを行っているキャラクター同士が野球というゲームの中で対決する。先述したようにギャンブル漫画のロジックを応用した試合展開に左右されながらその勝敗がつくとき、敗けたキャラクターが抱えているゲームが成立しなくなり、ゲーム=キャラクターという図式が一時的に崩れる。ゲームを失ったキャラクターがどうなるか。「覚醒」する。少年漫画の不文律である、あの「覚醒」をし、新たなゲームを獲得する。新しいゲームはそのキャラクターを変化させ、その変化がマジで熱い泣けるドラマになっている。こんなロジカルなスポーツ漫画で、だからこそちゃんと熱くて泣けちゃう。すごい。
これは『HUNTER×HUNTER』で推し進められた、バトル漫画をゲーム的なロジックを使って描く試みの、最先端の形だと言える。最先端であり、ゲーム的なものを突き詰めていった先で少年漫画の不文律ともう一度、”論理的”に合流させた凄い漫画、だと、思う。。。。
ここまでゲームを、そしてスポーツの仕組みを読者に意識させる漫画が、「高校野球」を描いていること、いろいろ深読みしてしまう。毎年いろいろ言われてますからね、「高校野球」。日本における「高校野球」の、なんだか不気味な消費のされ方に対しても、何かしら踏み込んでくる予感がしてならない。
まあ小難しいこと書いてみたけど、ギャグがピクサーやディズニーアニメかよってくらいの異常な密度高さでそれがいちいち面白いし、正ちゃんがかっこいいから一位ってことでもいい。
話をまとめるために、サンキューピッチ4巻のカバー折り返しに記載されている作者のコメントを一部引用する。
それ以来、私はこの「極端に走るとむしろ逆になる」的な現象を愛おしく感じるようになった。
この漫画の中にも同様の現象をいくつか描いたつもりである。
これはドライアイスを触ると冷たすぎて逆に火傷とかしちゃうんだ〜という文脈のものだが、何だかこの着眼点自体が、とてもコンピューターゲーム的感性ともいえる。コンピューターで数値を扱うときに発生する不具合のオーバーフロー(扱える数値の限界を超えて0に戻ったりマイナスになったりする、バグのいち要因)を想起させるこのコメントから、この作品に対する作者の姿勢が伺える。コンピューターゲームの、そのシステムからなる整ったロジックに注目した『HUNTER×HUNTER』やそれに続く作品たちを経て、『サンキューピッチ』のようなシステムが壊れることに注目する作品はこの先増えていくように思う。もちろん『サンキューピッチ』がそのようなもののオリジンではないし、似たような試みがされている作品は(漫画に限らず)すでに沢山あるだろう。それらはきっと、ロードマップを用意したり「攻略」等をキーワードとするものとも違い、破壊から立ち直る物語になるはずだ。そういったものは実はコンピューターゲームでは原理的に扱えない。システムが壊れるというシステムにならざるを得ないし、本当にゲーム機壊れたらみんな怒っちゃうからね!
もう限界です!!!!
凄い頑張ってたでしょう? 投げられる銭→🪙🪙🪙
いろいろ100項目も挙げといてあれなんだけれど、2025年私が心の底から良すぎると思ったコンテンツは『BIRDBRAIN (w/ OK Glass) feat. Kasane Teto』なんです。とりあえず動画だけ貼らせて。
でもJamie Paigeは昨年のさやわか式☆ベストハンドレッドで紹介されていたから、悔しくてランキングに入れられなかった。でも本当に良いんだよね。これ聴いて感動して泣いてばっかの一年だった。ビデオも良くてさ、重音テトがこんな等身大のキャラクターとして、ちょっと重そうな身体で可愛く踊ったりするんだって。こんな面白いことが起こってるのに、細田守の新作が良くない!!!って盛り上がったりしてさ、どうなったらそうなるの、人は。どうでもいいだろそんなの。スーパーで品出ししてたらさ、近所のガキンチョ数人がアイスコーナー眺めながら「チェンソーマン見た?まじ面白かった!エロ女!!!」とか言って笑ってんだよ?そういう現実を見てほしい。レゼですよ大事なのは。
批評ブームとか言うけどさあ
やってることって未だにコンテンツ批評ばっかりじゃん。まあそれはいいとしてさ、どうして世の中の、コンテンツについて語ります!って人たちは、ベストハンドレッドをつくらないのですか?今年の映画だったり音楽だったり何かだったりのベスト10をちゃちゃっと書いてたり再生数回るとかでなんたらで、仕事した顔してるんですか?にじさんじのVtuber、アンジュ・カトリーナですら、2025年の成人漫画を46作品で振り返っていましたよ???だからなんだ!私のほうが凄い😤
だからみんなもベストハンドレッドを作ろうよ!!!!




